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ひよりはひより

カブト32話について考えてみた。32話というか主に天道さんのことね。
いうかこないだの天道さんの豹変ぶりはあまりにもオレのツボでありました。
ずっと天道がそんなにもワームを憎む、ワームを倒すという大義名分はどこにあるんだろうと思ってたんですが、結局のところ個人的な理由だったと。しかも両親を殺されたこともさることながら、それよりもワームとして生を受けてしまった、人として産まれえなかった妹を守るためだというのが、単なる憎しみでワームを倒すということよりももっと深い業を背負ってしまったんだなーと思うと、あまりにも切なすぎてどうしたもんかと。
今まで見てきた天道の正しさとか、優しさ、清廉潔白な正道の代行者らしい明快さ、その全てが「ひよりを守る」という気違いじみた自分だけの大義名分を押し隠すために作り上げた「天堂総司像」だったワケですよ!
7年前、ワームであるひよりを守ると決めたときから、天道はそれが間違ってることを知りながらも本心を隠し、ひたすらスーパーマンのような自己を確立することに全てを費やし、来たるべきときに備えてたわけですね。本当に32話見たあとで1〜30話を見返すとあまりに天道が痛々しくて見てらんないです。OPで渋谷廃虚を背にした大人天道が見つめる天道少年は、まさしく天道自らが敷いたレールの上を歩ませてるというイメージであり、それは天道自らが決めた運命ってことなんでしょうかね。14歳の天道少年にそんなダブルスタンダードを背負うような決断をさせることがもう痛々しい。


※ちょい出掛けるんで慌ててUPしましたが、帰ってきてもう一度見返すかも。なので以降は隠しときます。どうしても33話の前にまとめときたかったんだけど、どうにも感傷的すぎてまとまりません。ぐるぐる。


それにしても『ひよりを守るためならば、俺はワームも人間も全て倒す』という天道の言葉は気違いじみてるけど迷いも揺るぎもないようなんですが、ちょっと引っ掛かったのは『どっちを選ぶ!俺の言うことを聞くか、それとも今ここで俺に倒されるか!』と加賀美に迫るところ。
一見二者択一、天道のことを支持するか、反対して戦うか…なんだけど、よく考えたらこれって「俺の言うことを聞け」って言ってるだけかなーと思ったんですね。というか戦うつもりでゼクターを取りだしておきながら選ばせるって、本当は戦いたくないんじゃん。


32話の頭で加賀美にひよりをどうするといわれて「ワームである以上倒す」と言った天道ですが、これは嘘なわけです。要は加賀美を信じてないから、ワームは全て倒すという表向きの信念を通すように見せかけただけです。
天道の優先順位って「ひより>自分>それ以外の人間」だから答えは簡単で、自分以外は信用しない、だから建前上は誰にも本心を明かさず、秘密を知ったものは誰であろうと倒すつもりがあるってことですね。
天道が加賀美と面と向かって戦うことを宣言したのって10話のザビーと戦うかどうかって言うところと、24話で渋谷廃虚にひよりを連れていくといった加賀美を止めるところです。
ザビーの時は「それはそれ、これはこれ」なんですが、友達だと言ってくる加賀美に対して、もし敵として向かってくるなら躊躇なく倒すと言うのは同じ。渋谷廃虚の時は天道の本心を知った今考えると、ひよりが自分の過去を知ることで前に進めると思う加賀美は当たり前の健全な考え方だと思うんだけど、それに対して天道が戦って倒してでも止めるというのは、渋谷に行くことでひよりが記憶を取り戻す、天道が両親を殺したかどうかというより両親がワームだった、もしくは自分がワームだということを思いだしたら困るということだったわけです。ところがその後、どうしても渋谷に行くという加賀美とひよりを認めてるのは、もしひよりの秘密が加賀美に知られた場合、躊躇なく加賀美を倒すつもりだったんじゃないかなあと思うんですよ。あの天道の狂気の決意を考えるとそうとしか考えられないです。つまりそれほどまでに加賀美のことは信用していなかった、加賀美というか単に自分以外信用してないと思うんですね。建前としては。
それでひよりが生きているということを加賀美に知られて、問答無用にゼクターを取りだすのがまさにそれなんですよね。話し合いの余地も無し。


