そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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のぼうの城

http://nobou-movie.jp/
監督:犬童一心樋口真嗣 脚本:和田竜 原作:和田竜

 
かなりご年配向け仕様だけど、普通に面白かった!
狙いどころはかなり上年齢層向けのエンタメ映画って感じで、各所に「ここで笑ってください〜」というポイントがあって、特にご年配夫婦とかはその通りに笑ってたのが印象的。いやまあ普通におもしろいシーンではあるんだけど、ちょうど周囲に何組かいたご夫妻方はオレが思う以上にウケてたんでビックリしたというかw
そういう意味でご年配仕様のエンタメ映画かなあ。(でも若い人たちも結構いたんだよね)

11月2日に公開してるのに今頃見に行ったのは、どうしようかと迷いつつ特に劇場で見る予定がなかったからです。(他に見たいものいっぱいあるし)
野村萬斎は見たいんだけど榮倉がヒロイン、ヒロインでなくても榮倉押しだと思うとチョイ不愉快‥‥という気分だったんですが、でも見てきた相方が1000円なら見る価値はあるといったんで。
実際榮倉はそんなに気にならないけど、でも演技の下手さ、まさにでくのぼうさ加減はかなり気になる。ほんとに上手くならねーなあー、えいくらはー(スマン、ほんとに嫌いなんだよ)まあ最終的にはキャストのバランスとしてはありかなーと思ったんでいいや。
 
