そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

竜とそばかすの姫

http://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/

監督・脚本・原作:細田守

 


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サマーウォーズ」「未来のミライ」の細田守監督が、超巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に少女の成長を描いたオリジナル長編アニメーション。

高知県の自然豊かな田舎町。17歳の女子高生すずは幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。ある日、友人に誘われ全世界で50億人以上が集う仮想世界「U(ユー)」に参加することになったすずは、「ベル」というアバターで「U」の世界に足を踏み入れる。仮想世界では自然と歌うことができ、自作の歌を披露するうちにベルは世界中から注目される存在となっていく。そんな彼女の前に、 「U」の世界で恐れられている竜の姿をした謎の存在が現れる。

主人公すず/ベル役はシンガーソングライターとして活動する中村佳穂が務め、劇中歌の歌唱や一部作詞等も務めた。謎の存在「竜」の声は佐藤健が務めた。ベルのデザインを「アナと雪の女王」のジン・キムが担当するなど、海外のクリエイターも参加している。https://eiga.com/movie/94337/

 

竜とそばかすの姫、あまりにも💩💩💩だった。この夏はゴジラvsコングが1番の💩脚本かと思ってたのにかるく上回った!

オレはもともとよほど作家性の高い監督でない限りは監督が脚本も兼任するのはよくないと思ってんだけど、細田守作品は奥寺佐渡子さんが抜けたバケモノの子以降本当に全然ダメダメ。

バーチャル世界のビジュアルやキャラクターデザインは最高にカッコイイのに、ストーリーもテーマもやりたいことも何もかもイミフ。何が何やらわからないし深読みする気も起きないぐらい💩💩💩だった。何これ?オレ💩いいすぎ?

 

竜が誰なのかという正体探しミステリーと母親を亡くしたヒロインの鈴の成長と自分探し的な話だと思ったらそういうわけでもないし、しかも竜の正体がわかっても結局「あんた誰?」なキャラで(もし途中での彼らの出し方が伏線だと思ってんなら監督なんか辞めちまえ)観客置いてけぼりだし、何がどうなってあの展開になったのかさっぱり分からない。(一応ネタバレになるかもなので詳しいツッコミは後半で)

 

あ、この感想は映画見た直後にTwitterに投下したものがベースになってるけど、一週間放置してアップしようとしたら無駄に膨らんで長くなりました(主に批判で)

更新日は観た日だけどアップしたのは7/26です。

 

 

基本的にオレは「時をかける少女」も「サマーウォーズ」も好きじゃないけどエンタメとしてはよくできてたと思うし、「おおかみこどもの雨と雪」は内容も支持しない上に嫌いだけど言いたいことはわからなくはないくらいには理解してるつもりだよ(たぶん良くも悪くも奥寺脚本のおかげ)

でも「未来のミライ」は大失敗な上に意味不明だし、今回はさらに話をかけてDVされる子供たちと父親っみたいなある意味キャッチーなネタを使ってるのに、それに対してちゃんとしたメッセージも解決もしないのは物語として害悪だと思うわ。監督としてもこの作品で何かメッセージを発してると思うのはおかしいと思う。

それについてはこちらのブログがもっと上手く伝えてくれていると思うので参照されたし。

 

〈U〉の中のビジュアル“だけは“大変に素晴らしく、これを映像として完璧に作り上げてるのは本当にすごいと思う。Jin Kim氏によるベルのディズニープリンセスみたいなキャラクターとEric Wong氏の〈U〉自体の設計デザインは、監督のあのデザインを見つけてきたセンスとしてすごい。ベルのデザインはすごい好き。

でも現実世界の話は、うーん…ヒロインの成長物語なの?母親を亡くした心の傷に向き合えないままのキャラにしてはサバイバーでもないし屈託がないし、なぜ父親と口を聞かないのかもわからない。歌が上手いというキャラでもないのに(作曲はしてるとセリフはあったけどそんなシーンは無いし作曲と歌は別だと思う)なぜ〈U〉では歌姫なのかもわからない。

というか歌が歌えない鈴はなぜにおばさまばかりの合唱団にいるの??説明あった?

そもそも冒頭の川のシーン、どうしてあれだけ大人がいるのに鈴のお母さんがわざわざ助けに行くのかもわからない。むしろ周りの奴らは止めろよ。これは後半の展開にも関わりあるけどこれもネタバレなので後で。

てかあれ高知である必要全くないよね。てかみんな土佐弁じゃないし標準語だし。美しい川のある風景が特に必要だったとも思えない。都内近郊の川のあるキャンプ場でいいじゃん

後半の竜の正体のあたりに関わってくるから後でもいうけど、だったら最初から高知県で完結する話にしとけば良かったのに。

現実世界は遠くてもバーチャル世界では知り合えるってことだと思うけど、全く接点のない知らない相手ということに距離ってそんなに関係ないと思うんだ。隣町だって成り立つよね?

