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鴨川ホルモー

鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

京都に行くたびに上賀茂下賀茂神社に行きたいなぁと思って予定には入れてあるんだが、未だに行けたためしがないのは縁がないからだろうか?
この本が好きだという人や、万城目学のファンだという人は以下、読まない方がいいと思う。
ツマラナイと思う本の感想というのもあれだが、あまりのツマラナサに自分的にメモっとかなければ気が済まないので書いておく。
とにかく、こんなアタマワルイ小説は久方読んだことがねえ。
280ページ程の文庫小説の90ページ目辺りで心底リタイヤしたくなったが、そこまで来たら本当にこんなアタマワルイまま最後まで行くのかどうか見届けるためにも我慢して読まなければ!という妙な好奇心のために頑張って読んでみた。言っとくけど、この「我慢して」というのはマイナスイメージな「我慢」ではなく、あくまでもオレ的にはすでに「レジャー」、つまり娯楽としての興味なので、我慢して読むくらいなら読むなよというファンの意見は聞くつもりはないのであしからず。
一応、90ページまでは結構丁寧に読んではいたけど、そこでもう耐えられなくなったので以降だいぶ斜めに読んだけど、斜めだとまた内容が頭に入らない頭の悪い文章なので始末に悪いんだよな。
ネタとしては面白くなりそうなだけに、何で小説としてこんなにへったクソなんだろうと気が遠くなる。ネタは面白いと思うんだ、ネタは。
批判なんで一応隠しときます。
 
まずさ、文章が読みにくいんだよ。何がって、この人の文章って読点の打ち方が変。読点っていわゆる「、」ってヤツだけど、この人みたいにすべての文節で打たれるといちいち文脈から文章の意味を考えつつ読まなきゃいけないからすごく面倒くさい上に、文章がブツブツとぶち切れてテンポが悪いからイライラするんだよな。だから慣れるまでに結構時間がかかったよ。普通は意味の切れ目で読点は打つものです。小学生でも習うぞ?
しかも文自体が下手というより、描写力と表現力に欠けてるんで、劇中で何が起こってるのか把握するのに時間がかかるんだ。一人称の小説なのに会話のやり取りで誰が何を言ったのか判らないってのはどうしてなんだ?あ、一人称小説に限らず誰が何を言ったかなんてどうでもいい、セリフの内容さえ把握してれば問題なしって人は突っ込まないで下さい。そういう人は一生その程度の理解で小説を読めばよろしい。 *1
ちなみに口絵の京都の地図を見ながら読んでも、激しく描写不足なので位置関係も把握出来んという‥‥少なくとも地図を付けた編集さんGJ!*2
そしてこの小説は「俺」こと安倍(下の名前は晴明なのか?それくらい最初に出しとけというか、出てないよな)の一人称の語りなんだが、これがオッソロシク頭の悪いことになってて眩暈がしそう。
たまたまこの本の前に東野圭吾の「名探偵の掟」(これも大河原警部の一人称小説だ)を読んでたもんだから‥‥さすが東野圭吾の方が上手いのは、一人称小説の書き方をちゃんと判ってるんだよな。当たり前だけど。そういや「チームバチスタ〜」も田口先生の「俺」一人称だったな。新人がやりがちな大いなる間違いなのか?編集さんは指摘してあげればいいのに。*3
 
