そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

崖の上のポニョ

http://www.ghibli.jp/ponyo/

見たのは水曜日ですが、日付変わっちゃった。新しくオープンした真っ白な松竹ピカデリーで見ました。オシャレだったー。
 
何が「生まれてきてよかった」のかは判りませんが、人魚姫?と思ったらやっぱり人魚姫だったじゃん。
世間での評判は今のところ知らないけど、オレは正直あまり面白くなかった。というか、駿監督はもう映画作らなくてもいいよ。カリ城〜トトロまであれば生きていけるよ、オレ。
はっきり言って何が言いたいのか判らない、見てて不安になる映画は作らなくていいよ。
映画としては、「千と千尋」と「ハウル」を足して「紅の豚」風に仕上げた感じ?トトロまでのストレートな判りやすさとかメッセージ性もなく、ハウルみたいに何が言いたいのかよく判らない中途半端な変な映画でした。
作画は物凄くよかった。
といっても紅豚が少しスゴクなって、アニメーションとしての見どころを足した感じなんかな。動かすことがメインだから動いてるのは当たり前ってことだけど。
というかさ、手描きに戻ったとは言うけど、オレもことあるごとに言ってるけど、「もののけ」以降のいわゆる「宮崎アニメ」でなく「ジブリ映画」は作画的にも映画的にも好きじゃないんですよ。どんなに動いてようがCGが凄かろうが、死んだ線で表情のないキャラが動くのは全く評価出来ないってことです。あれを好きだって言う人とは話合わんって言えるくらい。(萌え基準ではその限りにあらずだけど)まあ描いてるテーマも大きすぎて好きじゃないんだけどさ。
そんな感じで、作画が昔に戻ったことは大変に喜ばしいことなんだけど、テーマや内容的には相変わらず大作ジブリ映画を引きずってて、宗介とポニョの単なる恋物語でいいはずなのに、なんか言いたいことがあるようでそれが何なのかさっぱり判らないってことではハウルと同じというか。ほんとに駿監督はどうしちゃったんでしょ?少なくともオレは判らんよ。
デボン紀うんぬんも結局何だったんだ?人類排除の地球再生計画だよな。エコではないな。
作画は言ってもキリがないくらい凄かったんでとりあえず割愛。大津波のシーンとかトリハダ物ですね。本当に本当に凄かったし、この絵柄に戻ってくれてよかった。
あと背景が一見クレヨン描きみたいなタッチなんだけど、宗介たちの家がフリーハンドでぐにゃぐにゃした線で、歪んでるのに、建物としてはちゃんと建っててスゲーなーと思った(笑)背景描きのプロはスゲーw
色味も全体にキレイで、ポニョの赤の感じと小物の緑の色味が柔らかくてアクセントとして効いてて目に優しかった。もう最近のアニメのチカチカした配色ってダメなんだ。これくらいハッキリしてて尚且つ柔らかい色味は落ち着くよな。本当に画面はキレイだった。
 
話というか内容に対してオレが思ったこと。
とにかくポニョが怖くってなー。ものすごく怖かったよ。キャラデザインとしてはまあ見てるとそこそこカワイイんだけど(でも妹たちの方がもっとかわいくて好き)やってることがオソロシイです。
宗介のことが好きになったのはともかくとして、宗介に会いに行くために大津波を起こして町を海に沈めちゃうんだよ?我儘にしても度が過ぎる。
もうあの大波に乗ってはしゃいで走ってくるとことか、作画もスゴイがそのシーン自体もスゴすぎてコワすぎ。
まさにあれだよ、都市伝説の超高速で走るおばあさん。ああいう怖さを感じましたよ?そのやってること自体も、八百屋お七みたいに周りがどんな酷い目に遭っても自分が好きな相手に会えればいいって話でしょ。子供の無邪気さというか、魔法の力を持ってるんだから神の無邪気さみたいな感じだよな。駿監督がその辺意図してるのかどうか判らんけど、そういう描写だよねえ、あれ。不条理な自然の脅威か?
で、そのあとだよ。
津波のあと、あんな大しけがあったとは思えないようなからっと明るい良い天気で、でも町が完全に水没しちゃって、宗介がポニョとお母さんのリサをボートで探しに行くんだけど、ここがまた宮崎アニメに必ずある死後の世界のメタファーであるところの水没した町でしょ。カリ城の湖に沈んだ町、水じゃないけどナウシカ腐海の底、ラピュタの中の沈んだ都市と、千ちの電車のシーン、あれ全部死後の世界のメタファーだから。だから宮崎アニメって死と再生の物語なんだけどさ。(そこ以降ヒロインが強くなるし)ああ、コナンなんかそもそも全てが水没してるかw パンコパもそうだっけ?(うろ覚え)
宗介は子供だから何も考えずにリサのところに行こうと玩具のボートを出すんだけど、そこで出会うあの不思議なボートの親子と山の上のホテルを目指すにぎやかな一団が本当に死後の世界の何かみたいでさー。特にあの赤ちゃんと夫婦ってどういう意味なんだろ。お父さん影薄いし。何となく判るような気もするけど、死後の世界だと思うといろいろ複雑。なんか死者の魂を乗せた舟みたいなんだよなー。そう思えてドキドキしたよ。やっぱりずっとスゲー怖いし。
 
