そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

君の名は。

http://kiminona.com/
監督・原作・脚本:新海誠

 
SFファンタジーらしい壮大な出会いの物語で面白かった。
新海誠監督作品が好きかと言われたらそこまででもないんだけど、一応新作のチェックはしてるって程度。(「言の葉の庭」は見そびれた)
でも今回の作品は今までオレがダメだったところが薄まってて、ストーリーにはいろいろ突っ込みたいところはあるんだけど見てる間は疾走感とテンポの良さが青春のきらめきエネルギーが迸って駆け抜けていくような勢いが心地よかったし、セカイ系だけど今までの作品とはちょっと違う感じだった。
彗星という非日常の現象ってのもあって、運命を超えた出会いがとても幻想的だった。本当に新海監督はやりたいことが一貫してるなぁw
オレは泣くような話じゃなかったけど、隣のにーちゃんはずっと泣きっぱなしだったよ。まあ最後の最後はちょっと泣けた。これは大人よりもピュアな若い人の方が(若くなくてもw)感覚的にハマるのわかる。
そして何よりとにかく新海作品だけあって背景がメチャメチャ素晴らしく、映像が超美しかった。映像としての美しさと、日常あまり見ない視点での画面構成(低い目線の引き戸とか>これは多すぎ)は、見たことあるけど見えてなかったものという意味で、レンズの圧縮効果や電線のある風景を多用したヱヴァの庵野監督の視点とも通じるような新鮮さだったし。
あと音楽も疾走感にひときわリンクして効果的だった。
そういやRADWIMPSってあのマジンボーンの衝撃のED、「バンドを組んだよ」の味噌汁’sなんだって?言われてみれば音の感じがそうかも。最初劇場予告で聞いた時はBUMP OF CHICKENのフォロワーかと思ったくらいに知らなかったんだけど(よく聞いたら別にそんなわけでもないか)、今サビの部分が頭のなかでぐるぐるしてますよw
 
オレが新海誠作品にハマらないのはキャラデザが好きじゃない(というか新海監督のキャラ絵やセンスが好きじゃない)からってのがあるんだけど、今回はキャラクターデザインに「あの花」「ここさけ」の田中将賀作画監督今敏作品や「思い出のマーニー」の安藤雅司なのでそれもよかったんだと思う。
その上で、今まではセカイ系にしても子供っぽい幼い感じの話が多かったように思うんだけど、今回はちょっと違うというか(「言の葉〜」見てないからアレだけど)ちゃんとメジャーな雰囲気になってたのがよかったのかも。プロデューサーがあの川村元気(「世界から猫が消えたら」とか。見に行かなかったけど)なのもあるのかな。昨今のアニメ作家は個人的には細田守監督だけではアレすぎるので新海誠監督がこういうメジャーなものを作るなら良いと思います。
劇場にも若い子多かったけど、これは若い子にウケるのすごくわかる。今日はファーストデーで観たけど1800円の価値はあるよ。
というか今まで新海監督の作品ってマニア向けみたいなとこあったけど、今回は完全にSFファンタジーなのになんでここまで受けたんだろう?何が今までと違ったの?プロモーション?(そんなにしてないよねえ)
あとなんだかすごいネタバレがあるって話だったけど、その真相がわかってからのどんでん返しよりもそのあとの二人がどうなるのかってことでやたらハラハラしてしまった。シン・ゴジラとは違うアプローチのポスト3.11の話で、ある意味では救いじゃないかなあ。
ネタバレの入れ替わりの真相は途中で気がつくんだけど、そこはあんまり問題ないかも。それがわかってても面白いよ。
あ、でも最初にオープニングが付いてるのはなんかちょっとダサいと思う。映画見に来た感覚だったからあのいかにもTVアニメ的なオープニングの儀式wはすごくアニメっぽくてちょっと戸惑った。そうなるのわかってるだろうになんでそうしたんだろ。わざと?
以下とてもネタバレ。
ネタバレが若干ミステリーっぽいので、もしかしたらネタバレ見てからの方が余計なこと考えなくて済むから話がわかりやすいって人もいるかもしれないけど、ネタバレしててもちゃんと面白いし、肝心なのはそこじゃないのでまあ大丈夫かも。
 
 
 
いろいろ詰め込んでる割にストーリーはよく出来てるし、ファンタジー的な大嘘やごまかしはあるけど気持ちとしてそこにリアリティはあるので、普通に楽しめました。オレはお話の出来が良いってだけで点が甘くなるのだw
これポスト3.11なのはもう言うまでもなく、三葉からしたら理不尽に突然日常が終わってしまう悲劇で、瀧からしたら日常だと思ってたものが急に非日常へと入り込んでしまった世にも奇妙な話…っぽいけど、たまたま手に入れた物の持ち主を辿って行ったら天災被害で亡くなった人のものだったってのに近いと思う。そこから彼女のことを知り災害を身近に感じるという追体験みたいな感じ?ただ災害を止めることは出来ないけど人を救うことは出来たといういうファンタジーってだけで。そういう奇跡があれば良かったのにな…という救いの物語。
黄昏時に御本尊のある隕石穴で時空を超えて出逢うとこは、組紐とか口神酒とかギミックが多いのでなんとなくそれっぽく納得してしまう良いシーンだった。なんか夢の中の不思議な体験はこの時のためかも…はちょっと余分だけど。もうちょっと個人的な代々の巫女の能力でもよくね?人生で一度きりしか発動しない取っておきで。
 
