そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

ダブルフェイス 偽装警察編

http://www.wowow.co.jp/drama/double-face2012/
監督:羽住英一郎 脚本:羽原大介
 
10月にやった潜入捜査編の感想はこちら→ダブルフェイス 潜入捜査編
前回と同じく言っとくと、香港映画「インファナル・アフェア」のリメイクだけど原作映画はオレは未見。
見てる相方がいうには、今回も最後の顛末は同じだけど途中までが若干違うってことらしいですよ。
これ、潜入編と続けて見たらだいぶ感じ方のテンションは違ったかもしれないけど、偽装編って起承転結の起がない状態だから、その分多少物足りないのは仕方ないね。やっぱり2作続けて一気に見るべし。
前回、森屋(西島秀俊)が刑事だって知ってる小野寺警視(角野卓造)が殺されて森屋が行き場をなくし、そのまま堅気の警官でいつづけたい高山(香川照之)がどうするのかなというところから。
当然高山が有利な情報握ってるから、森屋を利用して然るべき流れで織田組の取引現場を押さえ、どさくさ紛れに高山は父親代わりの織田(小日向文世)を射殺。まあここまではわかるし高山上手いことやったーって感じ。
というかこれどうやっても現実的に高山のほうが頭いいからこうなるのは当然だけど、森屋が高山の正体に気がつくとこの伏線の張り方がまた絶妙。(あれとあれ、伏線だったんだなあ!)つか封筒さっさと捨ててればよかったのにと思ったけど、高山からしたら森屋に気づかれてもどちらにしろ問題なし、小野寺さんのPCのデータを消して森屋に罪を着せればいいだけだしな。
まあ今回一番わかんなかったのが、ここで織田組幹部として逮捕されたはずの森屋がなんで高山の個室にいたのかってことだよ。誰も潜入だとは知らないはずだよね?(苦笑)部長(平田満)は潜入のことは言ってた気がするけど、あんまり突っ込まないほうがいいのかしら。潜入捜査員がいることは知ってるけど誰かは知らないってことかな?どっちにしても森屋があの時点で警察内でフリーなのはおかしいけどね。
以下ネタバレね。
 
