そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

dele#7

http://dele.life
監督:常廣丈太 脚本:徳永富彦 原案:本多孝好
 
このドラマだとやっぱりこういう話が好きだなあ。亡くなった人が残した消してほしいデータを暴くことによって、その人と世間の裏側を見てしまうやつ。
息子が撮った動画が消したいデータで、それによって真実を明らかにして死刑囚の笹本(なんだか既視感の塚本晋也監督、ロボット工学…w)を助ける話ではなく、ただ街の闇を見ることになる話。
もちろん舞さんの要求のように大っぴらにしてはいけないものだけど、誰も知らずに消える真実よりも誰かが知っててくれた方が良いことでも悪いことでも救いになると思ってる。いつかは(dele.LIFEの彼らがいなくなってしまえば)その真実も永遠に失われるわけだけど。
ストーリー展開のアウトラインはよくありがちな話で、元ネタになった事件も現実にあるわけだけど、そこに関わった人の物語というのはいかようにも作れるわけで、それがフィクションの良いところだと思うのだ。
このドラマは一貫して消したいデータがあることによって見えてくる残された現実を描いてるんだけど、それを願った本人はすでにいないことを考えるとそれが誰のためになるのか…などと考えない方がいいのかな。
地方都市のローカルな街の表面的には何事もないように見える人間関係が、実際裏ではドロドロとした何かに満ち満ちていて、そこによそからやってきた探偵コンビ(的な2人)がその裏側を暴くけど結局何も言わずに立ち去るという、ちょっと昔の洋ドラとか映画にありそうな後味悪いサスペンスミステリー。
息子は父親の冤罪を晴らせるかもしれないデータを削除するという意思を残したけど、そのデータにはそれ以上の情報が残ってたわけで、必ずしも父親の冤罪が晴れることもなかったと思うし。
そう考えると犯人が1人に決まったことで街の平和と安全が保たれたと信じられるというのは、思考停止だけどある意味正しいのかも。
しかも結局最後まで見てもこの依頼をした笹本の息子の隆は名前だけしか登場せず、彼のつらい人生を思うとなんとも言えない気分に…少なくとも彼のことを気にかけてくれる養護院の女の子がいてくれてよかったとは思う。彼女に本当のことを言えない祐太郎の優しさよ…

街のみんなが忘れたいと思ってるこの事件に合わせるように犯人とされた笹本清一が死刑になって、それで良かった安心だと思えるメンタリティも恐ろしいと思うのだ。
冤罪の可能性ありとはいえ過去に従業員を毒殺しようとした笹本(そりゃ当然噂になるよなあ)、一見人当たりはいいのに突然限界値マックスにキレる和田(こういう人って自分がどの程度怒ってるのか客観的に見られない病気だと思うの)、娘を亡くしたのに不倫する妻(なんで彼とそうなった?)、薬を買う市議会議員の娘(薬をやってることよりそれを隠すために色仕掛けをする短絡的な頭の悪さが致命的)などなど、見ないふりをするのも難しい裏の顔を見ないようにして、見なかったことはなかったことと同じにしてしまうのは思考停止すぎて、そういうのを良しとする人間関係自体が胡散臭いんだよ。
人を殺すには何かしらの強い気持ちと理由がありそれが表に出てきたときに殺人という形を取ると思うんだけど、裏を暴かなければみんなただの気のいい街の住人で、悲しいことは忘れて生きて行くしかないともいえないような、ドロドロしたものを無理やりなかったことにするのは偽善っていうんだよな。
そういうのを責任取れないから見ないという圭司はたぶん正しいし、そこまで割り切れない祐太郎の気持ち悪さもわかる。
でもそういうのがこの世間というものだと言ってしまうのはちょっと嫌かも。(なのにそれを良しとする人間もなぜか少なからずいるんだよな…)
個人的には、実は誰かを庇ってるんじゃないのかというよくある予断をまったく受け付けない、たぶん相当クソな親父である笹本清一は死刑で良かったと思うし、不倫や薬くらいならともかく年寄りに怒鳴って虐待するわだが犯人でもいいんじゃねとは思った。あいつムカつくよ。何がムカつくって、たぶん自分のことをごく普通の善良な一市民だと思ってるってとこがだよ。善良な市民は客の前で他人を怒鳴ったりしないんだよ。というかあのブチ切れ方が嫌。
今回も脇のキャストが絶妙に上手くて、内容が濃かった。
結局毒物を入れたのは誰だったのか、「他所から来た人」ってのは誰のことを言っていたのか分からずじまいであるけど、大人はみんな臭いものに蓋な、まさに肥溜めのような地方都市あるある(フィクション的に)だった。面白かった。
たぶんこれもっとローカルな狭い町ならもう少し異様さが出るだろうけど、そこはまあロケの都合もあるだろうしこんなもんかなと。古い新興住宅街とか大規模団地の成れの果てだとやりすぎかな?この街並みの見え方とか鄙びた感じはとても良いです。
ところどころ今回やたら謎な映像表現のための思わせぶりな演出表現があったけど(祐太郎の腕の隙間から見る人物とかカーブミラーに映った誰か×2とか)まあいいかw(表現のための演出はそんなに好きじゃないんで)

ただひとつ突っ込みたいのは2010年当時のスマホの動画で、おそらくiPhon4だと思うんだけど調べたら案外画質は使えるレベルだったんでありかな。あれを撮った当時は笹本隆ももしかしたら父親が冤罪で街の誰かが犯人だろうと思って撮ってたんだとは思うけど。(そういう映画なかったっけ)
やっぱり彼の心情を考えるとちょっと気の毒な気はする。