一番問題だと思うのはさ、この主人公「俺」であるところの安倍が、たぶんこの小説を読む読者が一番気になるところであるはずの「ホルモー」という競技に全く興味を示してないってことだと思うのだ。あと根本的なことをいうと、街中で大声で「ホルモォォーーッ!」と叫ぶことが、夜中に神社の境内で裸踊りをすることよりも恥ずかしいことだっていう、安倍のその「基準」が判らんのだ。いや、当たり前のようにそれに同意を求められても。(言うまでもないことですが、安倍が「そう思ってる」ことが登場人物の中である程度共通認識だってことになってるのは、作者が「そう思ってる」ってことですから)
でもって安倍の興味は最初から早良さんであるんだけど、だからと言って早良さんとの青春片思いストーリーにならないのは、安倍が早良さんの「鼻」にしか興味がなくて、肝心の早良さんの人となりには全く興味を示してないからだってことなんだよ。
当然の話だけど一人称、主人公「俺」の小説ってさ、「俺」が見るものだけしか描かれず、「俺」が考えることしかダイレクトには読者に伝わらないんだけど、「ホルモー」と「早良さんとの恋愛」に関して、主人公の「俺」が興味をもってなければ、そりゃ読者には何が起ってるんだかって話だよなあ。一体この小説に描かれてる1年ちょっとの間、「俺」こと安倍は何をしてたんだ?
「ホルモー」自体に興味がない風にしか書いてないというか描写がないというか浅いというか、人間関係としてほぼ高村とのどうでもいいやり取り、早良さんの「鼻」が好きだということ、会長のスガ氏、凡ちゃん楠木、憎っくき芦屋‥‥くらいしか彼の意識にはないから、オニ語の練習やホルモーの特訓、戦いの様子が全く判らないんだよ。でも読者が楽しみにしてるのって、そういうところだよね?それを書いてよ。ホルモーの年間スケジュールすら把握出来てないオレは、話をちゃんと読んでないからか?それとも作者がちゃんと描いてないからか?まあ知らないうちに最後、京大同士で戦ってたよな。安倍たちの青竜会ブルースがルールにより失格負けなのはかろうじて思い出したよ。でもそれ以前に芦屋はどうしてそんなに「ホルモー!」って叫びたくなかったのか?裸踊りより恥ずかしいのか?そこはちゃんと芦屋の人柄として描いといてくれないと。ねぇ。(恥ずかしいと思ってると明言してるのは安倍だけです、確か)
まあそのようにそれぞれの登場人物もキャラ設定はあるんだけどそれがキャラ立てに全く生かされてないって感じ。なんでかって言うと、「俺」である安倍が興味を持ってないからどんな人物か判らない、メインキャラ以外は青竜会の部員ですらどんな人たちかってのが、読者に対してそういう意味での説明になってないってことなんだよな。安倍がどう思ってるのか、他の部員はどう思ってるのかという主観的視点も客観的視点もない。そういう描写が「小説として必要」ということすら判ってない作者に何をかいわんやという気分。ホントにこの作者は京大生? *4
そもそも戦ってる最中の10人の部員も彼の意識には昇らないからホルモー中の出来事も何が何だか、誰が誰だかだし(たかが10人なのに!)、おまけに京大青竜会以外の朱雀・玄武・白虎の各大学の概要もわからない。基本的にこの話を読み始めた人って、ホルモーの何たるか、ホルモーの面白さや恐ろしさを楽しみたいと思うのよ。後半は確かに話の都合上、そういう話になってるから余計にちゃんと説明しろよって思う。
というか、これって最初は普通に練習&1年目の戦いとしてホルモーの楽しさ・奇妙さの話をやって楠木とくっつく恋愛話をやって、続編として3年目の戦い、ホルモーの恐ろしさってことで17条ホルモーをやればよかったんじゃないか?
正当なルールもよく判らないうちに(というか作者はちゃんと考えてるのでしょうか?)、17条ホルモーでイレギュラーなチーム分割戦をやる意味も判らないし。というか、そりゃ他の大学は怒るわなーとしか‥‥(^_^;)しかもそこまでで他大学のことって全く触れてないから、本当に書き割りでしかないんだよ‥‥

というかだから、そういう部分で「俺」一人称の安倍がアタマワルイからこの話が頭悪くなってるってのも当たり前だと思うんだよ。
おまけに作者が一生懸命考えた気の利いた言い回しとか、シャレたウィットに富んだ(笑)会話、やたら難しい言葉を引き合いに出したりっていうのは、イコール安倍の言動、及び思考なわけね。安倍が何の説明もなしに三国志の逸話を引き合いに出すってことは安倍が三国志を読んでるってことだし、新撰組の話をするってことは新撰組を知ってるってことなのね。安倍の思考回路はそのまま物語の展開になるわけね。
だから知的レベルは高そうなのに頭は悪い安倍の一人称でどうでもいい話されると肝心の話が進まないというか、延々と安倍の頭の悪い思考回路の妄想を読まされると一体この話は何の話なんだろう‥‥という気分に。
安倍がどういう人物像なのか、バカってこと以外把握出来ないのは恋愛絡みのことといい高村との会話といい、考えてることが頭悪すぎるのよ。安倍が頭悪いからこの小説はあり得ないほど頭悪い小説になってんのに、主人公だから話はとりあえず彼を中心に進んで行き、彼の知らなかった事実は(早良さんの彼氏のことすら)あとでサラッと出てきて流されるだけだから、いろんなことがものすごく唐突なんだよな。唐突だし安倍がこだわらない以上、突っ込んだ話にもならないし。物語が全く立体的に見えてこないんだよ。「君と僕の世界」ってワケでもない、ただの「安倍と誰かの」平面世界。単純に安倍が見たもの知ったものだけで構成される物語なんだもん。
だから彼目線のこの小説が妙にリアリティなくて浅くていつの間にか話が進んでた‥‥ってのはそういうことなんだよ。
だいたいホルモーの全容くらい主人公なんだから把握しとけって思うんだけど(くどいようですが、安倍がそれを把握してないから読者は「ホルモーという競技」を楽しめないのだ)、どうも代替わりのことといい、妙にそういうルールや流れをつかめないのは、安倍がというより作者が把握してないからじゃないかって気がする。だって物語の認識レベルとしては、完全に作者=安倍だもん。作者が神の視点で安倍が頭悪いんじゃなくて、作者も頭悪いの。
もうこの小説自体がそういうものだと思ったらそういうものでしかないんだけどさー‥‥( ´∋`)
なんか上手くまとまらないから、言ってるオレがアタマワルイみたい。
 