ネタバレの話をいうと、何かネタバレがあるらしいとはチラッと見かけたので最初そればっかり考えちゃったよ。
男女の入れ替わりがお互い知らない同士ってことで、時間モノかパラレルワールドか、もしかしたら「イニシエーション・ラブ」(どんな話か知らないならネタバレは調べない方が吉)みたいな叙述トリックか…と思ってたんだけど、時間がズレていたと。
それって時を越えて火事で死んだ消防士の父親を助ける「オーロラの彼方へ」に近いと思うんだけど、これも時を越えているということが重要ではなくそこからのサスペンス展開が話のメインよね。
ただこの「君の名は。」がすごいと思うのは、大嘘のつき方が臆面がないということなんだよ。
普通は現代を舞台にしていると思わせるなら3年前に彗星が衝突したなんていう話は持ってこないし、そこに過去の人間と心が入れ替わって大惨事を食い止めたなんていうファンタジーネタはかぶせてこないでしょ。良くも悪くもあまりに大胆すぎる(笑)
その時間がズレてたってのについては、東京の瀧の方はカレンダーが2016年だったのと使ってるスマホiPhone6だったのに対して、三葉の方はよくわからないAndroidスマホ(だったと思うけど)使ってて、あとLINEを知らないってことでもしかして三葉の方が過去かな?とは思った。(3年前だってLINEはあったはずだけどw)
それでこれが一番気になってしようがなかった大きなゴマカシだと思うんだけど、いくらなんでも日常生活してて、しかもスマホ使ってて日付見ないわけないと思うんだよね。瀧の家にもカレンダーあったやん。
あと電話すればいいじゃんともずっと思ってたんだけど、その電話やメールを緊急時にしか使わないって言ってたのなぜなんだぜ。電話しない理由がわからないよ。いいけど瀧はLINEやってんだからメールじゃないよね、そこはLINEだよね。(3年前はともかく現代の若者はキャリアメールなんか使わないらしいですよ?)
まあとにかく日付が一番アレ?っと思ったとこかなあ。記憶が薄れるにしてもひと月の間頻繁に入れ替わってたってことだよね。
それともしそうだとしたら彗星前日に三葉が瀧と奥寺先輩のデート場所に行っても無駄だよね。デートは3年後のその日だし。この辺もなんとなくごまかした気がするけど。
あといくらなんでも瀧は彗星のこと忘れすぎ。友達も奥寺先輩も彗星隕石被害のこと覚えてたぞ?
まあ「アルマゲドン」(映画の)じゃあるまいし彗星が割れるかどうかも予想ができないにしても、少なくとも軌道下に日本があるならのんびり見物とかしてちゃダメだよね。あれ他のとこにも落ちてない?全部燃え尽きたの?
というか巨大彗星ってそんな近日点にいきなり現れるものじゃないし(近日点って意味わかってるかしら?)賀来の一部が落下するような軌道ならたぶん何年も見えてたはずだけど。
んであの場所に彗星のかけらが落ちたら高校も無事じゃ済まないと思うなあ。どうなんだろ。いやそれよりも宮水神社のご神体のある場所はどう見ても隕石跡地だったんで、ほぼ同じ場所に二度隕石が落ちる可能性の方が気になったなw(つーか宮水神社直撃って)
 
まあそういうのは超気にはなるけど、そういうとこも勢いで流せるのでアリかなと。
これがポスト3.11だとして心が痛かったのは、瀧を含む都会に住む人たちからしたら彗星が分裂した流星雨という素晴らしい天体ショーを見られることは滅多にない幸せだと言っちゃうこととか、それが直撃して1つの街と500人の命が奪われたことも3年たったら忘れられている事実よね。
そこに確かに町があって生活している人々や歴史があったのにそれが一瞬で奪われてしまったという悲しい災害も、遠い都会の人たちには何の関係もない山奥の場所の不幸な出来事だということ。
瀧にしたってたまたまそこにいた人たちを個人的に知って、初めてそれがとんでもない悲劇だと気づく…というのもありがちな話だけに切ない。
むしろ本来なら知る由もなかった、地元の3年後の惨状を瀧の目で見てしまった三葉の気持ち考えるとそれもツラいな。
瀧と三葉が出会ったお陰と黄昏時パワーで、町が彗星で崩壊したことは変わらなくてもそこにいた人たちは助かった。それによって歴史が変わり、せっかく出会えた二人はほんとうなら全く接点がなかった元の関係に戻り、忘れちゃいけないはずの相手の名前も忘れてしまった。
その喪失感を抱えたまま就活をする瀧と、故郷をなくして東京に出てきた三葉はそのまんま今どきの若者の空虚さとリンクするんだろうし、それはいつか会えるかもしれない誰だかわからない相手を探し続ける恋愛の話でもあるので、これで出会えた奇跡とそういう一途さがとても眩しいなあ…と思ったのであるよw
全体に男女の入れ替わりから時空を超えたコミュニケーションとくるから、最後の名前も知らない同士の奇跡の出会いもありかも…と思えるのかなあ。誰だかわからない相手だから「君の名前は…!」なんだよな。
名前が分からなくても出会うことは出来る、なんか青春って眩しいね(笑)