そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

イン・ザ・ヒーロー

http://in-the-hero.com/(映画公式) http://www.toei.co.jp/movie/details/1203062_951.html東映
監督:武正晴 脚本:水野敬也李鳳宇

 
予告編見るとベタな王道展開のそれなり面白そうな映画に見えたんだけど、これは映画としてはとてもダメ映画でした (∋_∈)
途中までは唐沢と福士くんのアイドルw映画+ヒーロースタント&映画の裏側見せます的なものとして生温く見てたけど、それでも途中で耐えられなくなったよ。
役者の良さと企画の志で辛うじてクソ映画とは言わないけど(企画と内容自体は全然悪くないと思う)出来に関しては文句言わないと元がとれん。あまにもダメすぎてすごい文句言いたいです。というか言いたい。(今回ネタバレはたたんでるんで安心して読んでくださいw)
 
とりあえずまずとても良いとこ。
この映画、キャストはいい。この唐沢寿明はいい唐沢。もちろん彼が若い駆け出しの頃スーアクをやってたからよね。共演の福士蒼汰はもちろん宇宙キター!の仮面ライダーフォーゼを1年やったわけだし、その彼が初めて特撮に出る新人アイドルってのはシャレが利いてる上に実際それっぽい演技出来るわけだから一石二鳥よね。
唐沢さんはめっちゃ動けてるしカッコイイし、福士くんはこういう嫌なキャラのほうがズブン先輩@あまちゃんより演技上手く見える。この福士くんもとてもよかったと思う。
んでハリウッドと繋がってるインチキっぽいプロデューサーが加藤雅也なのは彼が本当にハリウッドで俳優やってたからかな。寺島進は電王のモモタロスのモデルとか言われてるし(あと今wiki確認したらどうも本当に女性キャラのスーアクやったことあるらしいし)これも適役。
黒谷友香は本来なら水野美紀を持ってくると完璧なんだろうけどw、キャラ的に大阪のおばちゃん風だったから黒谷友香でいいやってか黒谷友香で良かったですw
あ、そうだ、小出くん!小出くんがすげーよかった!最初小出くんだってわかなんなかったくらい業界のマネージャーっぽすぎて違和感なさすぎるわw 途中までこれどう見ても小出恵介だよな〜と思って見てたんだけど(太ったんでなければちょっと大きく見えたし)とにかく妙に上手くて、並んでるとどうしても福士くんよりそっちに目がいってしようがなかったよw
あと劇中で意味不明なくらいムチャぶり監督やってたイ・ジュンイクという人が本物の韓国の映画監督だと知ってオレは(しかも「王の男」の監督だよ!)あの監督っぷりにすごい納得はしたけど彼がやったあの監督役の無茶ぶり具合を彼自身はどう思ったんだろう… (∋_∈) というかあの監督、見た目やたらカッコイイんですけどw
キャスティングはそういう意味ではすべてにおいて気が利いてるのに一体…(;´Д`)
 
そんで冒頭のヒーロー物の主題歌は串田アキラだし、映画のテーマ曲は吉川晃司@おやっさんってのもわかりすぎてる!(笑)
冒頭のヒーローもの風OPは見せ方もタイミングもバッチリ、テロップはこの映画のスタッフ・キャストだし順番も王道に東映特撮風で良かった。あとから思うに別の監督がやったのかしらと思うくらい。さすが東映入ってるだけあるわ。スゴい本物感(笑)
映画自体はメイキング的な裏方のお仕事見せますみたいな部分が妙にしっかりしてるし(信憑性はともかく)ちゃんとスーアク含む裏方の人たちメインの話になってるのはよかった。
あとその流れで寺島さんの役の結婚披露宴シーンがいい。実にいい。実際これの裏ヒロインは寺島進だよ、ブラジャーつけてるし(笑)
実際ああいうお遊びをやるかどうかはともかくありがちそうでいい。和んだw 彼の結婚相手が美術の人で(一ノ瀬が変身ギミック投げつけた人だよね)、披露宴後の流れの見せ方とかそこだけ妙にリアリティある感じも面白かった。
もちろんスーアクさんはじめ唐沢寿明のアクションはすごかったし、映画的にスタントマンのスタントとかわけわかんなくなってくるけどたぶん結構唐沢さんがやってるとこあるだろうしとにかく最後のシーンのアクションはとてもすごいし鬼気迫ってて良かった。アクションだけなら。
だからこれ、プロデューサーの企画意図としてはすごくわかるしそこまでは良かったと思う。
最大の問題は、とにかくとにかく脚本が素人すぎる。リアリティレベルが青年誌どころか少女漫画。あとで調べたら脚本の水野敬也って「夢をかなえるゾウ」の人なのはともかく、なんでこれの脚本書いた?
この映画、少なくとも映画として三カ所は確実にダメなとこあるし(些細なつっこみどころはそれ以上に)今の特撮番組のシステマチックな現状を盛り込むのは一般客相手には意味ないにしても、そういう映画の裏方のこと自体を知らない客に対しても何のフォローもなさすぎて(単に脚本としてヘタクソだから)つらいです (∋_∈)
唐沢&福士だからそもそもが研音映画なのはともかく、もう少しうまいことやって欲しいよ。なんで研音っていつもこんな出来なんだろ(;´Д`)俳優は一流なんだからまともなスタッフ持って来てくださいよとしか。いや確実に脚本が悪いんだからなんでそこに気が付かないんだというか。
裏方メイキングとしては結構ちゃんと描写されてて愛もあるんで、そこは見てても面白かったからよけいにそう思う。これは内容とはまったく関係なくね。
ただま、なんとなく表面的にぼんやり見てればそれっぽく話は進むんで面白いと感じる人はいるかもしれないね。 *1
 
