そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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S -最後の警官- 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE

http://www.s-lastpoliceman-movie.com
監督:平野俊一 脚本:古家和尚 原作:小森陽一藤堂裕

 
あまりいい印象がなかった連ドラの感想を見返してみたけど、いい印象どころかところどころ感想リタイヤしてるレベル (∋_∈)
本来ハードめでちょっとネタとしてもヤバイ話を日曜9時枠でやるせいか、基本ストーリーを人情話に振りすぎて突っ込みどころ満載なのに描写はバイオレンスでしかもそのリアリティレベルがハチャメチャだったから…ってことで。
というくらい連ドラがイマイチだったんであまり期待してなかったけど、核テロ&特殊部隊のミッションものとしては凄くテンション高くて見応えあった!これてもかといわんばかりの物量作戦に見えるのすごい!タンカーとかヘリとか、テレビ局映画のレベル越えてるよ?(と思ったけど評判良くないみたいですねー…)
しかも映画のほうが連ドラよりも描写としては無用な暴力もなかったし、流血描写もこれならまったく妥当だよ。
画面的にもちゃんとスケール感があって奥行きもあってタンカーの見せ方も映画的だし、メカ関係もかっこよく見せてるし、バスジャックシーンおスケールも映画並だし(映画です)、パンフ見るとカメラマン押しがあるんでたぶん撮影がすごくいいんだと思う。
ちゃんとテーマもそれなりわかるし、親子愛や家族恋人などを描いて守るべきもののために戦うっていうのは大変良くわかるようになってたし、基本の設定を説明しなくていいからにしても2時間でこれだけできれば十分だとは思ったですよ。(と思ったのに思ったより評価低いよね…)
ただ話が面白かったかどうかでいうと、つまんなくはないけど面白いかと言われたら面白いとも言い切れないのよねえ。
脚本自体がまずいとかでなく、こういう話をやろうと思うことが邦画のダメなところだと思うのよ。TV局映画だからとかでもなく。
オレとしてはキャストやスタッフの熱意はすごく買うし、これだけのものを見せてくれたことには頭がさがるし、実際タンカー突入以降のシークエンスは凄まじいので、気になってる人はホントマジで大画面で見て欲しいと思うの。
でもこの映画単体として問題だと思うのは連ドラから間が開きすぎたことと、それなのに連ドラ時の設定と前提を説明してないこと、かなあ。
それもあって、一番のテーマが「死なせない、死なない。守るべき人たちのために戦う」だとすれば、主人公メインじゃない話としてはちょっと中途半端な気はする。
んで原作は読んでないけど、この作品が企画段階から連ドラと映画で展開しようと思ってた理由はなんとなくわかった。
連ドラでは主人公の神御蔵一號はライバルである蘇我伊織との対立で成長するさまを見せていき、今回の映画は成長した主人公の一號はNPSの一員であってヒーローじゃないのよね。この映画でやりたいのはNPS、SAT、SSTという特殊部隊の活躍なんだよね。映像的には間違ってないよ。
その上で特殊部隊の敵としての対テロリスト戦で、一號がメインではないけどキャラ扱いはバランスよく、皆にちょうどいい出番があってキャラ萌えで見ても満足感はとてもあった。だから見てもつまんないとか損したとかはまったく思わなかったかな。
