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犯罪被害者支援のつどい 〜わたしたちにできること〜

■ 講演「犯罪被害者の現状と必要な支援」本村洋

セシオン杉並にて。目当ては本村洋氏の講演ですが、ちょっとした雑感みたいなつもりくらいでメモ。(長くなったけど)ちゃんとしたレポってわけでもないからウッカリしたこと書いて間違ったこと言ってたらすいません。(一応渡されたスライド資料でそこそこ確認はしながらですが)
あんまり自治体のやってることに興味あるわけではないので初めて知ったんですが、杉並区は犯罪被害者支援への取り組みとして、支援を条例化したり窓口を設置したりということを全国に先駆けて平成17〜18年くらいから始めてたそうです。ということで本村氏を呼んで犯罪被害者の現状を聞くという集い。今でも普通に会社勤めをしている本村氏、山口から日帰りだそうです。お疲れさまです、本当にありがたいことです。
講演は90分ですが、理路整然として非常に分かりやすい素晴らしい講演でした。本当にこの人は頭いいし、人間的にも素晴らしいです。聞いてる途中ではこの人が犯罪被害者だと忘れるくらい的確な話しぶりと要点を押さえた説明で進むんで、冒頭に一応自分の経歴等の説明、最後に事件時からの気持ちとこういう活動をしていることついての短い話があって、そこでやっと実感するくらい。
 
大きく分けて前半は日本の犯罪発生率などについての説明と裁判の現状、それに関わる被害者たちの心身的な負担についての話があり、後半はそれらを踏まえた被害者支援についての問題点と取り組みなどを説明、という感じ。
犯罪被害者の扱いについて、流れとして当然今までだって犯罪被害者はいたんだけど雰囲気としてそれらに注目され始めたのって、やっぱり本村さんの「山口県光市母子殺害事件」からだと思うんだけど、その理由ってたぶん犯罪自体の内容ではなく、被害者である本村さんの対応のお陰だというのは事実だと思うんですよ。世間にそういうことを問うていくという意味でのね。
もちろん犯罪被害者に対して気の毒だというのは誰だって感じることだと思うけど、例えばオレは命が奪われるということに対してはそれがどういう状況であれ、事故でも事件でも病気でも、客観的に見て亡くなったということには変わりないんだし、事件の大小と被害者たちの気持ちの感じ方の大小は比例しない、つまり主観的な悲しみを他人が推し量ることは出来ないんだから、それに対しては「加害者を許せない」ということに於いての主観的な感情でしかないと思ってるんですね。それは事件の内容とは関係ない個人の気持ちの部分だから、同情しようがないと。基本的にはね。
そう思ってはいたんですが、この講演を聞いてもうちょっと突っ込んで考えるようにはなったというか、自分が犯罪被害者になったときにどう思うかというのは、その時の立場や状況もあるから感情としては一概にこうとは言えないけど、どういう過程で被害者がダメになっていくのかということを実感出来たという意味では、本村さんの講演は大変得るところがありました。
というのは、これはオレがよく知らないからってことでの偏見かも知れないけど、今までの犯罪被害者って、マスコミ報道とか見ててもどちらかというと情に訴えて「被害者たちはこれだけ可哀想だから加害者や犯罪を許せないよね」という同調を求めてるようなところがあって、そういうところで先に言ったように、主観的な部分での感情に同調を得ようとする報道のあり方に馴染めないから特に考えようと思わなかったというところがあるんですよ。
でもそうじゃない客観的な事実という部分で、何が被害者たちを傷つけているのかということを身をもってマスコミに報道させてきた本村さんの言動というのは実に明快で、はっきり言えば日本の司法制度が被害者たちを傷つけてきたという事実を明らかにしたのが一番の功績だと思うんですね。感情的に傷つけたのは直接には加害者であるんだけど、そういう犯罪を野放しにしてる現状と、そういう犯罪者を裁くシステムとして加害者偏重の司法制度度が被害者を二次的に傷つけてるということですね。
今回の趣旨である被害者支援についての法整備や、支援システムの自治体レベルでの取り組みなどが実現されてきたのは、そういう被害者が今まで感じてはいたけど(マスコミが感情的な部分でしか報道しないから)取り上げられなかった「どうして○○出来ないんだ」「これはおかしいんじゃないか」ということを、本村さんの裁判によって本村さん自身の実感として声を上げてくれたからだと思うし、それは本村さんが感情的にならずに客観的にこういうシステムはおかしいと言い続けたことにあると思うのです。
細かいところはすっ飛ばしますが、今まで被害者は裁判に於いて全くの部外者で、裁判を起こす権利も上告をする権利もなく(それは検察の仕事だということ)傍聴券すら自分で並んで取りに行かねばならず、ましてや発言権もない、加害者が被害者を侮辱する言葉を言っても黙って聞いていなければならない(それによって更に傷つくことがあっても)反論出来ないということが、絶対的に「おかしい」んだということが認められて、他にもいろいろ改善された制度はあるけど、ちょうど今月の1日から被害者の権利として「被害者参加制度」が施行されたり‥‥ということらしいです。
あと刑事裁判後の民事裁判についても付帯私訴制度が導入され(たのかな)、犯罪被害者の位置づけとしてかなり改善されたということです。それに伴い支援ネットワークや給付金などの面についてもここ数年で大幅に改善されたらしい。
※例として出されていたけど、例えば秋葉原殺傷事件において、最初に自動車で撥ねられた人には任意保険から保険金が降りるが、そのあと刺し殺された人には出なかったらしい。それを要するに最低限の保証をしようと言うことで、給付金を車の自賠責と同じ額にするという要求が通ったそうです。
 
