そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

宇宙兄弟

http://www.spacebrothers-movie.com/index.html
監督:森義隆 脚本:大森美香

 
原作は読んでないけどアニメの方は見てます。今ムッタがヒビトの遺書読んじゃって、日本に帰ってきたとこー。
原作がまだ終わってないらしいから、こういうラストなのは(原作読んでないけど)別に構わんと思うのね。
ただこの映画は全然面白くない。せっかくの素材がもったいないくらい。
見終わっても言いたいことがよくわからない、単なる宇宙飛行士を題材にした兄弟のなんやかんやとしか言えないようなつまんない映画だった。
ツイッターで感想つぶやいた時、つい「大森美香でなくせめて武藤将吾あたりでお願いしたかった‥‥」って言ったけど、武藤将吾の近作はテルマエ・ロマエだよw そりゃテルマエのほうで良かったーだよな(苦笑)
というかこれって題材的にも大森美香は向いてないと思うんだけどなあ。もっとガッツリ熱い兄弟の話かと思ってたよ。
原作がそうなのかそうじゃないのかはこの際関係ないというか、終わってないんだし、当然そういう話にすべきって意味で。だってJAXAの星加(堤真一)が「夢があるじゃないか、兄弟で宇宙だぞ!」って言ってるんだから、そういう映画にするべきだし、道が違っちゃった兄弟が再び同じ道を目指し、それが叶うという、そういう兄弟の絆を描くべきでしょ。
役者はみんな良かった。好みはともかく、再現率も(アニメしか見てないけど)かなりそっくりそのままだったし、オグリンや岡田まーは上手いし、とても良かったよ!他のキャラは語れるほど原作知らないんで、あれでいいのかどうかはわからないけど。 *1
 
とにかく一番気になったのは、映像が映画としては酷すぎるってことだよ。なんでこんなの通しちゃったんだろう?
森監督は「ひゃくはち」を見そこねてるから普段がどうかはわからないんだけど、それにしてもどうしてこうなったレベル。
公式サイトのプロモーション映像→OPのセンス良さ気なPV風映像とか見れば十分面白そうだし期待したし(あのプロモーション映像の打ち上げはぜひ見て欲しい!)、冒頭の会見シーンはそんなに悪くなかった。しかしそれ以外の映像が余りにも酷い。
二昔前くらいの、いかにもな邦画のいかにも平板なライティングに、センス感じないカメラワーク、なぜかミニチュア撮影っぽい風景とか、絶望的に酷かった。本当に昔の安っすい娯楽映画系統の邦画。間違っても小津とか黒澤の「日本映画」じゃない方。
ロケットの打ち上げ映像はハイビジョンっぽい、ものすごく美麗な映像で、あれだけで十分感動出来るくらいなのに。
打ち上げと月面、あとラストの「地球の出」も相当感動的で素晴らしい映像だったから、余計に他の部分の映像の下手くそさが目について、というかもうそっちに気を取られて話が頭に入らないんだよ。
一番ひどかったのは打ち上げの時の、ムッタがビルの屋上で元宇宙飛行士のバズ・オルドリン(本人)に会うところだけど、あまりにも、あまりにもセットすぎる。いやセット撮影にしても、普通ならもう少し何とかなるだろよ‥‥と‥‥。本当にどうしてこんななの? (;´Д`)
ライティングは酷すぎ(コントかと思った!)、外のはずなのに風も吹いてない、背景は明らかに距離感なさすぎる書割り‥‥どうやったらこんなのが通るんだ?現実感なさすぎて(NASAだけにw←お約束!)気が遠くなりそうだった。ここが一番ひどかった。いや他の日常パートも本当に酷いんだけどね。閉鎖環境試験はモジュールの中だから気にはならなかったけど、外のロケ映像が酷すぎる。
で、打ち上げシーンはCGも使ってるんだろうけど‥‥と思ったらどうも全部VFXのCG映像らしいと‥‥( ゚ A ゚;)えー!!!
NASAで撮影が出来なかったから全部作ったっていうけど、そっちの方はあまりの出来の良さに気が遠くなった‥‥最近宇宙関係の本物映像見てないけど、どう見ても本物にしか見えない。ものすごいハイクオリティだしセンスいい!
よく考えなくても、ロケットを間近で見下ろす位置にカメラなんてあるわけねえ。あんな至近距離からロケットの下部エンジンなんか詳細に見えるわけないよな。カメラワークも画面構成も最高にクールな感じで、本当にもうあのシーンに金払ったと思わなければやってられないよ。
そのうちTVでかかるだろうけど、ロケット発射シーンだけは必見!本当に素晴らしかったし、上手かった。ラストでヒビトが見る地球は感動的なくらい美しくて大変よかった。
だから余計にどうして他がああなんだと‥‥
 
