そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

エリジウム

http://www.elysium-movie.jp/site/
監督・脚本:ニール・ブロムカンプ

 
これは泣ける。ほんと最後、マジ泣けたよ‥‥ (´;ω;`)
第9地区」と同じく本質はSFじゃなくても構わないような一人の人間がたどる運命の物語で、SFはあくまでもそれをお話として面白く見せるためのツールでしかない。そこがまさに正しくSF的だった。なんかもうブロムカンプ監督がまだ34歳という若さなのを考えると、何と比べてとは言わないけどストーリー作りのセンスが違いすぎる。
オレがいうでもなくSFってそもそもは社会問題や人間の内面の物語を「SF」という「未来や「科学」というお膳立ての中でストレートに、または暗喩的に描いたものだと思ってるけど、SF的設定やSFというジャンルに寄っかかってないって意味ではこの春先からのSF映画の中では一番「SF」だったような。
そういう意味もあって、オレ的にニール・ブロムカンプ監督はJJエイブラムス監督と同じカテゴリーでいいかも。確実に新しい才能だよ。
ネタバレになるような感想という感想もないんだけど、とにかくお話として美しいし、「第9地区」と似たような感じに泣ける。
主人公がどうなるかってのはネタバレじゃなかった気がするけど、まあ言わないけど、トム・クルーズの「オブリビオン」と違うのはそこでハッピーなオチをつけずに、でもバッドじゃない、潔くSF的な結末にしてることかなあ。例えば「たったひとつの冴えたやりかた」みたいな、美しく切ない印象。
運命というか、時に理不尽な受難が世界を救う‥‥みたいな感じだけど、そこに悲惨さはなく、キリストの受難みたいな崇高さが美しいと思う。ただその後の世界がどうなるのかはわからないけどね。
主人公はワルだったけど心根は善良で、悪人ではない、それゆえ自分の運命を知った時にそれを受け入れることの潔さとか切なさというか、そういう生き様の物語として美しい。そこは前作ともテーマとして一貫してるんだよな。

主人公マックスのマッド・デイモンはオレはそんなに好きじゃないんだけど、やっぱ上手いよね。というか「第9地区」の次の映画の主役が彼って、なんか不思議な気がするw
その第9地区の主役、アドリブで喋りまくってたシャールト・コプリーがどっかに出てるはず‥‥と思ったら敵のクルーガーだったけど全然わかんなかった。ヒゲだからか?w 前回とは全然違うタイプの役。
エリジウムの長官のジョディ・フォスターといい、どっちかというと知的俳優で固めてるっぽい?
 
映像的には「第9地区」と同じく、もうどこからどこまでがCGなのかそうじゃないのかわからないレベル。
こういうお伽話を成り立たせるためには映像的リアリティは絶対に必要だと思うけど、巨大スペースコロニーから小物などのガジェット類に至るまですべて、劇中の世界のすべてが本当にそこにあるとしか思えない映像クオリティ。どこにもその風景を疑う理由がないくらい「そこにある」のよ。しかも美しい。
エリジウムスペースコロニーなのに宇宙に向けて半分壁がなくて、まるで宇宙に浮かんだ高級住宅街みたいな風情なのもスゴいハードSF的で、見た目以上に世界観として主張してるのがいい。
というかこのスペースコロニーシド・ミードだったみたいね。(wiki見た)どうりでエリジウムの風景の印象がちょっと前に見たWOWOWシド・ミードのドキュメンタリーに出てくる彼の描いた未来都市イラストみたいだなあと思ったんだ。(→http://animeanime.jp/article/2012/12/28/12521.html
美術的な世界観はちょっと士郎正宗の「アップルシード」っぽいかもと思ったんだけど、シド・ミードがやったブレードランナーに影響受けた士郎正宗アップルシードに似てるのは当然かw
でもまあそれ以上に設定としても似てる気はするけどどうかなあ。女性の長官が統治してたり、未来的な美しい建造物に富裕層が住み、スラムとは完全に別世界で特権階級の人たちはいつまでも美しく延命処理をしながら生きているという完全格差社会とかさ。
 
そして映像演出も、スローや効果の見せ方が独特のセンスでカッコ良かった!
演出的なスローのはさみ方が上手いのと、銃火器類のエフェクトをいちいちちゃんと細かく描いてて(しかもわざわざスローにしてバッチリ見せるとかw)、主人公のマックスがつけるスーツが妙に寄せ集めでリアリティあったり(敵であるクルーガーのスーツは戦闘用の最新型とか)等々、明らかに監督の好きなところはそういうとこで、せっかく未来で銃火器使うなら拘るのはここでしょと言わんばかりの細かさはちゃんと伝わった(笑)見るべきところはそこなんだよな、きっとw
最後のマックスとクルーガーが戦う工場エリア?もずっと花びらが舞ってて(花の咲いた木はたしかにそこここにあるけど)初期のリドリー・スコット作品のような美しさ。(ちなみに地球の貧困街では常に紙が舞っていたw)
「第9地区」の時はフェイク・ドキュメンタリーっぽくカメラワークもそれ風に凝ってたけど、それは今回ほとんどなくてピントの奥行きでちょっと変化をつけたりアクションシーンのスロー使いでアクセントをつけてたけどそれがすごく上手かった。
ただ話はとても「いい話」で「泣ける」し、確実に面白いんだけど、オブリビオンと同じで映画としては何度も見るようなものじゃない気はするかなあ。好みの問題かもしれないけど。ただ忘れたころにまた見たいような映画かも。
なんか公式サイトが凝ってるなーと思ったけど、パンフをざっくり見た感じ設定も結構細かく作ってるみたいね。
にしても、劇中年代は2154年らしいけど、スペースコロニーとしてのエリジウムの着工が今から12年後って絶対無理だと思うの‥‥(^_^;)