追記(09/14)→コメント書いて気がついたけど、これ作り手側がイマドキのヒーロー物の「スーツアクター」と昔のアクション映画の「スタントマン」を誤認してるんじゃないかなって気が…
昔風のアクション映画のスタントマンであるなら顔出し俳優目指すっていうのもわかるんだよね。劇中で本城はブルース・リーに憧れてって言ってるけど、実際ジャッキー・チェンみたいなスタント出身俳優はそんな感じだった気がするし。ただしそれも2〜30年くらい前、香港アクション映画みたいなのがわりと当たり前だった頃の認識だと思うのよね (∋_∈) そこら辺の昔の「スタントマン」の認識のまま今のヒーローのスーツアクターを語ってるのが間違いなのかなと。
ということ踏まえての以下ネタバレ上等なダメ出し感想。
さすがに今回はたたんどきます。
あとパンフ売り切れで買えなかったよ!なんでー(;´Д`)
 
 
この映画の一番の問題点は、本城(唐沢寿明)が最後にやることになる映画のスタントがあまりにも仕事としてナシなこと。この映画のクライマックスの根幹なのにそこからしてありえねえ〜な話だよ。
そもそもあの劇中映画の監督の無茶ぶりがどうかと思う。ノーワイヤー・ノーマットの明らかに危険なアクションをやらせんなよ。てか周りが止めろよ。あのシーン自体は撮ったけどお蔵入りってことはあるにしても、あそこまでお膳立てしといていきなり危険なアクションをしろという方が普通に考えておかしいわけで、撮影入る前にもっと詰めとけよって話よね。(←劇中映画の話ね)
その上で基本的にプロなら、プロだからこそそんな危険な仕事はやらない、だと思うんだよ。だからこういう展開に持っていくプロットがそもそも無茶でしょってことだと思うんだ。
いくら顔出し仕事がスーアクの望み(だと定義してるのもともかく←これもなにげに本気でどうかと思う)だとしても、プロならそんな仕事受けるなで終わっちゃうし、そんな仕事をお話として肯定すんなってことだよ。
これに関しては映画自体のクライマックスに関係するんだからもっと別のやり方があったんじゃないかと思うよ?普通に安全は確保された難しいアクションで日本だと本城にしか出来ない、でも本城にはそれが出来ない理由がある…でいいじゃん。

