そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

プロフェッショナル仕事の流儀

 「闘いの螺旋、いまだ終わらず〜漫画家・井上雄彦http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/090915/index.html
なんか感心したのが、井上先生の普段着のセンスのよさと、風貌のカッコよさです。センスいいマンガを描く人が必ずしも本人カッコよくてセンスがいいとは限らないのが漫画家ってもんですが、この人はそのまんまですね。乗ってる車は左ハンドルだし、ネームに行く場所は渋谷っぽいし(笑)(渋谷に一日車停めたらいくらになるんだろう)
というか、オレはほぼ同い年なんですが、先生のハタチ頃の写真見ると当時いかにもいがちなヒョロい優男で、オシャレ系な(江口とか上条とかみたいな)絵を描いてて実際そういう絵を描く人に見えたのに、絵柄の変遷が判りやすく本人とシンクロしてるなあ‥‥ってことね。
そういう意味で作業風景とか見てても、役者が今やってる役と演技にのめり込むように漫画を描く人って意味ではすごく漫画とシンクロするタイプというか、(それは普通なんですが)そういう意味では純粋漫画家って感じなんだなーと改めて。
あとなんというか、謙虚でもないけど偉そうでもないっていうニュートラルなところは好感持ちました。淡々とマンガを描くのみ‥‥って感じがね。
いやなかなか興味深かったです。
オレも一応木っ端漫画家の端くれとして(いやすでに過去の話でいいですがw)、井上先生の言ってることはすごくよく判る、別段漫画家として特殊なわけではなくみんなこんなもんですよってのは当り前だと思って聞いてたんですが、言ってることの内容はちょっとばかり難しいです。みんなそんなレベルで仕事してない、いや出来ないからってって話でさ(笑)
番組的に対象者を持ち上げてるのは当然としても「井上雄彦」だからより広く説得力があるってのはともかくだけど、漫画家のみなさんは殆どみんなこういう気持ちで仕事してるから別に井上先生だけが特別じゃないってことは言っときます。そんなの「当り前」だよ、プロの作家なら。まあ作業工程自体はいたって普通ですね。
 
この人もともと基本的な画力は絵柄に関わらずものすごく高い人だってのは(ジャンプに連載をするレベルってのは相当上手い人だってことは基本としても)、「スラムダンク」がそもそも初っぱなのラブコメ展開の時から漫画として上手かったし、この番組でも紹介されてたアレ(40ページ音無し漫画)を考えてもそうだろうと納得するんだよね。ただその基本的な画力&漫画力が高いっていうレベルが、なんていうのか他の漫画家さんたちと違う立ち位置(レベルって言うと誤解されそうだから、"方向性"みたいな意味で)だなあとは思います。
だからバガボンドみたいなもの、内容も表現も常に新しいものを求めていくってことのキャパがあまりにも他の人と違うなぁと思わざるを得ません。向上心って意味で「手に負えないことをやる」っていってたけど、実際仕事として漫画という創作的な活動をしてて、仕事効率として自分が不利になるような方法を思いつき実践するってのがどれだけ大変かってことを考えると、井上先生は別に他の漫画家と比べて特に違うってことはないけど、あのクオリティで仕事してて更にああいうことが出来るってのは、やはり未だ相当漫画力として余力があるなぁという凄いというか。
筆書きってのは特に珍しいことでもないけど(安彦良和だって確か同じ理由だし)、あのバガボンドの画面を一発描きで修正無しってのはスゴイと思う。もう殆ど昔の浮世絵師レベルだよなー。
オイラが好きなのは、作画的に極めて行く中でも「漫画」という枠内には収まってるエンタメ性というか、考えなくても主観的なことだけでマンガを描かないとういう外に向けたサービス精神が、ちゃんと「描くこと」の大元にあるってとこです。まあ今は「バガボンド」より「リアル」の方が好きなんですが。だってバガボンドって今の展開、読むのしんどいんだもん。というかそういう意味で井上雄彦本人の今現在の心情には興味がないからかも知れん。最新刊の又八と母の話にしても、良い話なんだけどああいう心の弱さの話って今あんま興味ないし。
上手く描ける時と描けない時の違いを聞かれて「心の在りよう」って答えてたのが、もう殆ど達人レベルだなーと思ったんだけど、要は技術力としての画力が高いからそれをまったく考慮してない発言だよね。本当に武道の達人レベルの。技は体が覚えてるからあとは心の在りようで勝つのだ!的な(笑)
描く上でいかに気持ちや心を絵に乗せるかってことだけが彼の問題であって、そもそも頭では思ってても画力が追っつかなくて表現しきれないとか、それでも諦めて原稿を渡さなきゃいけない作家ってのがどれだけいるかってことを考えると、その「上手さに乗っかった向上心」ってのが何となく見えるような見えないような。
まあその辺からして漫画として「ストーリーに興味はない」ってことなのは、キャラの心情や生き様を描くことが、すなわち彼にとっての「作品」であるってことだしさ。
ああそだ、スゴイと思ったのは、自分が作ったキャラなのに「コイツのここが好きだ」と思えるってことかな。キャラが勝手に動きだすってのはあるけど、更にその先だよな(笑)そこに気がついて膨らましていくって、誰が作ったキャラなのかとw
 
で、これ組閣の所為で延長してたんだけど、録画延長したはずなのに最後の数分切れててなぁ。と思って再放送のお知らせもしときます。21日月曜深夜0:45〜に再放送だそうです。こういうときだけはありがとう、さすがNHK