前置き長くなっちゃったけど、映画はそれなり面白かったです。それなりっつーか、ウチ帰ってきて相方と話してたらこれはこれで面白いかなと思えるくらいには。
ストーリー自体は史実をもとにした、石田三成上地雄輔)の忍城攻略で、最後まで落ちなかったその城の総大将が領民に(でく)のぼう様と呼ばれ大人気の、うつけと噂に高い成田長親(野村萬斎)で〜という話。話の内容は結構わかりやすくて整然としててバランスよく展開してたんで特に何も言うことない感じ。展開自体はかなり計算されてる話だと思ったし。
脚本家志望の原作者が書いた原作小説を元に映画の脚本も書いたってことで、最初の方はかなり説明セリフが多くてまどろっこしかったけどその分わかりやすかったってのが、相当にご年配仕様かなと思ったところ。オレらのテンポで考えたらイカンのだよなw
まあそのせいで歴史に詳しくなくても時代背景がわかりやすくて、忍城とその周辺の人々の暮らしぶりなんかもよくわかったんだけど、ちょっとまったりと長かったかなって、それくらいかな。
この映画ってとにかく一にも二にも領民たちの「のぼう様の人気」がキモだからそこは丁寧に描くべきだと思うけど、ただオレはあんまりそこんとこで説得力があるほどのぼう様が何かしてるふうには思えなかったんで、なんで慕われてるのかよくわかんなかった‥‥てのがね。
原作は読んでないんだけど、のぼう様のあの雰囲気はやはり野村萬斎じゃないとなあーとは思った。弱いんだかそうでないんだかどこまでが本気なのかわからないとこが野村萬斎のあの風貌と合ってていいよ。
そしてよく考えなくてものぼう様、ほとんど何もしてないんだよねw
開城するはずの予定を、使者が気に入らないからといって「嫌なものは嫌なのだ!」でぶち壊し、勝手に戦をすると決めてゴメン!と農民たちに謝り、農民は農民で戦はやりたいくないけどのぼう様がそう決めたんなら助けてやらんとなあ〜で戦支度をし、石田軍2万の兵相手に500人の武士と3000人の農民で迎え撃つことに‥‥という、ありえねー話。しかも結局勝つというw(←ネタバレじゃないよね、だってそういう話だし)
いやその「勝ちよう」がどうだったかってんだけど、まあそこも戦国時代の戦の様式美があるからわかりやすく勝った負けたってわけじゃないんだけど、そこの展開をそれなりわかりやすく、しかもそれぞれの力関係とキャラも見せつつ‥‥なので、まあ確かにこのテンポでいいのかなって気はする。
そこら辺はとにかく、今までの時代劇ではあんまり見たことなくて面白かった。
見どころはそのクライマックスでの萬斎様の田楽踊りだよ。さすが萬斎様はスゲエ。下品な田楽踊りを延々と、思ったより長く続けるという萬斎様の芸を堪能!
あと野村萬斎がさすがなのは、普段は弱腰のうつけ総大将なんだけどどこからどこまでが本気かわかんなくて、実際戦では何も指示しなくても歴戦の坂東武者の家臣や武士魂のある農民たちの働きで石田軍を撃退してるダメ総大将なのに、時々ものすごい本気の目をするとこが実際以上に効いてて、それがクライマックスの覚悟と相まってるとこかなあ。そしてそれ自体も冗談とも本気とも取れない、食えない感じなのがいいというか、なんかいろんな意味で野村萬斎カッケー!を堪能する映画だったよw
んで石田三成上地雄輔が思った以上に良かった。(てか萬斎と榮倉以外のキャストも知らんかったんだけどさ)
まあ上地はもともとデキる子なので石田三成と聞いてもなるほどと思っただけだけど、これ、相当いい役だよなー。そしてその家臣が山田孝之平岳大で、これもいい山田様だったw
頭のほうしか出ない豊臣秀吉市村正親だったんだけど、小田原城攻めで箱根湯本の温泉に入るときに山田様共々潔すぎるお尻丸出し状態でテルマエ・ユモト状態なのが…(笑)
忍城側ののぼう様の家臣の丹波守の佐藤浩市、黒尽くめで戦場では漆黒の魔人とか呼ばれてるとかカッコイイし、和泉守のぐっさんちょー強そうだし(NHK大河の「風林火山」における板垣@千葉真一みたいw)、酒巻靱負の成宮もいい感じだった。(スマン、成宮もどうでもいい)
ところどころ現代風の喋り口調のキャラがいて、時代劇だと思って見てるからかなり違和感はあったけどキャラとしてはありかなあ。まあ何とかw のぼう様の「ゴメーン!」とか「バカー!」とかちょっとおかしかったし、現代語的ニュアンスでの意味の分かりやすさはあったんでいいかなと。
ちょっとコントみたいな、ギャグスレスレのキャラ同士のドタバタな絡みも面白かったし(笑)
それから見所なのは衣装や鎧甲冑が大変良かった!孔雀の羽付けてたり、背中にデカい羽背負ってたり大仰でカッコイイの。カッコイイのに兜飾りが蛙だったりドクロだったりとか、ミスマッチでいいの。のぼう様こと長親の陣羽織が白地に蛙イラストなのも超ステキ!
何かといろいろカッコイイものありました!(だいぶ面白かった気になってきたw)
 