基本的にはテロリスト正木圭吾になってしまった男の生き様の話で、それを止めるために特殊部隊が命がけで活躍する話。それがいいか悪いかでいうと、だから駄目だって気はするんだ。
制圧アクションはとても凄まじくて良かったです。たぶん似てるであろう「海猿」とかちゃんと見てないのでなんとも言えないけど、ああいうヒーロー映画ではないしそこがいいんだけど「S」としては正木の事情には寄り添うけど彼を主人公にするわけにはいかないし、結果として主人公不在の話になってて全体にわかりにくいってのはあるかも。
オレはこの映画はとても惜しいしもったいないと思うので、思ったことは突っ込んどきたいと思います。
以下ネタバレです。
 
 
なるべく簡潔に書きたいと思いますが、まずダメなところ。
よくある邦画のダメなところってとにかく話がショボイってことなんだけど、この映画は脚本がショボイわけじゃないと思うのよ。
もともと連ドラが残念だったんであんまり期待してなかったこともあって、映画のほうが画面のスケール感とかキャラ立ちがはっきりしてることとか好印象。でももうちょっと連ドラ時の設定は説明して欲しかったくらい。(忘れてるから)
組織のスタンスはナレーションで説明されてたしキャラもちゃんと分かるから、具体的には一號の殺さない主義と、連ドラから引っ張った霧山のマッチポンプテロリズムはハッキリ言及しとくべきじゃないかなと思う。
一號のスタンスはNPSのスタンスとも重なるにしても、最終的に正木と殴り合いするならちゃんと言っとかないと、あれだけ銃撃戦をやってるのになんでテロリストを「確保」するのかがわからないと思うのよ。
あと守るべきものがあるかないかってことでゆづるとの関係、速田さんの子供生まれるのと梶尾の婚約・結婚で、守るべきものがあるから命がけで戦うってのを見せたいなら、悩んでるゆづるに対して一號のリアクションが欲しかったかなあ。最後もゆづるからの逆プロポーズにあの返事って、耕三と花さんのあのオチがなかったらすごくガッカリだったよ(^_^;)全体に一號の存在は薄すぎ。つーかこれ一號がちゃんとゆづるを思ってプロポーズするって話ならあれでも良かったのに。
霧山と天城、連ドラからずっと正木を使ってテロを起こすことで警察権力を強めようとしてたけど、今回正木が勝手に暴走したわけよ。で、霧山は筋書きが変えられたってだけ言って責任がないような流れで亡くなったけど、それでいいわけないじゃんと思うのよ。しかも天城は野放しだし。どうしてあれで天城を逮捕できないのかもわからないし、霧山はちゃんと裁かれるべきだったと思う。
ここまでは今回の映画の前提として説明して欲しかったかなあ。
 
ストーリーの突っ込みどころ。
途中までは良かったけど、バスジャックがあってタンカージャックがあって、正木が現れて政府に5分で決断しろってとこ。
テロリストの要求を飲むなんてありえないし、そもそもあのシーンの正木の要求がどうであれその前にバスジャックを制圧すればよかっただけの話よね。さっさとバスジャックを制圧してれば子供が人質とか言われることなかったしバスを制圧してもタンカーが人質なことには変わりないから影響ないよ?総理はじめ官僚たちは馬鹿なのか。
まあここがなければイルマの話が…とは思うんだけど、その割になぜバスジャック犯の肩を撃ったのに倉田の子供が撃たれてるのか、たぶん説明なかったと思うのよ。あとでイルマと倉田が話すとこ(子供が助かったって聞くとこ)でやっと「なぜそこに子供がいたのか」わかったけど、それ考えると要はイルマが撃った弾が犯人の肩を貫通して後ろにいた子供に当たったってことだよね?それで正解?
