そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

それでもボクはやってない

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面白かった!ただ一般的評価は高いけど、誰でもいいから他人に「見なよ!」といって勧める映画かというと、ちょっと微妙かも。全体的には淡々としてる雰囲気なので。
ぱっと見の映画の作りはドキュメンタリーに近いと思うんだけど(もちろんドキュメンタリー映画ではない)、そこはそれ、やはり「Shall we ダンス?」に見られるようなエンタメ性が遺憾なく発揮されてるというか、さすが10年以上昔からちゃんとエンタメな邦画を作ってた周防監督はただ者じゃないって感じ。
エンタメって別にハリウッド映画的なタイムテーブルに乗っ取ってるから娯楽作品だってわけじゃなく、見て「おおー面白かった〜」と心の中で盛り上がったりハラハラドキドキするような映画もエンタメだと思うのよ。かといってこの映画、淡々としてるからといって、静かな、考えさせられるような社会派映画ってわけじゃないのが、エンタメなとこかなぁと勝手に思ってるんですが。
大体この映画って143分もあるんだけど、全くそれを感じさせないのがすごい。淡々としてるのに中だるみもなく、かといって過剰に盛り上がるわけでもなく、ただただ一年間の裁判の様子が順を追って描かれてるだけ。それなのに全く退屈じゃないんだよな。この辺は脚本と演出のテンポがいいからでしょうか。*1 おまけにかなりよく練られてるからか、無駄なところも足りないところも全くないんだよね。
もちろん事件ネタで、主人公達がどうするのか?という話ってわけじゃなくて(だから登場人物の人となりが殆ど描かれてない、主人公の名前すらしばらくしてやっと判るくらい)、触れ込み通り、痴漢冤罪裁判の様子を延々と見せつつ、これって変だよね?という部分で共感を得ようとする映画なんだけど、話の持っていき方が上手く、疑問を挟む余地が無いからストレスなく見られるんですよ。

ただこれって誰でも当事者になる可能性があるんだけど、事件ネタじゃないから冤罪コワイよね、で主人公に感情移入すればいいかって問題でもなく、だからといって痴漢被害者を悪者にするわけにもいかず(一応その手のドキュメンタリーなんかも見てるんで、痴漢冤罪の様々な問題点は知ってますが)結局、「日本の裁判ておかしくね?」がこの映画の主題だから、最後のオチがあれなのはもしかしたら不満が残る人がいるかも。というか、このネタありきで映画を作ろうと思ったときに、テーマをそれにするのは非常に正しいと思うから、その辺の周防監督の目のつけ所はやはりただ者じゃないと思う。
で、結局公式のトップにあるように「無実≠無罪」なんだよね。

あと飽きない理由にはたぶん、細かい脇役に到るまでのキャスティングを、見たことある俳優さんがきっちり固めているからというのもあると思うんだけど。そのお陰でかなり登場人物が多いのに混乱せずにすんでるというのもあるのかもね。もちろんストーリー上のキャラ捌きも上手いんですが。
俳優さんたちも演技の上手い人ばかりで、演技が、というより妙にリアリティというか、"その辺の一般人"感があって、絶妙。
まああんまりブログみたいなもので感想を声高に語る映画でもないから、見る機会があれば損はしないので是非って感じですか。大画面で見なきゃいけない物でもないから、レンタルやTVでもいいんだけどさ。
ただ「Shall we ダンス?」なんかと違って、何回も見たいかといわれると、やっぱり微妙かなあ。まあ人それぞれだとは思うけど。

*1:脚本・監督ともに周防正行なんですが、普通こういう場合監督の独りよがりな映画になりがちなんだけど、映像で見せる部分とセリフで見せる部分とをちゃんと計算しているせいか、その辺のバランス感覚がよくて、結果時間を忘れるほど面白い映画になってるのかな。TV放映だとCMで興ざめになるだろうから、レンタルをお進めしますよ