そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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読売テレビ開局55年記念ドラマ「怪物」

http://www.ytv.co.jp/kaibutsu/
脚本:森下直 演出:落合正幸 原作:福田和代
 
何から書くべきなのかちょっと迷うんだけど、これはアカンて(^_^;)
原作は知らないからどれくらい改変されてるのかわかんないけど、キャラの設定がちょっと違うくらいで大筋はそんな変わんないのかな。
これって結局、最後のニーチェの言葉、「怪物と戦う者は自らも怪物とならないように気を付けねばならない。汝が深淵を覗き込むとき、深淵もまた汝を覗き込んでいるのだ」をやりたかったんだよね?
それで香西刑事(佐藤浩市)が真崎(向井理)という「怪物」と対峙することで自ら怪物になってしまう‥‥って話には違いなかったんだけど、これ、法で裁けない悪を私刑にかける正義のための人殺しじゃないよね?何も考えないで人を溶かすことが大好きなサイコパス真崎の仲間は、それはいくらなんでもマズイだろよ〜って話。
闇落ちにしてももう少し倫理とか常識とかモラルは考えろよっていう話だったぞ?これはダメ。香西刑事は覗く深淵間違えちゃったよ。そもそも香西さんのあの能力を怪物という、その定義が違うと思うし。それとも描写不足ってことかしら?いや香西さんのキャラならそうなっちゃダメだと思うよ?
うーんうーん、これはちょっといろいろ違うと思うなあ。
香西が、愚かさ故にどこかで間違ってしまったことに気が付かないまま罪を犯してる平凡な人間‥‥と捉えればそれなり見応えあるような体だけど、全体に香西のキャラはそういう風に見せてるけど、そういう話じゃないもん。
大体香西さんの「臭う」という能力がこのドラマの中では微妙な扱いを受けてるってのが違うだろと。どう考えても刑事としては第六感的な能力だから、それで疎まれて孤立して左遷って、そこからしてよくわかんないよ。
あとまあ向井りーの真崎の説得力ってのがちょっと欠けるってのもあるんだけどさー。向井りーの「悪」を楽しむドラマだと思えばそれはそれで楽しいとは思うけどね。
って文句言ってるみたいだけど、真崎という役の犯罪というより道徳的にどうなんだ?という部分を悪びれる風もなくさらっとやってしまうという意味ではとても向井りーにハマってると思うんで、見て面白かったです(笑)
 
オレ的に向井りーは、一見好青年に見えて実は全然そうじゃないとこがいいと思うんだけど、それでも演技的に悪役や悪者をやったのを見たいと思ったことはなくて、かといってあんまりイロモノも似合わないと思ってるんだよ。あくまでも3番手くらいの「普通の青年」をやった時が一番輝いてると思うのね。まあ人気出てからはそんな役なんか回ってこないだろうけどw
これの真崎(向井理)って、悪役とか言うんじゃなく完全にサイコパスシリアルキラーなんだけど、向井りーがやるとそこまで狂気な感じがしないんだよね。この真崎のキャラが、サイコパスかつシリアルキラーにしても、人を殺したいわけでない、ただ溶かしたい欲望だけで快楽も感じてない、まったく狂気でなく普通すぎるメンタリティの持ち主だっていうのも、ちょっとキャラ設定としてわかりにくくて(微妙だし。
あ、もしかして、真崎の人間を水に溶かしたいという欲望って、両親が入水自殺したってとこから来てるのかな?そんな話あった?見落としたかな?まあそれならそれでって感じだけど。
まあこういうのやるなら藤原竜也かオグリンとかの方が定番って感じのキャラだと思うのよ。滲みでる狂気ってのがないんだよね、向井りーって頭良いけどただの心ないイケメンだからw(一応ホメてる)だって、「ゲゲゲの女房」のときに向井りーが水木しげるにうまくハマったのって、あの飄々とした心無さが良かったんだよねえ。
真崎ってキャラはこういうキャラ設定にしても、たぶん向井りーのやったこれ‥‥じゃあないと思うんだけどなあ。普通なとこはいいんだけど、なんかもっと狂気じゃなく突き抜けてていいような気も。あ、その点では作りこみ系のオグリンとかの方が良さげな感じかな。藤原竜也だとちょっと胡散臭すぎるかもw

