そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

先週から寝る前にちょっとづつ読んでやっと読了。さすがに東野圭吾の本は結構丁寧に読みますよ。つっても今まで「秘密」と「白夜行」くらいしか読んだことないけどな。
これはミステリーだけど、オレがミステリーを好まないのは犯人当てとかトリック暴きにそんなに興味がないからで‥‥って話はしたけど、だから単純に話の構成の上手さとか、「ああそうか!」と思いたいから物語を読むのは本でもドラマでも同じことなんですね。
で、これは面白かった!構成も上手いしちゃんと伏線を張ってるからあまり無駄なとこがなくて、無理がなかった、と思う。だって読んでてどうしても福山と堤と北村さんで脳内変換しちゃうんだもん。なんか誤魔化されちゃうよ、映画見てないけど。頭の中でずっと「ガリレオ」のBGMがなってるしー(苦笑)
それにしても堤真一が天才数学者と聞いてまたかと思ったのは「やまとなでしこ」なんだけど、堤さんは数学者に見えるんだろか?まあフジだからなーw でも石神は堤真一じゃないと思う。カッコよすぎてこの話でこういうことになる理由にならない。
映画はTVに降りてくるまで見る予定はないです、一応。TV版ガリレオが耐え得るレベルじゃないのに映画が面白い保証なんてないんだから。絶対原作の方が面白いに決まってる。実験のシーンなんてなかったよ?
ちょこっとした感想はネタバレになるんで隠します。
 
最後の数行を読んで、かくも壮絶で美しい容疑者X・石神さんの献身を台無しにしたのは湯川先生じゃんって思いました。ヒドイなぁ湯川センセ。まあオレが湯川先生でも同じことすると思うけど。言うよな、靖子に。それが無二の友人のやったことを全て台無しにすることだとしても。
靖子に対しては何もないと思うんだよね、ただ、黙ってるってことは「なし」ってだけなんだよねー。湯川先生も難儀な人だなあ。この前後のはなしって全然知らないけど、これで人が変わらなきゃおかしいよ。
相方は読んでああーと思って号泣したって言ってたけど、オレは全然‥‥というか、ああやっぱりねくらいだったんでまあそんなに感動はしなかったかな。どっちかというと湯川先生目線だし。
この小説はとにかく構成が上手いってのが徒になってというか、トリックに関しては判るというより何となく途中から違和感があったってことですね。
だって浮浪者が話に関わってないはずない、しかも大筋に関わってないからトリックに使ったんだろうってこと(特に「技術者」のことは石神は認識してたのに、その後種明かしまでこの話では名前が出てこない)と、靖子のアリバイの話が出てきてからあれっと思ってたのは、倒述式で最初から犯人が判ってるのに(だからこそこの話のトリックはそれも逆手に取った2重の騙し構造なんだけど)、「いつ殺した」っていう日付が出てきてないんだよね。刑事は3月10日のアリバイばかり聞いてるけど、ホントに殺したのは10日だっけー?って、それこそ作中の靖子と同じようにどうして10日のアリバイばかり聞くんだろう?って感じ。石神の勤怠表が出てきたところでホントに殺したのは10日の前の日かと。11日の午前中休んだのはフェイクね。
あとは「思い込みの盲点」もそうなんだけど、それよりも繰り返し出てくる湯川と石神の謎かけ問答みたいな「人に解けない問題を作るのと、その問題を作るのではどちらが難しいか」が石神のやったことそのものだしな。
で、湯川先生が問題を作る方が難しいって言ってる時点で、たぶん石神は湯川がこのトリックにいずれ気がつくことは判ってたんだろうし。
殺人を隠すためにもう一つ殺人を犯すってのは、簡単に言っちゃえば「木の葉を隠すには森の中」で、理屈としてはシンプルで簡単、筋が通ってるんだけど、普通の人には「殺人を犯すリスク」と「殺人をなかったことにするために殺人を犯すわけがない」いう常識があるからそこに気がつかない。あり得ないと思うからこそ心理的な目くらましになるってことですね。いわゆるバカの壁というか。石神や湯川には学者としてはそんなバカの壁はないっていってるし。
このトリックそのものに湯川先生が思い至ったのは本当に親友である石神のことをよく知ってたからだと思うんだけど、湯川先生は石神が本気で生涯一度の恋をしたと言うことを信じたということと、そのために人生を投げ打ってもいいと思ってたことに気がついたからだと思うんだよね。だから石神は自分がストーカーの罪を着ることも何でもないことだし、それこそ石神にとってストーカー故の殺人は「筋の通ったこと」なんだよね。
湯川は草薙に「この世に無駄な歯車なんかないし、その使い道を決められるのは歯車自身だけだ」って言って、草薙はその「歯車」は名無しの権兵衛の浮浪者だと思った。けど、それは本当は石神のことを言ってたんだと思うんだよ。
そのあと石神の想念で語られたように、石神は数学教師の自分の境遇に対して絶望して自殺を考えてた。そこに現れた靖子に恋をしたことで生きる意味を見いだしたんだから、靖子が幸せになるために自分自身という歯車の使い道を決めたとしても不思議はないし、石神をよく知ってるからこそ湯川先生はその境遇と心情を理解した。
ゆえにこのトリックに気がついたし、それを暴くことが石神を更なる絶望に落とすことも判ってて、それでも言わざるを得なかった湯川の心情‥‥とか考えると、トリック云々よりもそっちの方が面白いし、話の作りの上手さがひときわ際立つなあと思うわけです。
だから話の作りが上手すぎて、面白いし感心はするけどオレとしてはやられた〜感はないというか、あー、そうだよねーで終っちゃうんだよね。脳内キャスティングのお陰ですごく面白かったけどね。
でもオレにとってそんなこの話を上手く締めたのが最後の2行で、湯川先生の気持ちも判るんだけど、おいおいお前だろ!と思わざるをえないツッコミどころだと思うのです。石神さんがカワイソ過ぎるだよ‥‥( ´Д`)
だからオレってミステリー読むのに向いてないし、ミステリーそのものには面白さを見いだせないんだってば。 *1

*1:でもこういうのってフィクション作品に対する経験値もあると思うけど、判っててもオレは映像作品だと気にならないんだよね。友達が開始5分で気がついて終るまで退屈でしょうがなかったっていう「シックスセンス」を最後まで十分に楽しめたりするし‥‥w