そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

ダークナイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/thedarkknight/

実にバットマンらしいお話の映画だった!スゴイってことでは確かにスゴすぎる。予算たっぷりで街自体を作り上げたこともそうだけど、描かれたテーマの深さとか内容がちょっと見てスッキリするって類いの夏の大作映画じゃなかった。「バットマン」だから当然か。
とにかく主役はジョーカー。ヒース・レジャー上手すぎ!ティム・バートン版のバットマン(1作目)もコミック的という意味ではまとまってて、あの時のジャック・ニコルソンのジョーカーはまさに狂人って感じでしたが、今回のヒースのジョーカーははっきり言ってそんなレッテルすら貼れないくらい超イカレてる。見てて不安になるくらいイカレてて怖いよ。ナースのコスプレすら空恐ろしい。スゴすぎるヒース・レジャー。なんで死んじゃったんだよー。間違いなくこの映画をこれだけのものにしてるのは彼の熱演の賜物です。(今年1月にお亡くなりに‥‥*1*2
前評判は気にならない方なんだけどビギンズも見てなかったくらいだし、あれがあんまり好みでなかったからってワケじゃないけど話はやっぱりかっ飛ばしすぎて判りにくかったと思うのよ。なんでそんなにヒットしてんだろ?アメリカ人ってそんなにもバットマンが好きか !? (笑)
ただビギンズまでのバットマン映画がコミック的なストーリー展開をトレースしてたのと比べると、クリストファー・ノーラン監督のこの2作はバットマンの神髄の部分をキチンと映像化してるってのが、たぶん評価が高いってとこなんだろうな。確かにこの監督はバットマンの「闇の守護者」的なところが好きなんだと思う。
今度はバットマン・警察・判事のゴッサムチーム、対抗する悪としてマフィア&ジョーカーなんだけど、判事は途中で悪に鞍替え、マフィアは司法取引、ジョーカーはマフィアに雇われてるけど基本対バットマンバットマンは私的自警市民だからいわばピカレスクヒーロー。それぞれの立場が説明されないままってのはビギンズと同じかなあ。まあ何となく判る程度。なのでその辺ちょっと点辛め。
ただ初っぱなから延々と事件が起こり続けていくんだけど、2時間半、全く弛れることなくハイテンションのまま話が進んでて、気が抜けないよ。そのせいもあるけど途中バットマンが香港に行くんだけど、同じテンションだから香港でもゴッサムでも変わんないじゃんって感じ。あのシーンはビルからの脱出のアイデアが面白くて効いてたけど。
バットモービル破壊後のバットポッドの活躍もすごいしアクションシーンはとにかく見ごたえたっぷり。ただ何が起こってるのかちょっと判りにくいのは、たまたま見たばっかのハルクと比べると、普通の人にはハルクの方が親切って気がする。
以下ネタバレ。
 
バットマン」自体を知ってればジョーカーのやろうとしたこと、ハービーがなぜトゥーフェイスになってしまったのか、なぜバットマンはダークヒーローとして生きなきゃいけないのか、なぜそうまでしてバットマンを辞められないのかというとこで、この映画の深さとかテーマ性とかかなり重くてシリアスだってのが感じられるのかな。
バットマンって受難のヒーローってワケじゃないんだよね。自分の悪に対する復讐心を正当化するために全人生を賭けて犯罪と戦うなんてまともじゃないし、法に背いても悪をマイルールで倒すってことを自分の使命だと勘違いしたキチガイ男なんだよ。たまたま世界的大富豪でお金も持ってて丈夫な身体も持ってる、最高の教育も受けられた、でもそれを全てつぎ込んでも悪を自ら取り締まらなければいけないって思い込んでるって、相当頭おかしいよ。だからジョーカーみたいな犯罪そのものが目的だって言うような奴が現れるという話なんだよね。バットマンキチガイだからキチガイが寄ってくるだけの話。

ちょっと自分的まとめとして整理するけど、この映画の本筋はバットマンゴッサム市民(とそれを守るゴードン本部長)との立場を、(ハービーのせいで中途半端になったけど)バットマンが勝手に自警団をやってることを歓迎はするけど、市民が犠牲になる状況だと簡単に手の平を返しかねないものとして描く。
そこで自分が犠牲になっても、法が裁けない悪と戦う力を持つバットマンを守らねばという社会正義で善悪を考える「光の騎士」がハービーだったわけだけど、バットマンの正体を知ってる元カノのレイチェルからしたら、それを黙認したブルース(バットマン)は卑怯者。
ハービーのそういう大義の正義感と比べて、乗せられたにしても自分たちの利益のためならバットマンを悪に差し出したり、他人を殺そうとしたり、そんな市民の善性を試すのがフェリーにしかけたジョーカーの罠で、犯罪者の乗った船と一般市民の乗った船、どっちが相手を犠牲にするかってところで犯罪者が起爆装置をアッサリ捨て、市民はやろうとしたけど出来なかった‥‥と言うところを見せることで「正義とは、善とはなんだ?」という問い掛けをすることになる。
バットマンはジョーカーを捉まえるためにゴッサムシティを個人で監視・盗聴してもいいと思ってて実行してしまう、それが彼のマイルールだけど、それが正義かどうかといえばそのために助けられた人間には正義だけど、そうじゃない人間には正義とは言えないってことだし。
で、最後にバットマンはそういうことを全て引っかぶって、警察から追われる身になっても「闇の守護神(ダークナイト)」として街を守ることを選ぶ。街を守った正義の象徴としてのハービーをヒーローにして‥‥というのが、「死んでヒーローになるか、生き長らえて悪党になるか」で、ただ真実はゴードンとその息子だけが知ってるのみ。そのゴードンも表向きはバットマンを追う立場にならなければいけないというラストが、「バットマン」のジレンマを象徴してると思うのです。それを描いたこの映画は真のバットマン映画だってとこでしょうか。
 

余談。

ちょっとオマケ的な話をしますが、オレがハマった「バットマン」はオリジナルじゃなくカートゥーンネットワークでやってた「バットマン・ザ・フューチャー(原題:Batman Beyond)」なんですが、作られた時期がわりと新しいんで(2000年くらい)子供向けアニメのはずなのに内容的にはバットマンのテーマ的なものがすごく濃くて、バットマンらしい悪が救われない・救いようがない話とかバットマンの正義の有り様が容赦なく描かれてるという、どちらかというと大人向けのアニメなんですね。「ジャスティス・リーグ」の第1・第2シーズンもそうだけど、こんなの子供に見せてもなぁって感じの(苦笑)
ストーリーはブルースがバットマンを引退してから20年後、高校生の主人公が2代目バットマンとしてブルースのサポートで活躍する話。本人いわくニセモノじゃなくホンモノ、弟子(ロビン)じゃなく2代目。
ちなみにこの頃がここの制作スタッフの一番クオリティが高い時期なんで、作画は最高にいいです。特にビヨンドの第1第2、JLの第1とか、CG作画前のハイクオリティ。たぶん日本のアニメと気を使うところがちょっと違うんで、判りづらいかもしれないけど。機会があればオススメします。DVDは廉価版で何本か出てます。

バットマン ザ・フューチャー [DVD]

バットマン ザ・フューチャー [DVD]

OPはこんなの。カコイイ!

*1:http://d.hatena.ne.jp/korohiti/20080123/p3

*2:どうでもいい話ですが、亡くなってから「ロックユー」を見返したらあまりによかったんで、オレ、バレンタインにチョコと一緒にDVDをヒロたんに貢いだんですが、きっとヒロたんはヒース・レジャーの上手さは理解してくんないだろうなぁ‥‥(苦笑)