そもそも話の始めからして「ポニョ」って何なのと思うんですよ。カワイイかどうかはともかく、どう見たって金魚じゃないよな。しかも喋ってハムを食べる肉食獣(@はぐ)みんながポニョをカワイイと言う中でひとりだけ正解を言う人がひまわりの家のトキさん。うん、あれ「人面魚」だよね。どう見ても。
最後もホームのみんなが水中のひまわりの家(常世の国、だよなー‥‥)に行ってしまったなかで、この人だけ陸地にいるし。
そういやこの映画って男性が殆ど出てきてないんだよね。お父さんとか全然顔出し程度。そういう意味で、「カワイイ」で物事を測るのは女性と子供だとすれば、女性原理で出来てる映画って気もする。主人公は5歳の子供だし、まさに女子供だけの価値観だよね。
ポニョをカワイイと言ったヨシエさんとカヨさんは宗介にポニョの折り紙を貰うんだけど、トキさんだけ小金井丸の折り紙なんだよね。色は青。なんか女子供は童話的ファンタジーの世界で生きて(イメージカラー赤)、男は現実的に生きる(イメージカラー青)ってことか?
話戻るけど、ポニョがまた眠ってしまって魔法の力が切れたところで道路が見つかり、リサの車も発見した。トンネルを抜ければひまわりの家のみんながいる公園ってとこで、ポニョが異様にトンネルを嫌がるんだよね。
水上のシーンが死後の世界ならトンネルは再び再生へ向かう産道なんだけど(千ちでも同様)、そこでポニョは元の姿に戻ってしまう。これって深読みでも何でもなく、人面魚の半漁人だったポニョが人間になるための通過儀礼だよね、そのまんま。
そこまでの試練とかフジモトの提案とかはっきり言って事態がよく判んないんだけど、ウヤムヤのままリサとグランマンマーレは談合してポニョを人間にしちゃって宗介とくっつけようって話してるし。ここでもお父さんたちの意思は関係なし。(苦笑)
フジモトの言う魔法での世界の綻びとか、トキさんが拒否する常世の国とか、よく判んないんだけど、たぶん主人公の宗介がこの事態をよく判ってないからそれでもいいんだよな。宗介が関心があるのは、半漁人でもお魚でも、ポニョのことが好きだっていえばポニョは人間になれるってことなんだもん。
ということでウヤムヤのうちにハッピーエンド。うーん、これでいいのか?まあいいんだろな。童話だしな。むしろ童話だから至る所に死の影があるってことで。童話ってもともと怖いもんでしょ。
宮崎駿のメッセージも見たんだけど、「愛と責任の物語」って、つまりたった5歳で運命の相手に(しかも人間じゃなかった)出会って、今後一生その愛を裏切らないという保証をしなけりゃいけないっていう責任の話なのか?うわー難儀だね。
女性の力強さとか母性マンセーなとこは昔からあったけど、どうも今回のポニョの場合、母性が強いというより、父性を排除した女系社会って感じで、何となくあまりいい気持ちがしないんだよね。宗介は今はまだ子供だけど、そのうち「男」になるんじゃないのか?その時どこに行き場があるんだろう、この物語の中で‥‥なんてことをつい考えちゃったりするよ。
リサにしたって強いんだけど昔の作品の女性キャラみたいな大らかさがないんだよね。旦那がいなくてもドントコイ的な感じの、みんなを守るからみたいなとこがない。旦那が帰ってこないことに起こって当たり散らすって、それ、ヒステリーって言うんですけど。まさに駿監督の言うところの「神経症と不安に立ち向かう」どころか、押しつぶされようとしてる世の中だよ?いろんな意味で息苦しいよ、この映画。なんか共感出来るのってトキさんくらいかも。
そういえばいつも食べ物が美味しそうな宮崎アニメなのに、インスタントラーメンとサンドイッチってのも、どうもちょっと美味しそうでなかった。
一応くっついた宗介とポニョだけど、宗介の約束や責任はともかく、何となく将来的にポニョが自立して一人で生きてくって感じにしか思えないんだよなあ。家族ってなんだろ?
そういやこの映画の家族ってみんなバラバラ。バラバラでも幸せ‥‥そうに見えない思えないのが、結局スッキリしないんだよな。やっぱりもう駿監督は映画作らなくていいです。ハウルの時から思ってたけど。そう言いたくなるってことにちょっと絶望。年取ったってこと?うーん‥‥余分なもの多すぎ。