そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

ダンケルク(IMAX・字幕)

http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/
監督・脚本:クリストファー・ノーラン

 

ダークナイト」「インターステラー」のクリストファー・ノーラン監督が、初めて実話をもとに描く戦争映画。史上最大の救出作戦と言われる「ダイナモ作戦」が展開された、第2次世界大戦のダンケルクの戦いを描く。
ポーランドを侵攻し、そこから北フランスまで勢力を広げたドイツ軍は、戦車や航空機といった新兵器を用いた電撃的な戦いで英仏連合軍をフランス北部のダンケルクへと追い詰めていく。この事態に危機感を抱いたイギリス首相のチャーチルは、ダンケルクに取り残された兵士40万人の救出を命じ、1940年5月26日、軍艦はもとより、民間の船舶も総動員したダイナモ作戦が発動。戦局は奇跡的な展開を迎えることとなる。
出演は、今作が映画デビュー作となる新人のフィオン・ホワイトヘッドのほか、ノーラン作品常連のトム・ハーディキリアン・マーフィ、「ブリッジ・オブ・スパイ」でアカデミー助演男優賞を受賞したマーク・ライランスケネス・ブラナー、「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズらが顔をそろえている。(「映画.com」より)

 
ノーラン監督のオリジナルっぷりにはビックリするよ。
この話を普通に撮ったらたぶん「奇跡の救出劇」な感動超大作だよねw
そういえばオレ、「メメント」も公開時に観に行けなくてなかなか見る機会がないんだけど、スタチャンでノーラン特集やってて録画したんであとで見てみます。
なんでそういうことをいうかというと、ただの撤退戦の話に時間的トリックを入れてくるところがわけがわからないんだよ、ノーラン監督。最初にちゃんと提示されるにしても途中まで何のことだろうと思うすごい構成。さすが「メメント」の人だなあw
公式の作品紹介に書いてあるからネタバレではないけど一応ネタバレ扱いにしときます。でもこれうっかりすると意味がわからない人がいるかも?
あと本編自体まったく何の説明もないまま、ただその状況だけを描いていくので「ダンケルクの戦い」の予備知識くらいはあったほうがいいかも。少なくとも公式の林先生の「3分で分るダンケルク」は見といたほうがいいような。
とにかく潔いくらい何の説明もないまま陸海空で全然別の時間軸で話が進む、若干ややこしい話。当然IMAX。今回はとしまえんのユナイテッドシネマで。
全編ハンスジマーの緊張感溢れるBGMと時計の秒針みたいな音が圧迫感。今までにない戦争映画というかこんなの粘着質なノーランにしか撮れんよな。撤退戦だからということだけじゃなく「ブラックホーク・ダウン」とか「プライベートライアン」(見てないけど)とはまったく違う戦争映画。とにかく戦争怖い。敵が見えてないから余計に怖い。船に乗ったら船室の扉は締めちゃいかんよ魚雷で穴が空いたらお陀仏だよ。(そうなると思った)そして観光船の船長カッコイイっす!
そういや敵が見えなくて余計に怖いってやつ、「世界侵略: ロサンゼルス決戦」とか「スカイライン〜侵略」とか、宇宙人SFだけどあんな感じの緊張感。
あとIMAXでたまたま前のほうの席で、普段は字幕見えないから真ん中より後のほう取るんだけど、セリフ少ないから字幕も少ないし、これは前寄りでちょうどいいかも。大迫力でしたw
 
 
感想としてはいろいろあるけど、オレはあのダンケルクに追い詰められてるイギリス兵たちは、この八方塞がりな社会状況の中のオレたちのことではないかと思った。まったく先が見えないからこその緊張感。ノーラン監督が意図したかどうかは別にしても、今ってこういう時代に生きてるんだなあと強く感じたよ。自分がダンケルクの浜辺にいて何かからの救出を待ってるかのように思える映画だった。(意識高い系引き寄せ感想w)
つまり浜辺で爆弾に吹っ飛ばされるか、船に乗って助かったと思いながらも魚雷で沈められるか。後ろからは刻々とドイツ兵が迫ってくるし、どうやればこの危機的状況から助かることが出来るのか、生き残るためには何が正解なのかまったくわからないけど、何かしないと確実に死ぬかもという。
奇跡の救出劇を成し遂げられたのは軍はもとより民間の人たちの「同胞を助けたい」という善意なんだけど、その影では同盟国であるフランス兵は後回し、あとwikiで知ったけどダンケルクの救出劇の裏にはカレーでドイツ兵を引きつけてた囮に等しいイギリスの部隊もあったようで、奇跡は犠牲なしには成し遂げられないけど救出劇の先にはさらなる地獄が待っているとか、これって閉塞感しかない今のこの世の中そのものだよと。

というか状況としてはイギリス空軍何してんだよって感じなんだけど、それもあれっと思うのは後でいう時間的トリックのせいなんだけどさ。
でも空から状況が見られる戦闘機もすべてを助けられるわけもなく、いつ撃墜されるのかわからないまま犠牲的精神で戦場に戻っていくとか、この戦場で生き残るってどういうことなのかと…
戦争をやってるはずの兵士たちも撤退戦では民間人と同じくらいにただの無力な被害者だよ。
ただ一つだけ、この撤退戦にタイムリミットがあると言うけどその辺がよくわからなかったんだよね。オレだけ?でもそれがわかってないと最後のカタルシスないよねえ。
これなにがタイムサスペンスかって、最初に出るテロップ。
1,トミー(フィオン・ホワイトヘッド)たち一般兵士が出港しようとする浜辺の桟橋の出来事が「1週間」。
2,英国側から観光船でダンケルクの兵士たちを助けに行こうとする船長のドーソン(マーク・ライランス)と息子たちが「1日」。
3,空軍の戦闘機パイロット、フィリア(トム・ハーディ)が見る戦場が「1時間」。
これが映画の尺である106分の中で、同じタイミングで流れるというパラレルタイムなんだよ。同じ一日の出来事じゃないの。1週間も1日も1時間も等しく106分で流れるの。
途中昼と夜のズレの描写で気がつくのと、一番わかり易いのはキリアン・マーフィーなんだけど、途中であれっ?てなるんだよね。船長に助けられたあとでトミーたちと会うから。
それで内心「え、どういうことなの?」って思ってるうちに3つの時間軸が同じタイミングに収束していって、フィリアの視点でああ〜って思うの。最後になって完全に最初の時間表示の意味が分かるとか、すごいよね。よくこんな構成思いつくよなあ。
それにしてもノーラン監督のことだからたぶん本物を使ってるだろうけど(全部本物らしい)、戦闘機や船がリアルすぎてそう見えないところがちらほら。いいのか悪いのかw
ただIMAXカメラで撮った映像はものすごい。臨場感半端ない。戦闘機のコクピットは意外と狭いし周りがわからないとかリアリティありすぎる。
とにかく何の説明もないから余計にいろいろ考えるし、最後にこの構成に気がつくと単なる戦争映画じゃない(というかこれは”戦争映画”ではないよな)ノーラン世界にあっと思う106分でした。尺が長すぎないのもちょうどいいよ。