もうちょっと感想的なこと言うと、オレ、安倍が一人勝手に芦屋と活動したくないからって17条の発議を出した時、スゲームカついたもん。何で彼は自分が失恋したことでそんなことが勝手に出来るのか?彼が失恋したこととそれは本来別の話、芦屋を良く思わない部の仲間が2チームに分かれることが他の大学のチーム編成にも影響するって、それが判っててどうしてそんなこと出来るのかと。なんて自分勝手な。そういうルールがあること自体は、もうお話の都合といいようがないけど。(だって、ホルモーという競技のルールとして統一感ないんだよな。17条って言うけど作者はそれ全部考えたのかなあ?まさか語感だけで「17条」?)
とにかく、早良さんに一目惚れといいながら何か行動を起こすわけでもなく人となりよりも鼻の形にしか興味のない安倍という主人公のやることには、全く共感出来ません。安倍の恋が成就しようがどうなろうが、全く応援する気になれん。というか鼻の形にしか興味がないなら早良さんとくっつかなくて本当に良かった。どう見ても芦屋の方がヤな性格でも安倍よりマシだと思う。
なんというかこの小説自体が「ホルモー」のいろんな意味での意味のなさとか馬鹿馬鹿しさ、まあ安倍の失恋発議の17条ホルモーもそういう意味の馬鹿さ加減としては青臭くてありなんだけど、その意味のない「ホルモー」という活動を本気でやってることが馬鹿馬鹿しく、それ故いかにも"大学生っぽい"ってことをちゃんと描写してないのはもったいないと思うんだよなー。まあこの文章の頭悪さかげんは何をどうしてもって話だけど。一人称小説の書き方くらい勉強してきやがれ。
ちなみに頭90ページを真面目に読んでた間あまりに退屈な文章に耐えられなくなって、途中息抜きに先日買い直した栗本薫の「伊集院大介の私生活(短編集)」をポツポツ読んでました。まともな文章読んでリセットしないと90ページですら一気に読めねーレベル。飽きちゃって。
つーことで鹿男は最初からもうリタイヤです。レジャーとしても最後まで読み切る自信はねえ。大体あの主人公好きになれないし。(と思ったけど一応頭の30ページくらいは読んでみた。読点の打ち方は学んだみたいね)

*1:ラノベ作家さんに聞いた話では"セリフしか読まない"って人が結構いるらしい。オソロシや〜

*2:あと場所のことで些細なことをいうと、オレは最後まで、どうして高村が住んでる"大学から自転車で40分もかかる"岩倉の下宿、地図を見るにちゃんと鉄道が通って駅まであるその場所に、台風の時ですら「電車で行く」という選択肢が出てこなかったのか不思議でならないよ。(まさか作者が自転車でしか行ったことがないからってワケじゃ‥‥)

*3:ちなみにオレも前に私的にちょっと書いてみたことはあるけど、以外とルールが厳密だからムヅカシイのだ。

*4:ちなみに高校の時に教え方が上手くて面白くて生徒に人気があって、生徒指導だったんでオレもよく相談に乗ってもらってた先生が京大だったんで、京大の人はウィットに富んでて頭の回転早い面白い人ってイメージがあるが。