それに関係するけど、もう一つ「ドラマ」としてダメなのが、本城がその危険な仕事を受けるにあたってどころかスーアクとして致命的な身体的障害があるということに、クライマックスで離婚した奥さんである凛子さん(和久井映見)が呟くまでまったく触れてもなかったってことですよ。
首にシップを貼る場面はあったけど、スーアク生命に関わる障害ならそれ以前に病院のシーンとかでベタだけどレントゲンを見てこれ以上この仕事は…とかいうシーンがあって然るべきでしょ。それをおしても折角のチャンスである顔出しスタントを引き受けたいっていう流れならわかるんだよ。それが夢だったっていう男のロマンというか。でももちろんそれはさっき言ったような展開で、だけど。
むしろそういう古傷があって引退間際の本城が、でも最後にこのスタントはぜひ日本のトップスーツアクター本城さんに…といわれて最後に夢を叶えたい…という流れならとてもわかるし、盛り上がると思うのよ。まさに夢をかなえるゾウw
でもその盛り上がり以前にこんな仕事、危険だからやめてーとしか思えないもの。オレも奥さんに同意。実際本城さん本番でカメラ回ってるのに落ちて動けなくなってるわけだしさ。
んでその元妻の凛子さんの事情にしても、見合い相手の及川ミッチーが余りにも出オチ扱いすぎてて意味不明。
彼ワンシーンしか出られなかったのかしら?だったら普通に出られる人をキャスティングすべきだったと思うよ。高価なマッサージチェアをもらったってとこで名前は出たけどそれ誰?って感じで印象に残らないし、その時点で交際してるとこも出てこないしどういう人だかもわからない。あの役柄のキャラが出オチって意味わからない。
この人と再婚するかどうかで悩んでて、ベタだけどその返事のデートと本城の撮影日が被っててって話なら、それを蹴って現場に駆けつける王道展開の意味もあるんだけど、実際そういう流れなのにそのお膳立てがまったくないから盛り上がらないというか。それダメでしょ。せっかくの夫婦の絆とか寄りを戻すチャンスのきっかけになるエピソードだろうに、全然その伏線も張ってないってものすごくガッカリ要因。
 
新人俳優の一ノ瀬(福士蒼汰)が人としてすごく嫌味なやつだったのに実は弟と妹の面倒を見てて実はいいやつだとか苦労人だとか、そこも微妙にキャラ設定破綻してるんだけどさ。
弟と妹はハーフみたいだし、一ノ瀬がハリウッドに行きたい理由ってのが母親に知ってほしいからってのもベタにありがちにしても、お父さんどうしたとかお母さんがアメリカ人なの?とか謎ばかり。あれって一ノ瀬は日本人だとすれば、年齢差考えてもお母さんは日本人でアメリカ人と再婚したってことだよね。なのに日本の映画館で失踪したっぽい、なんでその後アメリカにいるんだって話なんだけど。お母さんがアメリカ人なの??
でもその一ノ瀬のとりとめのないキャラすら、本筋のドラマがドラマとして成り立ってないってことに比べたら些細な事ですね。

もう少し細かいとこいうと本城は伝説のスーツアクターとして若手スーアクに慕われてて、松方弘樹(特別出演)にも見知られてるような有名スーアクってことらしいけど、そんな人がなんで野外のヒーローショーみたいなものやってんだっていう。昭和の認識ですらないよ。今のスーアク人気を一般人相手に説明して盛り込めとは言わないから、そこはせいぜい10年前くらいの認識でもいいけど、いくらなんでも無茶。事務所の若手がそういう仕事受けてるってのはともかく本城がやる必要はないでしょ。しかも首に爆弾抱えてるとかいう設定なのに。
その劇中映画の最後のアクションにしても、最初あの無茶ぶり監督は長回しのワンカット撮影するって言ってたんだよね。みんなが無茶だって言ってる割にそのワンカット撮影に対する無茶っぷりの説明がないからたぶん見てる普通の人はハードルの高さがわかんないと思うの。脚本的に説明しろよって思ったし、結局この映画が見せてるそのシーンはカット割ってるからワンカットじゃないのよ。意味がわかんない。
そもそもああいう場合にワンカットを売りにするときは100人切りの部分にすると思うのよ(なんかそういう映画あった気がするけど思い出せない)
まあ詳しくは言わないけど、説得されてやめたならやめたでいいけど、劇中映画でそれをやることが難しいアクションなんだっていうなら、この映画としての見せ方としてそこはワンカットで見せるべきだと思うんだけどなあ。まあ唐沢さんが大変なのはともかくとして。
あとこの最後のアクションのシーンがやたら長くて、長い割に劇中映画がどういうものかも説明されてないから本城がやってることの意義が見えないし、上で突っ込んだようにこの映画のシーンとしての意味を考えてもドラマとしての伏線とかが張られてない状態だからこれをやり切ることの本城の気持ちにあまり感情移入できないという(ベタ展開なので想像は出来るんだけど)
そもそも韓国人俳優が危険なスタントだから仕事キャンセルしました→本城に依頼しかも顔出しで…って、それ自体意味がわからないよ。しかもその映画は一ノ瀬のハリウッドデビューなんだよね?なんで一ノ瀬のスタントの代役じゃないの?それなら本城が引き受けないとこのシーンがなくなる、一ノ瀬の出番もなしということの関連性があるのに。普通に危険なスタントをやってるスタント俳優を監督が肝いりで連れてきたのに逃げ帰ったから困った、仕方がないから急遽スタントマンの代役を…でよかったんじゃね?顔出しに拘るっていうとこなくてもいいじゃん。そもそもスーアクがみんな顔出し俳優目指してるなんて、スーツアクターの人たちにも失礼って気がするよ。そこだけは納得いかなかった。
とにかく全編そんな感じ。