完全に犬童監督と樋口監督の二人監督なんだなーってのはEDテロップで見てわかったけど(ネット記事関係でもそういう触れ込みだったんだね)、うん、これ完全に樋口真嗣の特撮ありきの映画だなあって感じでした。2時間20分のウチほぼ半分が戦シーン。しかも水攻め。
面白かったしよく出来てたんだけど、手放しにスゲエって言わないのはすごく計算されて卒なくバランスのいい映画で、盛り上がりのカタルシスがちょっと普通の映画とポイントがズレてるからかなあ。理屈ではどこが一番のクライマックスかはわかるんだけど、この映画のキモ自体がのぼう様だから若干合戦映画っぽくないし。そもそも城の水攻め攻撃自体が、じゃあどこで盛り上がるかっていう話でもあるんだけどw 一番のスペクタクルって「決壊しろ!」だよなw
というか全体に昭和の荒くれたモノクロ時代劇っぽいんだよね。良くも悪くも。今の特撮技術で昭和の、特撮を使ったモノクロ時代劇を再現してる感じ。
特撮ありきだからああいう荒い、フィルムっぽい感じの画面になったのかどうかはわかんないんだけど、その点ではマッチしてるし効果的ではあった。ただオレは特撮クラスタだけど日本の昭和特撮を手放しにスバラシイとは思わないので *1 、この映画はそれのための映画だって時点でいろいろ残念かなあとは思う。どちらにしろハリウッドVFXには敵わないからヘタにしょぼいCG映画にするくらいならこっちのほうがいいと思うけど。
ぶっちゃけミニチュアCGの特撮だと思って見ればスゴいし、そういうのが好きな人は見るべきだと思うよ。
つまり日本の特撮ってリアルさを求めてるんでなく迫力ある本物の映像のために特撮技術を発達させたってことなのかな。しかも水という一番ごまかしが効かないものでそれにチャレンジしてるのはスゴいし、ミニチュア特撮だと思えばとても迫力あったと思う。
オープンセットもかなり大きめのセット作ってるし、実写部分が多いから画面的にはちゃんとお金かかってるなあと思えてよかったです。
ただ本当に昔の特撮っぽく撮ってるのはあんまりいただけないかなあ。大魔神の時代の映画かと思ったよ(^_^;)
あともしかしたらかなり意図してだとは思うけど、あえて昔の特撮っぽい画面構図やカット割りにしてるのかなとも思った。大波が迫ってきて家を飲み込んで手前の方に人が逃げてて、次のシーンは水浸しの城のパノラマカットという流れはスゲー既視感w 様式美かw(実際に波に人が飲み込まれるシーンは東日本震災への配慮でカットしたらしいけど)
逆にCGはわかんないくらいにすごく上手く使われてて、特に平地のパノラマ風景とか、多分細かく使ってるCGはほぼ実写レベル。見分けがつかんw

それでもやっぱり納得いかないのは、なんで特撮風の合成っぽいカットを使うのかなあってとこ。
水関係はともかくとして、最後ののぼう様が櫓の上にたってるとこ、なんであんなに合成くさいの?あれも様式美?普通に天気良い日に実写で取ればいいじゃんと‥‥(そういや宇宙兄弟の元宇宙飛行士と発射を見学するとこ思い出したよ)ああいうのはマジでやめてほしいなあ。ときどきそういうカットが入って、ものすごく我に返って見る気なくすよ。
特撮カット以外の演出がかなり目新しい、時代劇っぽくない撮り方だったりしたから余計に変な感じというか。
冒頭での、音声は普通に流しつつ画像を静止画にして名前をテロップで入れるとか、和泉守のバトルで水飛沫だか埃だかでハイライト効果をフィルターっぽく掛けるとか、時代劇なのにあまり見たことないアングル使ったりとか、映像的には面白かったからさー。
戦シーンも、城自体が特殊な地形にあるから戦法として見応えあって、騎馬鉄砲とか長距離狙撃?とか面白かったよ。後とにかく水攻め。もー、これに尽きる。こんな規模のものだと思わんかったよ。何なの、28キロの長さの土手って!w
なのでまあ、1000円で見られる見たほうがいいと思うし、特撮博物館なんかに行ってミニチュア特撮スゲーと思ったんなら見どころたくさんあるし、何より水攻めが冒頭と途中に2度あるのはやっぱり作ってるほうがわかってるよね。そりゃ冒頭で度肝を抜かれたなら、もう一回じっくり見たいと思うよw
それと最後に現在の忍城付近の様子、地名とか未だに残る石田堤とか石田軍が陣を敷いた丸墓山古墳とか今も残ってる遺構の映像があって、あれは行きたくなると思ったよ(笑)忍城跡や周辺の沼は完全に埋め立てられて平地になってるらしいんだけど、古墳の上に登って忍城を想像してみるのも悪くないよなあとw
映画としては大変いい映画でした。面白いかどうかは好みかなあ。つまんなくはないし、見て損はしないと思うよ。

*1:ミニチュア特撮自体は素晴らしい職人芸で芸術的だと思うけど、それをメインにした特撮映画は今の時代にはそぐわないと思う派。でも全部CGでいいかといったらそれは嫌な、特撮ないと困るし技術は受け継いでいって欲しい共存派でもいいけど。