だとするとバスジャック事件のとこで、貫通した弾が子供に当たったってのは説明するべきよね。問題はなぜそこに子供がいたかなんだから。イルマが子供を撃ったわけじゃないからそこの意味がわからなくてオレずっと引っかかっちゃったよ。眉間を打てば弾が貫通することはなかったかもしれないけど肩だから貫通した、だから子供に当たったってバスジャック解決時に説明しても問題ないと思うんだけど。その上で倉田の息子が女の子を助けようとして飛び出したその正義感と行動は、あとであのタイミングでわかったからこそ倉田の職務遂行の気持ちとリンクしていい話になるんという流れなんだし。
ちょっと横道それたけど、とにかくあそこで総理が結局要求を飲んで金を用意して官僚が人質になってタンカーへ行く、ネゴもまったく役に立たなかったってとこで(そこで香椎隊長を入れるってのもわからんよ)、ああこれはどんなにそれらしくやっててもハリウッド映画じゃないんだ…と、ものすごくテンション下がったよ。そんな話がありえねーし、そういう話じゃないとダメだって時点でリアリティまったくないよね。メチャ興ざめた。
というかそれでショッピングモールにいる正木を確保もできないってオカシイし。狙撃しろよ。
そもそも言うまでもなくテロリズムって、暴力をたてに自分らの要求を通すための脅しが目的なので本当にタンカーを爆発させたら意味ないし人質を殺してもダメだよな、普通。だからこそ警察組織としては制圧=犯人の殺害・鎮圧じゃなく「確保」することが前提の話なのに、ネゴが役立たずってとこも萎えるのよ。あとお話的に正木としては最初から交渉の余地なしなのが見えてるとこ。
あともう一か所、総理が人質になって第4格納庫に連れて行かれて起爆装置を押させようとされてるとこ。とにかくあの総理大臣ってまったくいいとこないしむしろ無能すぎて腹立つんだよね。
押しても押さなくてもあの場にいる人間は死ぬ状況なんだから、絶対押さないって抵抗するかもしくはさっさとキャンセルボタン押せば良かったのに(選択肢としては拒否して殺されるか押して爆発で死ぬかの違いだから)、どうしてそこで総理大臣のカッコイイ決断の見せ場がないの?ここもすごくテンション下がった。総理がバカすぎて。
そういうとこの元々のお話の展開のご都合というか甘さが、やっぱり日本のドラマ映画だなあーって感じなんだよ。
大きく不満があったのはその辺。不満というか本当にリアリティレベルを疑うくらいの、脚本の良し悪しじゃなく展開の悪さね。こういうご都合的な話をやってる以上、そこで我に返るのよ。映画なのに。理屈じゃなく気持ち押しすぎるんだよね。テロを扱うなら気持ちじゃなく駆け引きで見せて欲しいの。
でもその後の展開見ると正木がやろうとしてるのは復讐で、この話はある意味正木が主人公なので、正木という「テロリストになるしかなかった男」の生きざまを見せるためのストーリーなんだとわかったら腑に落ちたというか、こういう話になるのは仕方ないのかなとは納得したよ。でもオレは納得できたけど他の観客がそれで納得出来るかどうかはわかんないし、普通ねーよとは思うけどさ。
正木はおそらく本当にタンカーを爆発させようとしてたんじゃないかと思うんだけど、だとしたらそれって政治テロでもないし。そりゃ霧山の筋書きからはずれまくってるよ。大体どうして霧山は正木が自分の思う通りに動くと思っていたのかと。天城はどっちでもいいみたいだけど(彼の意思と正木を消した人間はわからずじまいだし)
 
んで、ストーリーについてはとにかく突っ込みどころがあってリアリティないんだけど、それでもタンカーへの突入シークエンス以降持ち直したのはそれが面白かったからです。とても見応えがあったからですよ。オレはね。(てか絶対カッコいいと思うんだけどー?)
キャラではとにかく海保SSTの隊長・倉田の青木崇高が新キャラなのにずっといたかのように当たり前にそこにいることがいい!(笑)単に青木崇高萌えと言われたらそうかもしれないけど、とにかくカッコイイw
NSPの香椎隊長@大森南朋とSATの中丸隊長@高嶋政宏SSTの倉田隊長と、三者三様にカッコイイ!
倉田たちSSTが陽動でタンカーの船尾を破壊する→一號たちNSPが突入しようとするけどヘリよけのワイヤーがあって降りられない→蘇我とイルマの狙撃チームがヘリからワイヤーを狙うという流れ。今回、物語的にはクローズアップされてないけどカッコイイよ蘇我さん!イルマ@ガッキーもカッケー!
