そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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脳男

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監督:瀧本智行 脚本:真辺克彦・成島出 原作:首藤瓜於
 
 
見てきた!面白かった!生田斗真むっちゃカッコイイ! (*゚∀゚)=3 ムッハー
美しいよ斗真!斗真の横顔はよく見るとなんか変なバランスなんだけど、あの髪型のせいもあってそこがなんだか作り物っぽくていい。まさに美しき殺人マシーン!そうそう、体つきもすごいちょうどいい感じにマッチョ。細マッチョというよりはちゃんと筋肉質な鍛えてる人って感じ。
モチロン見かけだけじゃなく動きもアクションもカッコよかったー!
映画自体は、ネタとか作りは完全にアングラというか昔風のマイナー映画っぽい作りなんだけど、なんでかちゃんとメジャー映画っぽくなってるんだよな。キャストのせいもあると思うけど、エンタメに徹してるからかな?むしろハリウッドのバイオレンスアクション映画って感じ。最後にキングクリムゾンがかかるのがものすごくアングラな感じかと。(あと音楽が今堀恒雄トライガンやガブリエル・ロベルト@SPECだったりってとこがなんかものすごくいい意味でマイナーメタル臭を放ってていいw)
全編スタイリッシュな映像で、特に凝ったことはしてないけどシャープでキレがあって、色味や静と動のメリハリがよかった。
爆発シーンもカッコイイし、画面が美しい分、人間の内面に入っていくようなアップの切り取り方とか上手いし、画面的に凝ってるわけじゃないんだけど、でもカッコイイの。そこからしてちょっと洋画風。
ジャンル的にはダークヒーローものなんだろうけど、正義とか倫理を語るんでなく結局は「感情」ってとこがいい。
感情がないのでは?と言われてた主人公の、「正義」の判断基準をそこにもってくとこがいい。作品の雰囲気的にはちょっと「ウォッチメン」ぽいかなあ?
そしてとにかく斗真が上手すぎる!「人間失格」もそうだったけど、なんか斗真って映画向きな容姿って感じだなあ。特にこういう役だと。普通のカジュアルな青年もできるけど、よそ行きの内面重視な異常者役だと大きな画面で見たいって感じかな。
以下ネタバレ若干あり。
ストーリーの構成として、そこはバレないほうがいいだろうってとこには触れないようにするけど、内容的にはネタバレるかも。
 