 

あとキャスティング全然良くないよ。せっかく役者さんを当てた良さが全くないし聞いててむしろ誰?みたいな。成田凌に棒読み演技させてんのかってくらい幼馴染のしのぶくん魅力ないよね。お父さんが役所広司だとは思わんかったし。

結局主役の中村佳穂のためだけの映画よね。てかよくよく後で思い返すとほとんどヒロインのセリフだけで話が進んでるもんね。ヒロイン以外は全てモブ。

 

まあストーリーのアラが気にならない人なら、むしろただデカいだけのIMAX画面で何も考えずにボンヤリと美しい映像を見る分にはいいかもしれない。(オレは両端落としてるけどウソIMAXは好きじゃないけど)

てことで以下ネタバレな感想。ちなみに(見てこれアップするまでに一週間経ってるけど)まだパンフは読んでない。

 

 

映像以外は批判とツッコミどころしかないのだけれど、肝心のバーチャル世界〈U〉が、サマーウォーズの〈OZ〉と比べても世界観自体は全く進化してないどころか説明不足すぎてなんじゃこりゃだよ。

OZはまだインフラとして成り立つだけの納得できる理由があったし、あの最後の大騒動に繋がるフィクションならではの大きな嘘として成り立つんだけど、〈U〉はあのバーチャルな世界が何なんだかもよくわからない。

たぶんYoutubeSNS的な個人アカウントと紐付けてネット内でバーチャルワールドとして作り上げた感じなんだろうか?ベルは匿名の個人として歌姫ではあるけど初音ミクみたいなネットのみんなで遊べるツール的な面もあるみたいだし。(と思って見てたんだけど、単にヒロちゃんが着せ替えしたり設定変えたりなんらかのアピールしてただけでみんなで遊べるツールではなかったっぽいね?)

でも現実の自分をバーチャル世界に投影できるって意味ではスピルバーグの「レディプレイヤー1」の方がわかりやすいし理解できるわ。

何でもあり、現実世界では眠ってる才能が〈U〉では具現化できるっていうわりに、モブキャラたちはマスコットみたいなアバターなのにお金持ちのお友だちがプロデュースしたとはいえ、鈴だけが「ベル」というビジュアル最高なカリスマ歌姫になれるって、そこからして納得できない。俺つえええにしてもだったらそんな人もっといるよね。アカウント50億の世界なんだから。というかアカウント50億の招待制?バーチャルワールドにしては世間の誰も彼もがやってる感もなく、あとでみんな実はアカウント持ってたってあったけどそれは最初にこの物語の設定・世界観として説明しとけやとしか。

 

あとあの正義厨の人たちもとてもキモい。てっきり虐待DVパパのアカウントだと思ってたけど違ったし、結局現実世界の個人もわからない、ただのネット警察(でも徒党を組んでる)で、あいつらが〈U〉中でどんな評価なかもさっぱりわからねえのに、管理者しか権限がないはずなのに勝手に個人情報晒すとか。それでいいのか?いい訳ないだろよ。

ヒロイン鈴がなんでお父さんと口きかないのかとか、クラスメートとの関係とか、歌えないのに何でおばさま合唱団にいるのか(しかも可愛がられてる)とか全然わからないし、中途半端な美女と野獣のパク…オマージュ?も本当に意味がわからなかった。おばさまたちがヒロインを応援するとか中途半端に宮崎アニメ(ポニョ)みたいなシチュ出てくるし。

そもそも美女と野獣細田監督にとってとても大事なものだというのに、キャラと設定をパクっただけだよね。「美女と野獣」を虐待児童とそれを助ける美しい少女に準えるにも、それが表す物語にハマらないというか、寓話でもオマージュにもなってないわけで。

「ベル」(=鈴)が「竜」を一方的に気にするのもなぜ?最大限好意的に解釈して、竜がベルを気にするのはあの歌が気に入ったから、何かベルに感じるところがあったから…でもいいんだけど、それに対する描写ないから。監督の脳内だけにあるのかな?その展開。

鈴とヒロちゃんが竜の正体を探すのもすごくうやむやな流れだけど、きっかけがいまいちわからない。マントの模様を痣=虐待痕だというのもわかりづらいし、アカウント50億から探すストーリー展開のタイミングもゆるゆるでうやむや。

 

いやそんな些細なとこ突っ込む以前に、とにかく鈴が〈U〉の中ではベルだというカミングアウトがはっきり行われたわけでもないのになぜかみんな知ってて、鈴が竜=恵を信用させるために〈U〉の中で正体を晒すことを現実世界のみんなが応援してるとか、一見感動展開のクライマックスだけど、よく考えなくても意味がわからない。サマウォクライマックスの出来の悪い焼き直しじゃん。私と繋がって、お願いしまーすって、いや唐突すぎるだろ。できませんよ。