金銭的なことに関してもいろいろ説明があったんですが、書ききれないので略。とにかく弁護人や裁判費用についても、加害者側には負担は軽くなるようなシステムがあるのに、被害者は自費であるということの精神的負担について、やっと認められて改善されてきたということで。
被害者支援としての取り組みとしては、犯罪被害者になったらまず身近なところで「役所」に行って対応してもらうというのが現状の被害者支援の現状としてはベストということです。今徳島を除くほぼ全国に支援センターがあり、基本的には役所を窓口にネットワークを広げていて、そこから被害者の希望に沿って専門機関を紹介してくれたり、警察に届けにくい性犯罪についても警察に届け出るか否かを含めて相談に乗ってくれるらしいです。
全体にはとにかく最初に言ったように判りやすく明快で、何が問題点なのかをはっきりと示していて、どちらかというと感情的なところで語られがちな犯罪被害者たちの現状をもっと現実的に突っ込んで「誰だっていつ犯罪被害者になるか判らない」という観点から、そうなったときにどうすればいいか、どういう支援が受けられるのか、どういう心構えでいるべきかということまでフォローしているとても良い講演でした。
最後に本村さん自身を支えてくれたものとして当時の上司の「君は社会人たりなさい」という言葉を紹介していて、とにかく社会に関わって行くことの必要性を説いていました。自殺を考えたり辞表を出そうとしていた本村さんに「会社にいる限り守るから、とにかく会社にいること」といい何をするにしても社会と関わっていることが大事だと言われたそうです。先頃始まった裁判官制度についても個人が社会とそういう形で関わっていくことで犯罪抑止力になる、そうすることが犯罪被害者をなくすことになるという考えで活動しているということでした。 *1
 
ちょっとウロですが、メモなのでこんなところで。細かいことを聞かれてもあまり答えようもないので、その手のコメントはあんまり欲しくないなあってことですいません。機会があれば本村さんの講演を聞かれることをお薦めします。関係団体は誰でも聞けるようにどっかに講演の動画でもアップすればいいのに。
今回は妹が抽選で当てたんですが、倍率は結構高かったらしいです。オレもこれ聞いてちょっと意識は変わったんで、大変に身になりました。

*1:オレ自身は現行の裁判員制度にはあまり賛成出来ません。せめてもうちょっと軽い事件から始めないかって気が。長引くかも知れない、しかも精神的に負担を強いる殺人事件などに一般人を参加させることの意味が判りません。