天道の狂気と見まがわんばかりの決意は、多分加賀美には本当には理解されてないんだと思うんだけど、ただ「ひよりはひよりとして生きていく」ということに対して、「ひよりの力になりたいんだ」という加賀美の言葉は信じたと思うんですよ。だから天道は加賀美の「ひよりのため」という言葉は信じる、信じる代わりに自分の言うことを聞け、なのかなと。
天道は今まで他人に決断を強要したことはないんですね。加賀美の弟の時といいザビーの時といい、あと矢車さんの時にしたって、決めるのは加賀美自身であってその決断に対して天道が自分の対応を決めるという物でした。これって他人の意見を尊重してることではあるけど、ある意味突き放してるというか、他人は他人ということだと思うんですね。
でもこの時は建前としては選べといいながら、本心では加賀美に自分の本心を知って欲しいと思ってるように感じるんですよ。自らのひよりに対する決断を語るというのは、多分天道自身がその狂気を判ってるだけに本音のところでは加賀美に気を許してるというふうにも見えるんですよね。でなきゃ、信用してない相手に自分の一番見せたくない、今まで何をも犠牲にして隠してきた気違いじみた本心をぶちまけるはずがないと思うんですね。
なんというか、あまりに天道自身自分の中で自分以外を信じないという信条があるんだけど、気持ちとしてはそれに反して実は加賀美のことを信用してるんじゃない?もし自分に何かあったとき、あとを託せるのは加賀美だと思ってるんじゃない?という様な気がするというか。そういう意味では判って欲しいと思ってるのかなー。
加賀美は今まで独り揺るぎなかった天道の世界に、初めて深く関わろうとしてきた人間であり、ライダーであるということで自分と並ぶかも知れない人間であるんですね。だからこそ、今までの加賀美とのやり取りの中で時には突き放し、時には見守りつつ、天道の本音ではそれらを全て切り捨ててもいいという理屈があっても、心の中のどこかでは加賀美を認めてて、自分と肩を並べて戦えるかも知れない、背中を任せることが出来るかも知れない人間として、ちゃんとその存在を認識してたってことなのかなーと思ったんですね。


天道の「ひよりはひよりとして生きる」が狂気じみてるのは、天道はワームをワームだからという理由で迷わず倒してきているのに、「ひよりは(ワームではなく)ひよりだ」自分でもと思い込もうとしているところでしょうか。
今まで何事にも冷静で正確な分析をしてきた人間が、突然妄信的にひとつの信念に囚われている。そしてそれを十分自覚していて、それが間違っているし許されないことだと知っているのに、自分で敷いたレールの上を迷わず歩くことこそが、ひよりの幸せにつながってると信じたいんですね。
対して加賀美の価値は、倒さなければいけない敵だと知ってはいるけど、それでもそこに擬態された人の人間性を認めたいとあがくところにあるわけです。
弟のことではいくら記憶と姿が弟のそれであっても最終的にはワームだからと言い切った。なぜならそれは弟の記憶を持っていてもその弟を殺した仇だから。マコトくんという少年を模したワームは、ワームであるけれどその記憶はマコトくんのもので、ワームだからとは思いつつもその記憶に対して本人と同じように扱った。そこにワームでありながら何かの感情が芽生えた。
剣に対してはワームであるが、これもマコトくんと同じくオリジナルは加賀美の知己ではない。しかも自分がワームだという自覚がない上に、自分が知っている剣はワームであってもすでにオリジナルの記憶と感情を持っている、そういう意味ではオリジナルの記憶を持つ存在としては加賀美にとってひよりと剣は同じであると言えるんですよね。だからといってそれが世界中を敵に回しても救いたい存在ではないのが天道と加賀美を分けるところではあるんだけど。
そして今のところ天道は加賀美と剣のことは知らないんだけど、知ったときにどうするのか。というか天道は倒そうとするに決まってるだろうから、むしろその時加賀美がどうするかのほうが気になるかも。


「ひよりを守る」のが表向きの天道総司の存在理由としては、間違っていることを知りつつ、でもそんな狂気の業を背負ってそれでも独り孤独を貫く天道はあまりに辛すぎると思うんですね。多分加賀美は単純な人だからそんな天道の業は判らないかも知れないけど、でもその分迷わない天道の代わりに迷って迷って迷い抜いて、その先に何か大事なことを見つけて、それを天道に判ってもらえたらなあと思うんだよね。そのための加賀美なんだと思うんだけど。いや、むしろ天道に「俺がそばにいてやる」って言ったげて欲しいくらい。(笑)
何というか、天道は加賀美に対して自分の間違いを知って許して欲しいとか、ひよりのためだから仕方ないと思って欲しいとかそういう理解して欲しいという甘えがあるわけじゃなくて、いつものごとく「俺は俺だ」ではあるんだけど、そうでありながらもそれを加賀美には判って欲しい、判らないはずがないだろう、お前なら、という加賀美に対する信頼みたいなものが見え隠れしてるんじゃないかとも思うんですよ。矢車さんの時がそうだったしさ。(ソース>水嶋×佐藤対談)
何かややこしい書き方したけど、理解しなくてもいいから自分がそうするということは判って欲しいということなのかな。


さて、32話を見たあとで1〜30話まで一気に見返したんですが、天道がひよりの存在をいつから知っていたか?これは7年前にひよりを助け出したあとどういう経緯で離れ離れに暮らすことになってしまったのか…というまだ明かされてない謎?もありますが、少なくとも1話の露店で出会ったときは認識してる風でもなかったと思うんですよ。(多分…)でも名前が判れば妹だとはすぐに判るはず…なんだけど、天道の素振りは全くそういう部分を見せないで、あくまでも友人として見守ってるという感じです。(突然現れたにしては、だけど)
多分天道はひよりがワーム化しなければ、そのままいつまでも兄だと明かさずに友人として見守っているだけのつもりだったんでしょう。まさに「そばにいないときはもっとそばにいる」か。それはそれでロマンではあるけれど。
建前といったけど、本質的にはその建前の「天道総司」が彼の本質であるとは思うんですが…(だからこそその本心が狂気といえるわけですが)
ちょとまとまりないけど、取りあえずこんなとこで。