そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

妖怪人間ベム#10(終)

http://www.ntv.co.jp/bem/
脚本:西田征史 演出:狩山俊輔
 
前回の展開で、夏目さんが罪を犯さないようにベムが代わりに‥‥っていうのを、それがベムの正義だって書いたけど、よく考えたらそれって単に「誰かを救うために悪に染まる正義」ってことだよね。果たしてそれは正義(善)なのかどうかという話?でも答えは最初から決まってて、それでも悪はいけないって話でしかないんだけど。
 
で、今回。
本能のように「人間になりたい」と思ってたベムたちの行き着いたとこは「自分たちが本当になりたいものは何?」だったよ。
でもそれってこのドラマの無意識のテーマ代行者・小春ちゃんが、植木職人を見て「あの人たちってなりたい自分になれてるって感じ」って言ってたのがこの話の核心なんだとすれば、植木職人が本当にその仕事で満足してるかどうか、彼らが本当になりたい自分になれてるかどうかなんて外側から見てるだけじゃわかんないでしょ?ってことだと思うんだけどな。そこは突っ込みなしなのか?
人間が人間であることに満足してるかどうか、人間がその中に抱えてる「悪」に対してどう対処するのかってことがわからないからこそ、ベムたち妖怪人間は「人間になりたい」と思うんであって、見るからに良い人間に見える夏目さんのことを「理想の人間・なりたい人間」だと思ってたわけだし。
でもその夏目さんの中に憎しみとか復讐で人を殺したいという心があるって知ったあと、夏目さんがそういう悪になるくらいならベムがそれを代わるって言ったのが、それを認めたからなのかそうでないからなのかがよくわからないから、なんとなくテーマ的にもぼやけてんだよね。良い人の夏目さんですら悪に負けそうになることで人間とはそういうものだと知ったにしても、それについてまったく深く考えてないよね。
悪を取り込んでも正しい人間でいようとすることはできるし、そういう葛藤をすることが人間だと思うんだけど、ベムたちは人間じゃないからそこまでは描かなかったというならそういうものかもしれないけど。

それで、この最後の話を見てて思ったのは、ベムたちがいう「救いを求めてる人間を見捨てたら本当の妖怪になってしまう」ってのの「救いを求めてる人間」っていうのは誰のことなんだろうと思ったんだけど、それはつまり「今まさに悪に堕ちようとする人間」なんだよ。このドラマだとよくわかんなかったけど。少なくともオレはわかんなかったよ?普通に危ない目に合ってる人間を助けてるだけだったし。
でもさ、名前のない男は人間が悪の気持ちを解放することを肯定することを「正義」といい、ベムたちはそれを止めようとしていたけど、実は本当に救わなければいけないのは、自分の中の悪に負けて悪に流され堕ちそうになる人間なんだよ。
だから夏目さんが悪に堕ちようとしたときに自分の身を呈して止めたベムは、上で言ったように確かに正義であると思う。
でもこのドラマの場合それがとてもわかりにくいんだよね。何がいけないんだろう?
そもそもベムたちが人間になりたいという前提の、「なぜ人間でなければいけないのか」「なぜ人間でなければ人間らしい楽しみを得ることができないのか?」ってのがよくわからないんだけど、それって人間らしく振舞おうと思ったら感情が高ぶって怪物の姿になってしまうから‥‥ってことなのかなあ?まあ怪物の姿だといろいろ日常生活を送るにしても都合がわるいのは確かだけど、感情さえ高ぶらなきゃあの美しい人間の姿のままでやっていけると思うんだけど‥‥と思ったらイカンのか?(苦笑)
この辺、名前のない男がいう「悪は醜いのか?」という話からすると、ベムたちのもうひとつの醜い怪物の姿にある美しい正義の心、人間たちがベムに対して思う「醜い怪物の姿だから心も悪いに決まってる」という思い込みに対してどういう答えを出さなきゃいけなかったんだろうっていう気がするんだよね。そこはスルーでいいのかな?
同枠だから余計に思うんだけど、「銭ゲバ」で風太郎と緑さん思う悪と正義、醜さと美しさの対比をとことんまで突き詰めたことを考えると、見た目なのか心なのかということすら曖昧にごまかしてるように思えるし。子供向けだからそこまでやらなくていいのかな?
このドラマで、「夏目さんは良い人です、夏目さんのようでありたいから、悪を取り込まないと人間になれないなら人間になることは捨てて、正しい正義の心をもった妖怪のまま生きていくことに決めました」という結論は正しいんだけど、なぜそう思ったのかという過程が大切じゃないのかなあ‥‥とボンヤリ思うよ。わからなくはないんだけど〜なんかもやもやする。
そういやわざとらしく人魚姫の壁絵とか出てたけど、妖怪人間は人魚姫じゃないよね?同じように人間になりたいと思っていても、人間の男と結婚したいという人魚姫とは違うと思うけど‥‥いや、ベムが人間になりたい理由が別にあるならそれはそれでとは思うけどー(^_^;)

まあお話の結末として、結局ベムたちはもうひとつの分身である「悪」の細胞を消滅させてしまったからもう人間になるという願いは叶わなくなったけど、正義か人間かで正義を選んだのはベムたちの行動としてはとても自己犠牲のヒーロー的で美しいと思うけどね。
でもこういう痛みのある結末てもっと突き詰めたものをアニメやマンガや特撮では日常的に見てるから、なんかこのドラマの場合あまりそこまでの過程でピンと来なかったと云うか、結局イマイチだったなあ〜としか。なんかもうちょっと上手いことできたような気はする。毎回ちゃんとテーマ的なものを決めて小春ちゃんがそれを提示する、ベムたちが考えて行動する過程を見せることで「人間とは何か」ということを見つめていくという話ならわかるんだけどなあ‥‥と思わざるを得ません。ちょっと残念。
なんかこのドラマって、とても短絡的に「正義の心を持った怪物が迫害されて可哀想」というところで止まってる気がするんだよな。一般大衆相手ならその程度でも十分な問題提起だというならまあそれはそれで。結局感情的な話だけで思考停止してる気がする。

でもまあ亀梨ベムは大変美しく、杏ベラはとてもカッコよく、福ベロくんはたいそうカワイかったんで、ドラマとしては満足です。日常パートはおおむね満足、というかいろんな初めてを体験しつつオロオロするベムたんは常に可憐でかわいかったよ! (*゚∀゚)=3 ムッハー 亀たん今度こそブレイクするといいなあー。
最後のナレーションは、オレ原作アニメってあんまり覚えてないんだけどたぶん原作通りなんだよね?何処かでベムたちが活躍してると思えばそれもまた楽しいかも。(まさかずっと夏目さんのストーカーしてるわけじゃないよな?w)