そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

スーパープレミアム「獄門島」

http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=07466
脚本:喜安浩平 演出:吉田照幸 原作:横溝正史
 

終戦直後、瀬戸内の孤島を訪れた金田一耕助長谷川博己)。僧の了然(奥田瑛二)の案内で島の実力者・本鬼頭家にやってきた金田一は、そこで美しい女性・早苗(仲里依紗)と出会う。さらには島に似つかわしくない奇抜な風体の3姉妹にも。そしてある晩、末妹の姿が消える…。金田一耕助再起動!数々のミステリー・ランキングで1位に輝く横溝正史の最高傑作!封建的な島で繰り広げられる怪奇な連続殺人の謎に金田一が挑む!

 
このブログでは何度も言ってるけど、オレミステリーとか推理小説って好きじゃないから原作読んでないし、映像化されたものもそんなにちゃんと見てないので金田一耕助石坂浩二とか古谷一行のイメージが主なんですが、それでも何となく長谷川博己金田一は想像するだけでワクワク (*´д`)=3と思いましたw
映画やドラマ、ちゃんと見てないとはいっても何となくは見てるよ。でも話は殆ど知らないデス。
なぜだろうと思ったんだけど、どうも何度見てもストーリーが頭に残ってないからっぽい。つまり今回のドラマも見ててどういうストーリーだかまったくわからないんだ。そもそもミステリーにおいて犯人が誰なのかっていう謎解きにあんまり興味ないし。
それもなぜかというと、推理小説自体が推理のために人を殺さないといけない、それがあまりにも簡単すぎて「そもそもそんなことで人を殺すなよ?」と思った時点で犯人に興味をなくすからです。
でもなんだかんだで映像作品のミステリーやサスペンスは結構見てるのは、今のこの世の中の映画やドラマはミステリー展開からは逃れられないってことか(というかそこに至る人間関係には興味アリアリ)
前ふりはそのくらいにして、でも今回の獄門島、話はまったくよくわからなかったんだけど面白かった。役者と演出がすごく斬新だった。
というか冷静に分析するけど、この話がわからないのはそもそも犯人がなぜ殺人を犯すのかってことにまったく理由が見えないからなんだけど、この話は金田一耕助のキャラと相まってそこが一番重要なポイントだった…ってのがわかったとこで、ああなるほど!と思った次第。
なんとなくTwitterの獄門島タグを追いかけたり、ハセヒロのインタビューを見たら、今回の長谷川博己金田一耕助は今までの金田一耕助とは違ってて、でも設定はより原作っぽいキャラらしいね。
復員兵でいろいろトラウマがあって、戦争で無意味に人が殺されていくさまを見てきた金田一にとって「どうして人は人を殺すのか知りたい」が彼が探偵をやる動機なのはとてもわかる。だからこの事件の真実に至った時にあんな狂気に走るというそのキャラが面白かった。
見てる間、何となくこの金田一って「UN-GO」の敗戦探偵・結城新十郎だ、と思ったんだけどさ。本編というより「episode:0 因果論」の方の結城新十郎の印象なのでそっちを観るか読むかしてないとわかりにくいかと思うけど。違うかなあ?

ともかく、途中までなぜこんな状況になってるのか、なぜ殺人事件が起こるのか、犯人は何を考えているのかという謎解き自体がよくわからなくて(=ストーリーがわからない)何なんだろうと思ってたんだけど、結局明らかになったことは人を殺す理由のない人たちが覚悟の上でやった人殺しが結果としてまったく無駄だったという結末。
さっきも言ったように、オレはミステリーってトリックや推理を成り立たせるためにあまりに簡単に人を殺すのが好きじゃないんだけど、こういうのはとても良い。なんという無駄感(笑)
話が分からなくて当然だよな、だってよりによって死んだ人間の意思だった、つまり「頼まれたから殺した」だし、その殺人条件が揃うなんてどんなご都合だよ(でも揃わなくはない)という条件がたまたま揃ってしまったから、殺さなくてもすんだ人を殺すなんて。もちろん法治国家なのでどんな閉鎖的な島だろうが罪は罪だよな。
しかもそんな和尚の必死の告白を一蹴する、金田一のエキセントリックでキチガイじみた高笑いだけでもハセヒログッジョブw 演出もぶっ飛んでてよかったw
いやほんと、最後の寺での和尚の奥田瑛二金田一のハセヒロのガチのやり取りは、もうそこまでがよくわからなくてもこれだけでOK。スッキリ。
映像もとても抑制されてて美しかった。映画並みの画面クオリティで陰影のバランスもよく、殺された死体のシーンに入るテロップが市川崑版のあの書体(つまり庵野監督が使うあの書体)なのがインパクトあるし。
最後の寺で金田一と和尚が話すとこもずっと横位置の対象構図で陰影のバランスと奥の緑と敷物の赤の対比が美しい。
金田一と早苗のシーンはやたら引きの長回し。そしてずっとかかってる音楽はノイズなロック。何もかもとても斬新。何となくでしか横溝作品を見て事ないオレが見てても斬新だった。
あと和尚が「探偵だからきっと謎を解いて(殺人を)止めてくれると思っていた」ということを期待して枕屏風を置いていたのに気が付かないどころかなんだかんだ島民たちの言動に振り回され、すべてが終わってからその謎を解くという、謎は解きたいけど事件を止める気なしな節穴っぷりが本気なのかどうなのかわからないところも狂気をはらんでていいよ。だって謎を解く過程もすごく過剰なんだもん。
たぶん今まで見たことない金田一耕助だったのはそうなんだろう。
復員兵設定強めで自分の居場所探しをするアウトローな側面と、人はなぜ人を殺すのか知りたいという戦争体験からくるトラウマを克服するために探偵を続ける金田一耕助という男の闇を感じてよかった。
探偵は謎を解かないと存在価値はないけれど、謎を解くためには事件が起こらなければいけないというアンビバレンツ。その狭間の狂気っぷり、最初と最後で人が違うくらいのエキセントリックさが素晴らしいよハセヒロw
もう2,3本くらい長谷川博己金田一で見たいですね。次は悪魔が来たりて笛を吹くのか?
そういや昭和21年という終戦直後でありながらさすがに昭和感はあまり感じなかったなあ。島だからかな?(そういや島設定ってセットにお金かからなくていいのかも)