話も酷くて、とにかく中途半端。たぶん原作読んでる人は勝手に脳内補完してるだろうけど、見てないと全然わからないよ?この映画自体が何を言いたかったのかわからないし伝わらない。
終わってない原作をかいつまんで映画にするなら、もっと映像メインで感覚に訴えかけるような映画にして欲しかったなあーと思う。一番問題なのは、脚本にケレン味がまったくないんだよ。説明もないけどさ。
月面でトラブルに巻き込まれたヒビトを、今出来ることがないからと試験を放棄しないムッタを描いて、死ぬ覚悟はありますかと言われてそんなものはないというのなら、もう少し地球で何も出来ないままスタート地点にも立っていないムッタに共感出来るようなハッタリをかまして盛り上げてもいいんじゃないかなあと思う。という過去の映画自体がそこに収束するように描くべきでしょ。
ヒビトだって奇跡の生還っていうならそれなりのハッタリは必要だと思うし、むしろそういう感覚的ななんだか分からない説得力って必要だと思うんだけどなあ。
現実に見えてる月と地球があるのに届かない距離とかどうにもならない立場があって、でもムッタの届かないはずの叫びが諦めかけてたヒビトに届き、気がついたらそこに地球が‥‥というなら感動できるのに、その兄弟の絆の描き方がものすごくあっさりすぎる。というか、もっとムッタに「俺は諦めない」って言わせろよと思うけど。ヒビトは一度諦めちゃったんだから、そこでハラハラさせて欲しいんだけど。
盛り上がらないままあそこで終わりって、本当に「えっ!?」と思ったよ。ED自体は別にあれでも構わないけどその前に盛り上がりが欲しいんだけどなあ。
あとヒビトが奇跡の生還をしたっていう事実はテロップ処理でもいいんだけど、戻れた理由はちゃんと言っといて欲しいかも。あれって結局地球照のお陰で気温が上がって助かったってことなの?それとも明るくなったから周りが見えて希望が見えたってことなの?怪我した仲間は生きてたの?生きてたから無理にでも連れ帰ろうとしたんだよねえ‥‥?何のフォローもなしなので一応気になったよ。
 
そもそもこの映画だけ見てると、どうしてムッタが宇宙飛行士になれるのか全然説得力ないんだよね。
原作の方は一応能力はあるという描写はあるっぽいけど、それでも納得出来ないくらいなのに。それに彼らの子供時代から今に至る状況がまったく想像つかないんだ。19年前に諦めちゃったムッタは、同じ屋根の下で頑張り続けるヒビトのことをどう思ってたの?あとムッタは人間としてダメ人間なだけで、能力的には高いはずなんだけどそう思えないし。エピソード盛り込めないなら、もっと端的にキャラ描写を詰め込んでもいいと思う。
だからこれってたぶんだけど、まず同じように宇宙飛行士を目指した兄弟、ヒビトが宇宙飛行士になれてムッタがなれなかったという理由を、ムッタはクラスでイジメられて現実を見て諦めたからである‥‥としちゃったせいだと思うんだよね。
目標だけを見つめて努力すれば夢は必ず叶う、宇宙飛行士になれるんだっていう話なのかもしれないけど、そこにまったく説得力がないんだよ。少なくともヒビトの描き方もそう。
だけどムッタは願えば叶ったかもしれないことを現実を見てしまって諦めたからダメなんだにしすぎてるから、あの同じ家で育ってるはずの兄弟の境遇があんなに違ってることがよくわからないんだよ。せめてムッタが能力があるとこくらいは見せて欲しいよ?といってもアニメ見てる限り、ヒビトが宇宙飛行士になれた理由もさっぱりわからないんだけどさ。だって適正は適正だろ?願ったら叶うかどうかに見合った努力をしたかどうかも描いてないし。(それを言ったら話にならないのでスルーするけど)
あと閉鎖環境試験の時の破壊工作の時もイマイチ整理しきれてなくてわけわかんないよ。
ケンジはムッタが壊したことに気づいてたけど、それは自分がもう一人の工作員だからなのか、それとも単に洞察力が優れてるのかはちゃんと描こうよと。実の所もう一人の工作員てせりかさんじゃないかと思ってたんだけどw
オグリンのキャラ作りは相変わらず上手いだけに、逆に、ムッタがなんだかよくわからない人になっちゃってるのが残念。岡田まーくんも、彼の役作り能力考えると元々のヒビトのキャラってホント薄っぺらなんだろうなあとしか思えないんだけど、そこもきっと岡田まーのせいではないと思うし。
そういう意味では映画としての見せ方自体は全然感動できないんだけど、最後のムッタとヒビトの地球と月の距離感は、二人の演技のせいか妙にリアルに感じられたし、あと二人が兄弟宇宙飛行士になったという映像も説得力あったんで、本当に残念だなあという気持ちでいっぱいですよ。脚本がもっと上手ければ充分そこだけでも感動できるだろうにと。オレはそう思った。
 
あとまあこれはどうでもいい話だけど、宇宙兄弟にしてもフォーゼにしてもなんだかなあと思うのは、「度胸星 (01) (ヤングサンデーコミックス)」を読んでるせいじゃないかって気がする。何かにつけて度胸星の描写がチラつくからなのは事実w 度胸星、マジ名作。

*1:正直、アニメは見てるけど原作に興味がないのは絵が好きじゃないってのもあるし、アニメ見てる限りではキャラも好きじゃないからなんだよね。話はアニメで追っかけられる間は、この先どうなるのかまでは見るつもりだけど、ぶっちゃけそんなに面白いとも思ってないんだ‥‥