 
話としては事件の話というより、鈴木一郎こと入陶大威(いりす たけきみ)(←なんでこんな名前www)がダークヒーローとして覚醒する話だと思ったほうがしっくり来る感じかな。そういう意味ではこれを誕生編として、続編とか深夜帯で連ドラ作って欲しいくらい。
劇中で「感情がない」といわれたタケキミを、「喜怒哀楽がないだけじゃなく、それは何かをしたい欲求もないってこと。それじゃまるでロボット人間だ」といい、描写としてはずっとタケキミが感情を持ち合わせてないという前提で進んでくんだよね。
でも時々何か考えてるようなところがあったり(志村を見た時とか)、素性がわかってから過去回想が出てきたり、そもそも捕まった廃工場で何をしてたとか(ストーリー的なネタバレなので割愛。最初にあそこが映ったときは二人しかいなかった)がわかってきて、天才的超人的な殺人マシーンが出来ていく過去の過程を知って、感情はないわけじゃない、奥底にあって表に出てきてないだけだと精神科医の真梨子(松雪泰子)がいい、それをタケキミも理解してるけど、そもそもの判断の基準が違うから正義や倫理の話としては分かり合えないっていう結末なのかな。
そこをこの話は人を殺すほどの「正義」というものの認識と正しさの話でするでもなく、ましてやマイ正義の話をするわけでもなく、結局その正義を決めるのは、殺人マシーンである彼の「感情」じゃないか?ってとこで終わらせてるとこがよかった。正しいとか間違ってるとかじゃなく、結局「自分が許せないから殺す」ってことかな。
感情がないと思われてた殺人マシーンのタケキミがたどり着いたところがそれなら、それはとても「人間らしい」って話になるよねってとこが矛盾を含んでるというか、この物語の面白いとこかと。
刑事の茶屋が、普通なら「それでも殺さない」んだろうけど、部下のためにタケキミを殺そうとするし、刑事だからというより私怨で動いてるのはわかるんだよね。だから最後で‥‥(ネタバレ)なのは、本当ならダメだとは思うけど、ある意味スッとはした。アイツ生かしといたら絶対ロクなことにならねえ。
「殺してもいい」じゃなくて、「それでも殺したい」という感情を「実行出来るかどうか」ってことは理屈じゃないし(→茶屋刑事)、逆にそれを抑えるのも理屈だ(→真梨子)っていうか。そしてそういうのを汲み取らないのがタケキミだったり。
「殺されて本当によかった」(ネタバレなので誰のセリフかは言わないけど)は存在するんだっていう、ある意味苦い話というか。
オレは最後のタケキミの微笑みがむしろものすごく救いのように思えたんだけど、それを見ておののく真梨子は確かに普通の人の感覚であって、それは正しいんだけど、でもあれは殺人マシーンの彼が「まともだ」っていう証拠な気がするんだよね。
普通の感覚からは一線超えてるけど、超えたところに別の線引きがあって、その理屈だと彼の行動が正しいと思えるようなまともさ。
少なくともこの手の闇の正義の執行者にありがちな自己陶酔感や使命感が感じられないぶん純粋というか、そこがタケキミがちょっと新しいダークヒーローだっていうところかなあ。
その殺人マシーンって点では、無表情なロボットみたいなタケキミから殺人マシーンが出来るまでを見せられて、彼も感情がある人間なんだと思わせといたとこで、最後にまたものすごいロボット感(主に動きで)出してきたり、いろいろ面白かった。よく怪我治ったなあ。不死身かw
全体にとにかくセブン風なグロありのバイオレンスアクションでキャラ描写も適時必要な分だけである意味わかりやすく、スタイリッシュで派手な爆発多しってとこと、この余韻がカルト映画風でとてもよかった。キャラもなんかアメコミ風なんだよね。
刑事の茶屋が江口洋介なんだけど、彼にクルンクルンパーマをかけさせたってとこがよかったかな。松田優作みたいだったけどw で、あれやっぱ最後に撃っちゃうとこがいいんだよね(笑)アメリカのはみ出し者刑事みたいで。鑑識の光石研との関係もよかったし(ああ‥‥)
 真梨子は家庭の事情、というかあの家の感じがアメリカの田舎のドン底家庭って感じなのがとても説得力あり。お母さん恐いw
あの真梨子の鬱のお母さんがもう見た目からして日本の映画じゃ珍しくフリークスっぽいんだけど、やってることと状態はどう見ても頭おかしい人のそれなのに、言ってることがものすごくしっかりしててマトモだってことが何気に一番怖かった。
緑川の二階堂ふみもスゲエ。女優さんとしてあんまりちゃんと認識してるわけでもないけど(ヒミズの人だよね)、全然わかんなかった。というかこの人これ系の役が多いのかな?
志村が染谷将太で、もうなんというかにじみ出る薄気味悪さが、またなんとも言えない感じ(笑)最後、絶対そうだと思ったもんw(思わず巻き戻しーと思ったw)
タケキミのお祖父さん(夏八木勲)もアメリカの偏屈大富豪みたいだし *1 、真梨子のお母さん部屋は後ろの壁紙とかソファーとかがもろ洋ドラとかにありがちなダメ白人の汚部屋って感じだし、志村の家庭も貧乏白人みたいな荒んだ感じがあるし、ハリウッド映画と言うより、舞台設定がなんかアメリカの地方都市みたいな感じなのかなあ。そういう雰囲気が根底にずっとある気がする。ただハリウッド映画だとわりとありがちっぽいネタなので、まあどちらかと言うと日本でもこういうのが出来るようになったんだなあと感心した。
とにかく面白かったよ!マジで続き見たいー。
 

2/17・追記。ざっくりとパンフ読んで気になったところとか。

  • パンフのスタッフ対談で、「原作では緑川はキリスト教の黙示録にそって罪を重ねますが〜」とあったんで、やっぱりデビット・フィンチャー「セブン」みたいだと思ったのは間違ってないっぽい。あと原作での緑川は男で普通のサラリーマン。
  • 「脳男とは?」という定義のページに、「大威が身体感覚を取り戻したのは11年前の火事でやけどを負った時」とあるけど、映画ではよくわからなかった。というかそこで彼の中で世界が変わって豹変したという説明がなかったのは残念。たぶんこの映画での「感情のない男」という前提をまだそこでは崩したくなかったためかもしれない。(これは最後の微笑みの意味をどう受け止めるかということにも関わってくるのかな)あと最後まで殺人マシーンなのか、ダークヒーローなのかという定義付けにも関わってくるかも。
  • もう一つ、「痛みを感じない」ということがその時に身体コントロールをするすべを覚えたからだということ、彼の中で「正義を行う」ということへの意味づけが彼自身の自我の形成を促したということも同様に本来ここで説明すべきなんだろうけど、それをすると映画全体のテンションとして興ざめするからという理由なら、わからんでもないので、まあよしって感じ。
  • これ爆発がマジすごいと思ったんだけど、やっぱりほとんど本物の爆発らしい。というか操演の関山和昭さんって、「巨神兵東京に現る」も手がけた特殊撮影、特に爆発のエキスパートの人じゃん。ディープピープルにも出てた人w→http://www.nhk.or.jp/deeppeople/log/case121125/index.html

*1:ああ、夏八木勲の偏屈大富豪に何かデジャブーと思ったけど、深キョンの「富豪刑事」かw