その間テロリストと人質がもめて香椎隊長が打たれて死にかけて、官僚たち人質が甲板に逃げてきて…というすごい状況の中で降下を待つ一號と狙撃するイルマたちの緊張感ときたら!思わず拳も握りしめるよ。あと甲板のテロリストが気持ちいいくらい狙撃チームにバシバシ撃たれてるの、ちょっとスカッとする(笑)
ワイヤーがはずれて一號たち突入→艦内のテロリスト掃討+一號VSハゲのテロリスト(皆なかなか死なねー)→艦内のプルトニウム順次奪回→正木が総理を連れて逃亡→狭い艦内で銃撃戦。
えーと一號の新しい武器・携帯用の盾、その名もガーディアン。いやオレこれさ、今回は一號が主役の話じゃないしどちらかというと正木やイルマや倉田隊長の方に物語があるからそんなに目立ってもないんだけど、一號のこのガーディアンのアクションがスゴい良かった!見てて気持ちいいもん。まさに無敵の盾。すごくストレートでわかりやすい。
殴るときも格闘するときもこれ。撃たれても平気(ダメージはある)だからむしろ銃弾を避けないで突っ込める!おまけに爆発から身を守るのもこれ。全部これ1枚でまかなえるという、素晴らしい無敵のバカの武器!(ホメてる)倉田を手榴弾から守って去り際に「俺、突一ですから!(うろ)」っていうその迷いのなさ全開の向井りーは素晴らしいです。それでこそ主役だよ!w今回地味だけどw
でもその後、総理の救出で電源落としてからの甲板のヘリポート開けての突入作戦、なぜそこでゆづると平岳大の病院のシーンを入れたー!バカなの?今その突入作戦が見たいんだよ、ここで特に一號と盛り上がってたわけでもないゆづるのお返事シーンをいれる意味がわかんねー!バカー!せっかく突入シーンは盛り上がってたのに!こういうところがダメなんだよ邦画!そこマジいらね。おまけに逃げるだけの総理が無能でイライラ。降下突入作戦はちゃんとロープ引っ張ってる隊員とかディテールも描写しててよかったのにーヒカリの中から降りてくる隊員たちカッコ良かったのにー
ってのもここが山場だと思ってたからだけど(いやそうでなくてもここでゆづるのシーンはいらないよ!)、更にまだあった、なんかプルトニウム加熱されてる!何度になったらダメなの?ちゃんと教えて!そしてイルマはどこを狙ってたの?図で示して!彼女が狙ってるとこが何なのか、それが正しいかどうかもわからないよ?オレてっきり一號のガーディアンで防ぐのかと…(んなわけねえ)
でもオレはここスゴい盛り上がってた。というか突入からずっと盛り上がっててスゴいハラハラしてた!(あとでヤフー映画評見たけど、みんなどうして突入アクションスゴいって思わないの?オカシイでしょ、これすごいよ?この規模の特殊部隊の突入作戦だよ?)
とりあえずテンション高いまま一號と正木の殴り合い!クウガ最終回思い出すよね。あの時はオダジョーが泣きながら殴る方正義の方だったけど。つーか一號と正木だけじゃないけどどうしてあれだけドンパチやってみんな死なないの?不思議。直接殺さなくても普通は間接的にたぶん死ぬよね。
そしてやっと正木が確保されたよ。一號が格闘してる間ずっと正木を狙ってる蘇我も良かった。この話は正木の話だったけど、結局彼がどうしてこんなことになったのかわからずじまい。オレも聞きたかったですよ。結局黒幕は誰だったんだ?霧山すら操られていただけだったのか。細かいこというと正木の最後のセリフ、音消さないでちゃんとぼそぼそ喋ってる声を入れてたのは良かった。いろいろ描写は細かいのに大本がダメなのでかなり台無し感アリアリのダメ映画だと思われても仕方ないのか。
でもまあ過去がわかった正木@オダジョーは常に泣きそうで哀愁帯びててカッコ良かったのでいいのだ。特殊部隊の皆さんの活躍もカッコよかったのでいいのだ。このテンションなら続き見たいよ、TVスペシャルでいいから。
ただもう本当にストーリーの根本はダメダメでした。こういう話じゃないと日本じゃ受けないと思われてるのかなあ、元が漫画だからにしてもそういうことでもない気がする。原作読んでないけど。だったらテロリストの話なんかやらなきゃいいんだよな。あとどうして連ドラの時にこれくらいのテイストで出来なかったのかとおもう。本当にそう思う。
でもこの突入制圧アクションは大画面でこそだと思うので(タンカーもステキだし)気になる人は終わる前に見に行ってあげて…マジで…