そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

犬の消えた日

http://www.ntv.co.jp/inu/
脚本:坂上かつえ 演出:大塚恭司
 
見るつもりはなかったんだけど(だいたい終戦ドラマってあんま好きじゃない)ウッカリ見ちゃったよ。泣けたよ (ノ_-。) お涙頂戴じゃなくて、非道い史実だって意味で。
戦時中の飼い犬供出の話で、供出された犬たちは殺されて、戦地の兵隊さんの毛皮のコートになったらしい。
ストーリーの要所要所に当時のニュース映像が挟まってて、西島さんのナレーションで当時の状況の解説みたいなのが入ってるんだけど、そのせいで余計に事実感が強いというか、淡々と描いているけど主人公一家の考え方や気持ちを軸に据えてるから、当時の状況の怖さが地味にちゃんと伝わってくるのは上手いなあと。そんでその実際の犬コートの映像も出てるんだけど、違う柄の毛皮が継ぎ接ぎで‥‥ あれって、実際着た人たちいるんだよなあ。知ってたのかなあ飼い犬だって。
時間帯的に子供も見るんだろうけど、子供はどう思うんだろな。まあある程度ままならないのは戦時中だって今だって同じだろうけど、それでも「お国のために」っていう大義名分がどれだけ愚かなのかってのは分かるのかなあ。
本当は戦局が悪化してるのに日本が勝ってると国民を騙して、しかもそれを疑うことなく喜んでお国のためにと戦地に行った人たちと、殺されるとわかってて家族の一員である犬や猫を供出するのはほとんど同じ事だと思うって話だよな。そりゃペットと人間だと人間のほうが‥‥ってのは当然だけど、だから犬を無駄に殺してもいいって話じゃないしなあ。
主役の松倉家の人たちは結構いい暮らししてて、人間が食べるものも困ってるような状況でペットを買うことが出来て、洋風のおうちに住める職人さんの家だけど、だから余計に今とダブらせやすいって感じはあるか。子供からしたら実感的かなあ。
お父さんの修平(西島秀俊)が、お国のために役に立ちたいと思うのは間違ってはないけど、リアルな戦時体験を「はだしのゲン」で刷り込まれてるオレら世代からしても当時の日本の方向性が間違ってるってのはわかってるだけに、どうしてそれを信じてたのか本当に不思議だよ。はだしのゲンのお父さんが明らかに非国民側のインテリな考え方だったってのも子供心に当然だと思ってたから、内心我慢してたとかじゃなく、心からお国のためと言われて協力するのが当然だと思ってる人たちってのは何でだろうね。
まあだから、そういう当時の状況に対して真面目な人が、自分の代わりの軍用犬を差し出し、働いてた若い職人仲間が兵隊に取られ、犬を供出して、身内のような職人さんを空襲で亡くして、やっとそれがおかしいってことに気づくってのがリアルかなとも思うけど。
本当にどうしてあんなにも国民総ヒステリー状態だったんだろう。東亜が捕まる前に戦争が終わってほんとに良かった。
ドラマはそういうヒステリー状況や戦争中の緊迫感というより、地味に何気に非道いことが行われてるってのを、修平やさよ子(荒川ちか)の気持ちから描いてるのがなんかキツイんだよなあ。あ、そういややっと思い出した。さよ子役の子って「スクール!」のいじめっ子の翔子ちゃんだよな、思い出せてスッキリw
そのかわり演出が妙な緊迫感を醸し出してて、BGMの使い方といいものすごく不安で納得できなさを感じさせて、ついつい見ちゃったんだよな。カメラの目線が真っ直ぐというか。
最初のほうで職人さんたちが使う握り鋏をなんでか抜きで撮ってるのに何のフォローもないから、ちょっとあれっと思ったんだけど、徳さん(内藤剛志)が防空壕に逃げるときにその鋏を放っとけないからといって取りに帰って爆撃に遭うってことで、やっとああなるほどと思わせるような演出もなあ。鋏が命より大事だなんてことはないだろうに‥‥ってのも、負け戦だとわかってて出兵することもないだろうにってのと同じことだけどな。
ああ、松倉家の見習いの元太を須賀健太がやってたんだけど、ちょっと知恵遅れな青年の感じがまた上手くてなあ。知恵遅れだから戦地でも融通がきかずに、戦時調達を盗みだと言いはって結局上官の暴行で無駄死にとか、たぶんこういうケースじゃなくても本当にあったことだろうからやりきれんな。しかも須賀くんは最後まで上手すぎる。
そういやこの脚本家の名前は微妙に記憶にあったんだけど、佐藤祐基が出てたフジの昼ドラの人か。あれもなんかキツイ話だったけどさ。
なんか、泣かせの話じゃないのに地味に非道い話すぎて涙でたよ。アルフの写真を届けてくれた清田さんや、東亜をこっそりたすけてくれた警察の人とか、個人ではみんな何が正しいのか、というよりそういう状況が間違ってるってことに気がついてるのに、本当にどうしてあんな非道い命令に従ったり、そうでない人に対しての暴力がまかり通ってたのかなあ‥‥と思わざるをえない様なドラマでした。松倉の若い職人さんは反戦派だったんだよな。他の人は国の言うとおりに行動してそれが個人の事情になったときにやっとおかしいと気がつくのも、まらそういう状況の中ではリアルなのかなあ。
ほんの数十年前にそんな時代があったってことは忘れちゃいかんよな、やっぱり。大義名分の正しさよりみんなの幸せだよ。