というかむしろ、佐藤浩市がこういう浅はかで愚かなキャラをやったってことのほうが地味にショックだよw
お話的には起承転結の転くらいまでは微妙だなあと思ってたんだよね。
だってこれ、はっきりいって堂島(要潤)が里紗(多部未華子)に正当防衛で殺された所で、ちゃんと当たり前に救急車呼んでたらこんな事にはならなかったんだよね。そこからしてもう「香西さん何やってんのー!」って感じだったし。
勝手に、しかもおとり捜査?っていう、やってることは警察としても公私混同でまずいにしても、そこで里紗をかばう理由がわかんないし、証拠ビデオをちゃんと確認しないのもわかんない。ビデオ確認したらそれ自体が里紗の正当防衛を保証するわけじゃん?なんで確認しなかった?「何があった!?」じゃねーよ、お前が確認しろよ(苦笑)
つまり里紗に対して余計なことして庇ったために余計里紗を怪物にしてしまったわけで、結構なベテランのくせに里紗の憎しみに気がついてないこととか、そもそも香西が堂島なんか死んでもいいと思ってたとこがマズイわけじゃん。それ、その時点で刑事失格だし。
そしてその堂島の死体処理を真崎にお願いしたにもかかわらず、なぜか正義感とたぶん罪悪感から逆に真崎が殺人、もしくは死体処理をしているという証拠をつかもうと躍起になってるって、ぶっちゃけ恩を仇で返してるし。そこでもう人としてもダメじゃん。
自分のミスを認めないまま、「怪物」である真崎を殺人者だと認定出来れば単に自分の気が晴れるってだけだよね。目くそ鼻くそだよね。
そう考えるとなんかいろいろ話の全体が間違ってるというか、視聴者的には明らかに騙されてる感ありあり(^_^;)香西さんは正しくないもん。
なんかスイッチ入っちゃって悪に目覚めた里紗はともかくとして、そもそも真崎が正義を行おうと思ってるわけじゃないし。
それと真崎が「人間を消した」という痕跡はないけど殺したという証拠はあるんだろうし遺品は残ってるし、何よりあのラボに運びこむこと自体はリスクメチャ大きいよね?周囲の人間を消してることといい、なんでバレないんだ?
 
てなわけで誰に共感したらいいのかわからないまま、その場その場のやってることの良し悪しの判断だけで話が進んで明らかな殺人者は断罪されず、自分の間違いを認めないまま、しかもそこには狂気もないから、誰視点で見ればいいのかわかんないのね。
まあ人を溶かす(ここが猟奇殺人でないというポイントか?)ことに何の抵抗を感じない、特に美学があるわけでもない単なる頭のいい普通の人間が理性的に理屈で「怪物」を名乗ってるという状態に巻き込まれた、ちょっと愚かな刑事さんの話ってとこかなあ。
ネタとしては「溶かす」ってのは面白いけど、殺人鬼ではないメンタリティってのはもう少し突っ込んでくれたほうがよかったかな。真崎を何考えてるかわかんない殺人者として内面もトラウマも描かないなら、香西さんがまず基準でないといかんのじゃないかなあ。その上で間違ったてしまった愚かな人間が口先で言いくるめられて闇堕ちするって話ならそれはそれでなのに。

最後に香西さん、近々始末して欲しい人間が〜って言ってたの、石川(栗山千明)のことだよね?そう思った時点でやっぱりこの人もう「人間」じゃないんだけど、これ少なくとも山本さんちの殺人事件から、香西と真崎は捕まるよね?どっちにしろ証拠不十分で立件は出来ないと思うけどさ。(そこがこの話の一番のポイントだよね)社会的には抹殺されるんじゃね?このあとどうなるんだろう?
ちょっとそういう意味でも一見ダークヒーロー誕生、しかしいきなり逮捕みたいなカタルシスは感じさせてはいるけど、よく考えたらどんでん返し落ちにもなってなくて余計にモヤモヤするよ(苦笑)
ただまあ、香西さんの闇落ちと何一つ正しくないあの3人がいかにも必殺仕置人のごとく爽やかにトリオ結成することにものすごく驚いたのは確かだな。真面目に「マジ、ありかよ!」ってTVに向かって声出して突っ込むくらいビックリしたね(笑)
どちらかというとこのドラマって単発よりは連ドラで見たかったなあ。連ドラならもう少しキャラも詰められたろうになあ。面白いネタなのになんかもったいなあとは思う。
あと香西さんと真崎ってホモ的な関係を狙おうと思えば狙えると思うんだけど(大マジ)、どうも佐藤浩市向井理って二人とも普通の意味で「男性」しすぎてて、あんまりそういう雰囲気にはならないんだなあと思ったかな。組み合わせとしては全然おいしくないよw 主に向井りーが全然、微塵もホモっ気がないからだと思うけど(苦笑)