そもそもなぜ恵=竜は〈U〉の中で暴れているのか(強いってことは潜在能力の強さってことにしとく)

の説明もなし。

上でも言ったけど、鈴とヒロちゃんが竜の正体探ししてる時に、竜をヒーローだと言ってた知くんと恵のあの証言動画だけを伏線とするのは無理がありすぎる。

結局恵が竜だという意味づけも理由もないよね?どうなってんの?突然湧いて出てきたキャラたち。

つーかあのDVパパ、突然現れて自分の息子たちを庇ってるだけの女子高生に暴行するとかマジ狂ってるレベル。放置したらあかんし鈴ちゃん暴行罪で訴えていいよ。

 

そしてざっくりネット記事見ても皆さん指摘してるけど、恵と知くんの住んでる武蔵小杉まで高知の田舎から女子高生1人向かわせるってどういうこと?合唱部の大人があれだけいるのに駅まで送ってあげたあと鈴ちゃん1人で行かせるかー?なぜしのぶくんでも誰でも一緒についていかないの?オレ高知出身だから知ってるけど、あそこから武蔵小杉までマジ遠いよ?武蔵小杉は仕事でしばらく通ってたからたまたま知ってるけど、バスの校舎場からたどり着くのも大変だし、そんなぶらぶら歩いててたどり着けるような住宅街じゃないし。

あと場所特定として電車の発車メロディーが2種類聞こえるとか言うけど、もし東急東横線と JR のこと言ってるんだとしたら駅名はどちらも同じ武蔵小杉だけと距離はそこそこ離れてるから、まず家の中では聞こえないと思うよ。

つかそういうことじゃなく、虐待されてる子供たちは高知県内でも良かったんじゃないかなってことさ。標準語はこの際目をつぶるし。

というか今思ったけどこれ「君の名は。」で東京の瀧が岐阜の三葉を探しに行く展開と似てるよね?最後の恵たちを助けにいくのは天気の子みたいだし。

そんな風に中途半端にジブリや新海作品のエモーショナルな盛り上がりポイントをパク…取り込んでるように思われるけど、この作品の展開に対してそれが上手く機能していないモヤモヤ。

 

そもそもが高知から女子高生が1人深夜バスに乗り東京駅か横浜で降りて武蔵小杉まで行き、さらにあの高層マンション群の画像だけで家を特定するのもあまりにも無理ゲーすぎる。

最大限譲歩してバスの中で恵と連絡取れれば大体の場所と、家の外に迎えに出るくらいは可能かもしれない。でもそれでもDVする父親がいると分かってるとこに女子高生1人ではやらないよね。

とにかく大人、誰かおばさまたちの1人でもいいし、なんならずっと(親子関係の問題とともに)放置されてるお父さんでも良かったはずだけど、どうして鈴は1人であのDVパパからあの兄弟を守らなきゃいけなかったのか?ずっと口聞いてなかったお父さんが鈴のどうしてもやらなきゃいけないことのために何も聞かずについて来てくれた…とかならオレでもそれなり感動できたのに。

なのに結局何が何だかな迫力で?DVパパを撃退し?雨の中で女子高生が身知らぬ子達を抱きしめて守るだの好きだの闘うだの、監督頭おかしい?

お互い対するメッセージとしてはわかるしファンタジーとしてはまあありだけど、現実の世界、細田監督が表現しようとするようなリアルな現実では子供が子供を守る必要も闘う必要もないよ。

 

もしかしたらこの話はネットの悪意や善意、現実ではできないこともネットの中では叶う(人を助けることもわかりあうことも)というこれからのITバーチャルの展望を描いたものかもしれないけど、現状この映画見てる限りではそうは描かれてないし。現実では鈴以外はみんなモブ=キャラクターの掘り下げがされてない薄っぺらさ。

てか最後の最後にまさかのマトリックスへのお誘い。

えー……自己実現が叶うバーチャルな世界がクソな現実よりも良いってこと?なにそのメッセージ。まさかその後の顛末もなくそこで終わるとは思ってもなかった。

しれっと高知に帰ってきてるけど、戻れるのはさらに翌日ですよ?未成年女子高生が1人で夜行バス乗って戻ったんだ…

そういうことに対してまったくエクスキューズがないの、どうなの?どうなってんの?サマウォみたいに現実とバーチャルもリンクしてないぞ?何やりたかったの?

つーかまじであの顛末は気持ち悪いよ細田監督。

現実世界の彼らに対するフォローはちゃんとしてよね。物語として。