そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

海獣の子供

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監督:渡辺歩 総作画監督・演出・キャラクターデザイン:小西賢一 原作:五十嵐大介

 

「リトル・フォレスト」「魔女」などで知られる漫画家・五十嵐大介が、大海原を舞台に生命の秘密を描き、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞や日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した名作コミック「海獣の子供」を、アニメ映画化。
自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、長い夏休みの間、家にも学校にも居場所がなく、父親の働いている水族館へと足を運ぶ。そこで彼女は、ジュゴンに育てられたという不思議な少年・海と、その兄である空と出会う。やがて3人が出会ったことをきっかけに、地球上でさまざまな現象が起こりはじめる。
鉄コン筋クリート」のSTUDIO4℃がアニメーション制作、映画「ドラえもん」や「宇宙兄弟」などを手がけてきた渡辺歩が監督を務め、音楽を久石譲が担当。声の出演は芦田愛菜ピクサーアニメ「リメンバー・ミー」の吹き替えを務めた石橋陽彩ら。(「映画.com」より)

 
ストーリー自体はさっぱりなんだけど(原作は試し読みの1巻しか読んでない)(一応全部買うつもり)アニメーションとしてはめちゃくちゃ好みで超ツボだった。こんな美しいアニメーションが見られるなんて…プロメアとは違う方向でカロリー高めの神作画だよ。
実は原作はずっと前から常に書店で平積みになってるし気にはなってたんだけどあんまり好きな絵柄でもないしなあと思ってて、試し読みした時もそんなに引っかからなかったんだけどアニメとして動いてるのはメッチャ好き。
あの繊細なアナログタッチの描線とか細かな、それこそ指先の演技1つとってもやたらリアルな動きの作画。最初は「惡の華」みたいなロトスコープアニメかと思ったくらい。作画が神か。マジであれCGなの?手描きなの?どうやって動かしてるの???
ザクザクとした描線のわりにキャラクターの線はしっかりしてて安定感があるし、アングラードとかデデとかリアルでもなく漫画的でもない気持ち悪い感じもあるし(あの髪の毛の描き方もある意味アニメと思えなくてすげえ)なのに魅力的で目が離せない。
作画の小西さんは高畑監督のかぐや姫とかやってたらしいけど、すごく納得。
しかもキャラ作画だけじゃなくとにかく映像そのものの圧がすごくて、話の展開もあるけどそれ以前に映像としてなんか凄いものを観てしまったよ感。
たまにキャラ目線の構図になるのも、絵としては一瞬あれっと思うくらいにわからないんだけどむしろそこがリアルでいい。
あと原作より琉花が子供っぽいような、手足とかすごく細いキャラデザインなのは良い。とても良い。
 
しかし話はよくわからなかった。
ヒロインの琉花のボーイミーツガールなひと夏の冒険的ではあるけど、実際なんの話なのかスケールが大きすぎて。スケール感としてどういう話なのかはわかるんだけど、なぜ流花が選ばれたのか、ジュゴンに育てられた海と空の2人は何だったのか、海と空を研究したいジムや軍の人たちの存在はわかるんだけど、この映画の脚本で一番重要なのは琉花のはずなのになぜ空が一番重要で琉花をスルーなのかがさっぱりわからないじゃん。特に軍事利用?(それすらよくわからない)したい人たち、空がいなくなった後なら押さえるべきは琉花じゃないかな?
あと琉花の星産みあたりは意味としてはわかるけど、それもなぜ選ばれたのが琉花なのかがわからないから唐突すぎて、しかもあの未成熟さを記号化した感じのキャラデザインなのでちょっと性的な意味でギリギリじゃないかなあとか思ったり。大丈夫だったの、あれ?
映像的には素晴らしいスペクタクルな画面のシーンなのでそこが引っかかって素直に楽しめなかった部分もあるけど…
パンフ読むとパンスペルミア説の物語だということだけど、宇宙が小笠原沖から生まれてるってことなの???あの銀河、ミニすぎるけど、ドラえもんのミニ銀河を作ろうみたいなひみつ道具思い出したw
宇宙はよく海と対比されるし、そういう意味で人間とも…という物語としてはとても魅力的なんだけど、いまいちその辺が伝わらなかったのは残念。
軽くレビューを読むと話自体を相当端折ってる上に、琉花メインにしたせいでちょっとぼやけたとかなんとか…と言われるとまあ仕方ないのかって気にはなるけど。
 
端折ったのは仕方ないけど、ストーリーが全く頭に入らない、わからないなりに奥行きとして感じられないのは声優陣のあまりの棒演技のせいもあるのかもとまで思ってしまうよ。最後まで違和感ありまくりで、なんでその人選にしたのか問いただしたい気持ち。
てかさ、メインキャストのほぼ全員が俳優でしかも棒演技の人ばっかってどういうこと。普通に考えてせめてもう少し声優さん使って欲しい。しかも声を当てるのが上手い俳優さんならともかくみんな棒じゃん。はっきりいうよ、下手くそすぎて最後まで違和感ありまくり。
いやオレ森崎ウィンとかレディプレイヤー1どころか「学校では教えてくれないこと」から見てたから結構上手いと思ってたのになんだあの棒演技。
しかもこうやって俳優さんたちを起用することで特に宣伝にもなってないし、だったら上手いから使ったってならわかるのにそうじゃない。
何が言いたいかと言うと、声の演技が上手い人なら伝わるはずの描かれてない部分が全く伝わってこないのよねー。こういう企画はどうかと思うよ。残念極まりない。
滅多にこういうこと言わないけど、ソフト出すときにキャスト差し替えて欲しいくらい。いい悪いじゃなく、単純にみんな下手くそだとしか。いや俳優を使ってももうちょっとなんつーか、“伝わる”人っていたと思うの。これだけ情報量多い画面だとそれこそ声優の過剰演技な声じゃない方がと思うのもわかるんだけど、全員そうだと困るというか。大人キャスト、蒼井優が全く蒼井優に思えないのもともかく、なぜお父さんを稲垣吾郎にしたのか。
琉花の芦田愛菜ちゃんも上手いかどうかよりもなんとなく合ってないとしか。
これがもっと上手い人ならストーリー端折りすぎててもなんとかなったろうにと…
 
とにかくそこを差し引いても映像としては神懸かってたんで作品の価値は高いんだけど、ああ本当に声が…声がつらい…
あと気になってた「トゥレップ 「海獣の子供」を探して」も観に行こうと思ってる。レビューを見たら原作にはいろんな人の証言の部分(たぶんこの映画で端折ったとこ?)があるらしいんだけど、それなのかな?