超人幻想 神化三六年

超人幻想 神化三六年 (ハヤカワ文庫JA)

コンクリート・レボルティオの前日譚。
ちょうどアニメの方は10話の兵馬の話までは見てたんでタイミングはよかったけど、そもそも時間SFだと思ってなかったんで何をやりたい話なのかがわかるまではちょっと難しかった。というか芳村って名前が出てくるまでそういう話だと思ってなかったというか、正直文中の描写のせいか、すごい解りにくくて戸惑ったよ。
念のため他のレビューとかを見るとシンプルでわかりやすいってのが多いだけにオレの読み方がおかしいのかなあ？本編世界観の理解のためには最後のネタバレした辺りからもう一回ざっくりと読み返したほうがいいかもしれん。
でもとりあえずファンタズマゴリア！（笑）以下少々ネタバレだよ。あんまり内容を理解出来てると思えないのでなんか勘違いしてたらゴメンナサイ。
　
時間SFとしては、歴史改変を「揺らぐ現実」として描くことそのものはなかなか新鮮だったけど、いかんせん何がその分岐点なのかが終わりの方にならないとわからないのでこっちの理解が追っ付かなかった…かな。タイムパラドックスものは得意なんだけど、それでも昭和史を把握してないのがネックか。
この話のとっかかり、外側の時制は「神化」が終わって25年くらいたった「今」なんだよね？年号が何かはわかんないけど。結論としては現実は常に揺らいでるってことかしら？
その辺、アニメのコンレボ本編が神化42〜48年くらいをメインに描いてるからちょっと新鮮だった。というかちゃんと「今」になってるんだなあと。新人作家の話という断片でしか記されてないけど、超人が本当に活躍してたパラレルな日本の「今」ってどんな「今」なんだろう。（超人の存在的に）
普通に多くの超人は人々の記憶の中で忘れ去られたり超人ゆえにオリンピックに駆りだされたり（超人というよりオリンピックの偉人になるってこと？）更には戦争で兵器として消耗品のように使われ忘れ去られ、それ以外はフィクションや都市伝説として定着してしまったために「実際には（現実の存在として）超人はいなかった」ことに歴史が記憶として上書きされてしまったってことなのか？人の記憶は曖昧っていう前提ありきの物語？記憶によって上書きされた「物語」と「真実」の間で揺らぐ「現実」というお話なら、それはそれでとても興味深いんだけど。
神化から発展した「今」の現実の世界（この世界とは違う世界線の）にはすでに超人はいないようだし、何もかもがあやふや（ファンタズマゴリア）な「記憶の過去」の上に成り立つこの世界は、いまだどこかで過去が書き換えられている…ということならちょっと切ないよ。
その辺の幻想としての超人たちに救いを見出すような話と、この作者のいつもの「ここではないどこか」を夢見ることが自分の中で上手くリンクしなくて消化できなかったってのはあるんだけど、やりたいことがどういうことかは何となく分かるからいいかな。感想として上手く言葉で説明出来ないんだけど。
この本自体は、異型の怪物たちを正義のために戦った超人として人々の記憶に焼き付ける、フィクションに定着させる（もしくはその逆）ということで超人という存在を讃えたい、いつまでも憧れであって欲しいという気持ちだと思うんだけど、そういう感じでいいのかな。実際になんだったのかじゃなく、どういう存在として歴史の記憶に残っているのかみたいな。
それはあとがきにあるような、現実とフィクションのヒーローを同列に存在するものとして記憶してきた少年少女たちのための物語、つまり彼ら（作者）の主観の記憶の中のフィクショナルな昭和史再構成の物語を、あるべきはずのもう一つの世界として描いてるということだと思うんだけど。それが「ここではないどこか」として救いになる話ならそれはそれで。本編の超人課の超人を守るってのもそういう意味でなのかな。
そういや11話で帝都広告社がイメージとしての超人幻想を売っていくみたいな話してたんだけど、そういうことなのかなあ。いやまあ今帝都広告社と超人化と、劇中で正史としてどっちが正しい結果を残すのかもわかんないんだけど。
あとオレらがよく知ってる漫画の神様が女性で、しかも若くして亡くなってしまってる世界における「漫画」というものはどうなってるんだろうね。ファンタズマゴリア！
あ、そういやこの話の超人の扱いって何となく芸能人とか俳優っぽい感じがするかも。主人公が超人をTVの中で見るような、憧れる気持ちとか身近に感じるってとこがそうだけど。
TVでは見るし、都会では本当に生活してるらしいという話は聞くけど本物を見たことがないのでフィクション的に感じる、そういう意味では存在するかどうかあやふや（実際は人間なのであやふやってことはないはずだけど）街で見かけてもSNSで書き込んだり写真をアップしたりしてはいけない存在（＝綺能秘密法）だってとこも芸能人っぽいわーｗ