警察なのにヤクザとして潜入していつ殺されるかわからない、だからこそ疲れてしまって終わりにしたいという森屋と比べて、織田に拾われて潜入員として育てられ、最初から警察エリートとして警察幹部になってる高山の切望感はやはりちょっと甘っちょろいというか、言ってみれば拾われていい待遇で飼われてた犬がほんのひととき自由になる夢を見たってだけなんだよね。織田も飼い犬は一生飼い犬だって言ってたじゃんよ。勘違いしちゃったんだよね、飼い主を殺せば自由になれるって。まさか他の飼い主が現れるなんて思いもせずに。
そういう意味でも森屋の潜入編が面白かったのは仕方ないんだけど、だったら高山と万里(蒼井優)の話を前半でもう少し甘酸っぱい感じに描いて、高山の「自分のファミリーを守るためだ」で見せればもうちょいよかったかなあと思わんでもなかったかなあ。そうであれば最後のラストシーンももっと生きただろうけど、本編内で描いてないことが多すぎて、万里のことといい高山の今後の身の振り方といい、殆どを視聴者の想像にお任せしますすぎるのが残念かなと思う。
もちろんそこはわからなくはないんだけど、もうちょっとちゃんと突っ込んで描写しても良かったんじゃないかなあ。全部を描かなくてもいいけど、高山が万里のどこに惹かれてどう思ったのかくらいは。織田を殺せば自分が解放されるだけじゃなく、万里もヤクザの餌食にならなくて済むというのがたぶんきっかけのはずだしさ。それで済むと思ったのが「本当のヤクザじゃない」高山の甘さなんだけど。内容自体そんなに盛り込んでるわけじゃないから、一体どこで尺取られたんだろと(^_^;)
だからストーリーの展開としてはそのあと高山が森屋を殺しちゃえばそれで堅気になれるのかなと思ってたし、だからこそ高山はどうするんだろうと思ってたんだけどさ。
もともと普通に警官として20年近く生きてきた高山がこれからは正義の為に生きたいというのは別に嘘だとは思わないけど、でも織田を殺した時点で正義なんかないんだよな。森屋が高山に、自分は悪に染まってはない、みたいなこと言ってたけど、そこは重要じゃないかなって気がする。人を殺した高山はもう生まれ変わって正しく生きることは出来ないんだよ。
でもあの状況だともう森屋を殺すしかないだろうという展開だろうし、でもたぶんそうしたくはないって気持ちもあったから森屋にとっ捕まっちゃったんだろうけど、そこでまさか高山の部下の堺(高橋光臣)が同じく潜入スパイだったってのは予想外だった。マジびっくりした。(あとミツオミが思った以上に重要な役だったってのもだけどw)
そっちも今までよくバレなかったよなあ。織田にバカだって言われてたっていう割に情報担当だろ?高山にも気づかれてないんだから優秀なんじゃん。
まあそこで堺がバカだったのは完全に高山を信じてたからにしても、視聴者的にはそりゃもうエレベーターの中で殺されるのはわかってたけどさ。ただ状況的にはあそこはおかしいって気がつけよ警察‥‥だとは思う。額を一発で撃ちぬかれた森屋と心臓と胸に2発食らってる堺でどうやって殺し合えるのかと。どう考えても片方は高山だろと。そこ突っ込まないのかと(^_^;)まあいいけどw
しかしこれで完全に高山一人勝ちなのか‥‥?と思いきや、黒心会の親分がやってきて「あとはこちらで引き継ぐことになりまして〜」で高山終了〜\(^o^)/
黒心会の部下の並びに織田の家で家捜ししてた金髪(深水元基)と眼鏡もいたから、そこら辺のデータを手土産に持っていったんだろうなあ‥‥
あれは高山が完全にヤクザじゃなかったからそこまで考えが及んでなかったんだろうと思うけど、結局は自由にはなれないんだよな。万里のことも利用するしかないんだろうし、彼女こそ気の毒だよ。高山のせいじゃないけど。
最後のシーンで、エレベーターが下に降りていって闇に飲まれるというのが高山の今後を暗示してるし、エレベーターの滑車ってあれ、森屋のペントハウスにあった(よね?)ハムスターの回し車と同じ意味だよね。結局は檻の中の飼い犬でしかないし、死ぬまで走らさせるということだろうけど。
原作映画ラストで高山の役はそこまでどん底に落とされたわけじゃない感じでやっぱりエレベーターが閉まって終わりらしいけど(あくまで聞いた話)、この日本版のリメイクはその闇に落ちていく様子(と滑車のイメージ)があるからまさにインファナル・アフェア=無限地獄って感じがしつつ、いい感じに嫌な後味で終わるとこが物語としては凄まじかった。
結局、無限地獄を生き続けるしかない高山と比べたら、汚名を着せられたまま死んでいった森屋はまだ幸せだったってことかなあと。森屋が死んで堺が死んで、そこまでの話は想定内だったけど、この無限地獄に落ちた高山の今後を暗示するに留める‥‥ってとこでドラマは美しく終わった感じ。
精神科医の西田先生(和久井映見)は微妙なとこかな。あれ、ちゃんと森屋と出来てて恋人として真相解明を心に誓ったんならまだそっちの話もあるだろうなと思わせるんだけど、そういうとこをやってないからちょい弱いよね。それとあの遺影の写真っていつ撮ったんだろ。そいうこともあったてことなのかな。
あと万里ちゃんの今後は気にはなるけど、たぶんヤクザに目をつけられたから余程のことじゃないと逃げられないんだろうなあ‥‥(-_-)
何もかも終わったあとの、最後の締めがとにかくすべてだった。
映像も映画っぽくて、見てる間の緊張感もすごくあるし、リメイクだけどドラマとしての出来は良くて面白かった。
あ、キャラの雰囲気は前回の西島さんはわかりやすくて良かったんだけど、香川さんも香川さんで、ああ香川照之だなあという感じだったけど、最後の屋上からのエレベーターから出てきた後の、森屋と堺を見る表情がなんとももの凄かった。嬉しさがにじみ出てるような押し殺してるような、やってしまったことの正当性を考えてるような、後戻りできないことを決断してしまったあとの身の振り方を考えてるような、歪んだ顔。ああいう表情は初めて見たね。さすが香川スゲエ。