そしてスーアクの話にしても、その肝心のヒーロー物の主役たちとの交流とか説明がまったくなくて、それなのに新キャラのブラックである一ノ瀬との交流は映画のメインってくらいにあるから、なんかあれっ?て感じというか。ここはまあ気にしなければ気にならないんでいいけど。
あといくらなんでもレッドとブラック両方のスーツアクターを本城一人でやるっておかしいと思うのよ(笑)
一応劇中設定としてレッドの暗黒面がブラックだっていう話だけど、レッドとブラック両方出てくるときはどうすんだろ?ここはどういうつもりだったんだろ、突っ込みどころ?
 
それ以外にも細かいツッコミ、いきなりアクション経験のない一ノ瀬に本番アクションさせて肝心のスーアクさんに怪我させるとか、特撮番組に対しての不必要なくらいのジャリ番扱いや、一ノ瀬の新人俳優のくせにスタッフに対しての感じ悪い態度、おまけにかなり人気があるアイドル俳優がスタントチームで集中合宿(だよな)することをどうして事務所が許可したんだとか、そもそも他の仕事どうしたんだとかね。
まんまリアルにやれってわけじゃもちろんないけど、それにしても気になりすぎてツラい。

あと演出的にはとにかく尺が長い。
日本の映画は撮った分全部出さなきゃ気が済まないのか?この映画に2時間とかないよ。せめて100分にしてくれ。無駄なとこ多すぎ。辛うじて唐沢がカッコイイでもってるけど。
そして最初に言ったようにOPタイトルバックの演出は上手いのに、劇中の劇中映画撮影シーンで俳優がカッコよくない。変な急すぎるアングルとか意味不明の間、無意味に手前に物置いたりとか画面構成がなんか下手。(どうでもいいけど戦隊の4人構成って間抜けよねwしかも青と緑がカブり気味)
それから特訓中の神社での巫女さんもなんか意味ありげに立ってたんで、影から見てるメインキャラの身内か関係者かと思ったらあとでお茶出しに来ただけで意味不明。サウナシーンはおかしかったけど砂時計のアップは意味不明。劇中劇のプロデューサー対応はリアリティあるし、本城が保険に入るシーンとか必要かってくらいそれっぽいのに、とにかくあの監督が謎すぎてムカつく。あれはねえよ。なんであんなキャラにした?
あ、本城がせっかくもらってきた一ノ瀬のサインを娘ちゃんが喜ぶシーンは欲しかったなあ。あれだと渡したのかどうかもわからんよ。
とりあえずそんなとこか?
唐沢がカッコイイだけに内容的に物凄く残念映画になってるのが残念。
というか唐沢があまりにもよかったんで、こないだの嵐にしやがれでの視聴率とか脚本云々のあけすけな話の重みが今頃…(;´Д`)どんなに話がおかしいと思ってももうそれは俳優の感知するとこじゃないよなあ…としか。
とにかくつまらない企画じゃないだけにこのストーリー展開のダメさは本当に残念でした。
あとま、こういうこと言うとアレだけど特撮ファンが妙にこの映画を持ち上げてるのもなんだかなあって気分です。好き嫌いは別としてもいい悪い以上に出来としてはダメな方だと思います。せっかくの特撮裏方映画なのに、どうして脚本時にちゃんとしたチェックが入らなかったんだろうと本気で悔しく思うよ (∋_∈)
特撮ネタとか裏方部分がどうこうってことじゃなく、しつこいようだけどたとえフィクションでファンタジーだとしても、この映画の根幹のストーリー展開がありえねえって話だから。調査不足以前の問題かと。

*1:他のドラマを持ち出すのはアレですが、「花子とアン」の脚本がどんなにお話的にダメダメでも視聴率はとても良いようにね。