そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

ベンジャミン・バトン 数奇な人生

http://wwws.warnerbros.co.jp/benjaminbutton/

この映画が物悲しくて切ないのは、結局人は年取って死ぬんだってことと、ある人生の一瞬がものすごく幸せで輝いていてもそれは永遠ではないこと‥‥な気がする。
脚本が「フォレスト・ガンプ」の人らしいから、お話としては確かにそんな感じのおとぎ話みたいな話で、全体にはフィンチャーらしくない雰囲気の話なんだけど、ネタ的にこういう妙なトリック的ファンタジーを選ぶところがデヴィット・フィンチャー監督って気が。
いつもは感想書いてからパンフ読むんですが(著名人の感想付きパンフだった)帰りの電車で手持ちぶさたでざっと読んでたらなんか思ったことと違うこと書かれてたような‥‥えと、これって人生の後半で若返ったら幸せかどうかって話じゃないよね?(彼らは本当にこの映画見たんですか?)外見がどう見えようが、ベンジャミンの内面というか年齢は生まれた時からちゃんと年を取っていくんだし。若く生まれて年取って、そこから若がえるって話じゃないよな。別にうらやましかないよ?
んーだって、ベンジャミンが老人の姿で生まれてきても、育てのママとヒロインのデイジー、あと本当のお父さんにとっては外見は問題でなく、彼を年相応(年齢=内面)の人間として見てるし、逆に彼の内面と見た目が違ってることを知らない船長や人妻のエリザベスたちにっては、見た目通りのそういう人間だと思って接してるってだけで問題ないよね。スクリーンの外側から見てる方からしたら彼の外見と内面(年齢)の食い違いの認識があるから、そういうところの基準が混乱するのが面白いとは思うけど。
船長はさ、どう見ても70すぎの老人なのに女性経験がないというベンジャミンを可哀想だと思って酒を飲まして売春宿に連れてってんだし(この時ベンジャミンはたぶん15歳くらいのはずだから当然だけどw)、エリザベスはいい年の人妻と年上のおじさんのつもりで恋愛してたんだろうけど、ベンジャミンからしたら単に話が面白くていい感じの年上人妻女性と恋をする20代の青年でしかないから、楽しくてしょうがないってだけの話だし(笑)
デイジーとベンジャミンのカップルは年考えたらおかしくないのに(年の差6才)外見で違和感があるから変だと思うんだよね。しかも時間が経つごとに容姿が逆転していくし。
でもってなんか一番いいなぁと思ったのは、外見と実年齢が同じくらいになったベンジャミンと、ちょうど釣り合う年齢のデイジーが恋愛関係になって、ラブラブイチャイチャなダラけた日々を過ごすんだけど(これってまさにちょうどラブ&ピースなヒッピー時代だからなんでしょーか?)、このどうにも無軌道なラブイチャっぷりが40代の時っていう事実ですよ(笑)さすが欧米、何てウラヤマシイ(笑)
デイジーが何度か「永遠は存在するか」って聞くんだけど、もし永遠があるとすればこの時期なんだと思うんですよ。永遠はないかも知れないと思うことが永遠を存在させるというか、人生は必ず終るからこそ、その刹那が永遠になるというか。そういうとこはすごく美しいと思いました。映像も美しいし、何だかあの二人ものスッゴク楽しそうだし。(だって大抵のことは実現出来る程度にお金あるし)
でもって、20代の時に恋愛関係にならなかった‥‥のは、単にベンジャミンがあんな奔放な生活してた(フリーセックス時代か?)デイジーと関係持つのは嫌だったからってことでいいんじゃない?(苦笑)まあそのお陰で外見云々よりもお互い40代の円熟世代としていい恋愛になったんだと思うし。
あとこの辺でやっとベンジャミンが本来のブラピの年になり、更に若返って20代の容姿になっていく頃にそういやブラピってすごいイケメンなんだっけと思い出すという‥‥(笑)でもデイジー役のケイト・ブランシェットがおばあさんになってからの方がキレイなんだよね。
でもってそこから子供ができて、ベンジャミンはデイジーと子供のことを思って姿を消すってのが辛いんだけど、そのあと50代くらいのデイジーに会いに来た20代の青年のベンジャミンがホテルで会って‥‥ってのもまた切ないですよ。つか、実の娘よりデイジーなんだなあ。
よく考えたらベンジャミンってずっとフリーターだよね?捨てられたとはいえもともとお金持ちの家に生まれたってのはあるけど、結局父親の遺産もらってるからお金持ちだしさ。数奇な運命を辿ってるけど決して貧しい暮しはしてないってのがなんかほら吹き男爵的というかフォレスト・ガンプでもいいんだけど、そういうファンタジーとしての雰囲気を保ってる感じ。
  
それとやっぱりベンジャミンに関わる人間みんなが言う「自分の人生を生きろ」ってことが、7回も雷に打たれた男の話とか(6回までは数えたけど、一回見落としたかな?)、タトゥアーティストの船長、ドーバー海峡を渡ったエリザベスたちの人生と同じく、老人で生まれたベンジャミンの人生も自分が望むように生きる権利があるし、そうやって経験して何かをやり遂げて死んでいくことが人生ってことじゃないのかなあ。
人は孤独に生まれて孤独に死んでいくけど、生まれてすぐに捨てられて孤独になったベンジャミンは、でもすぐに育てのママに拾われて愛情たっぷりに育てられ、最後は赤ん坊の姿でオマケに認知症で何も判らなくなってて、でも死ぬ間際に一瞬記憶が戻ってデイジーがそばにいることがわかって死んでいく‥‥そういうのはやっぱり幸せなんじゃないかと。
デイジーが死ぬ時の病院の状況がちょうどニューオーリンズカトリーナが上陸してるっていう設定なんだけど、ベンジャミンの故郷がニューオーリンズだっていうのと相まって、そこまで意味はないんだろうけど(原作とは違うらしいし)なんか緊張感があったのも良かったかな。あの美しい南部の古い街並みが何もかもメチャクチャになるんだよな‥‥。(確かガーデン地区は助かったはずだけど)駅の時計も意味はなんかあるんだろうけど、オイラじゃそこまで深読みは出来ないや。ちょうど役目が終ったところで台風で浸水‥‥ってのも、なんか一つの時代が終ったって感じなのがいいよ。
そういやハチドリって死んだ人の魂を運ぶとか生まれ変わりとかそういう言い伝えなかったっけ?船長が言ってた羽ばたき方が∞の形だってのとか、なんか人生が繋がっていくってイメージもあんだけどなぁ。
ベンジャミン・バトンの数奇な、だけど幸せな人生の話で、それだけといえばそれだけなんだけど、最後ちょっと泣けちゃったよ。というかこういう話好きなんですよ。オレってロマンチストだからさ(笑)