そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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任侠ヘルパー#9

http://wwwz.fujitv.co.jp/ninkyo-helper/index.html
こんなにも面白いと思えるドラマを見ることの幸せよ。本当に面白いよ、任侠ヘルパー!毎週楽しみでしょうがない!
今回は2つ見どころがありました。
ひとつはドラマとしてのカタルシス、鷲津組に捕まった りこと三樹矢を救出に行くところ。
ヘルパー研修は連帯責任ってことで嫌々ながらも協力しながらやってる若頭候補のライバル6人が、理由はどうあれ「身内をやられて動かねえのは極道じゃねえ」と当り前に助けに行くってこと。
それはたぶん古い任侠ヤクザの価値観だよね。今回の鷲津組の武闘派(つまり反主流の急進派か?)尾国たちの策略はそもそもそういう古いタイプの組長を抗争に見せかけて上手く始末して自分たちが組を乗っ取ろうって魂胆で、そういうヤクザの道理をも無視する尾国と、任侠としての義理を重んじる彦一たちの価値観の対立だと見ると、いくら極道だってもどっちが正しいかっていったらそりゃ尾国たちはイカンだろって話だよな。
そして任侠ヘルパーたちがヤクザだとバレないように監視してたはずの零次がヤクザとしてあの乱闘の場にいて、その場で鷹山と鷲津の手打ちも行うといういわばヤクザの正論で正義ともいえる状況。尾国たちの極道としての卑劣さに敵も味方もなくすべてがNOというその快感というか、こういうのがドラマ的なカタルシスだよねえ。いろんな意味でスッキリ。アイツらまとめて、東京湾にでも沈めてしまえ。
ああいう場合の手打ちって、取引とか身内の不始末とかじゃなく、もうそれこそ義理人情の暗黙の了解だよな。まあ一見正義に見える最近の任侠ヘルパーたちですが、だからといって本来彦一たちが年寄り騙して金巻き上げることを生業にしてたヤクザだってのは忘れちゃイカンと思うんだ。だってきっと組のモンは未だにそれやってるよなあ‥‥(^_^;)
でもって、任侠ヘルパーたちの暴れっぷりもみんなキャラと合ってて、やっぱりこのキャストってベストなんだなあ。見た目の柄と役の中身に違和感ないというか、本格ベテランヤクザの二本橋をスゲェというチャラい五郎の組み合わせと、生粋のヤクザな彦一に対するいかにもケンカし慣れてなさ気なインテリヤクザの六車のチョコマカした様子とか、壽太も五十嵐も上手いよなぁ。
 
なんかね、発端がどういう企画だったのかはともかく、「任侠」と「ヘルパー」、たぶんんヘルパーが先だったんじゃないかと思うけど、ドラマとして見せたいことのためにその二つのキーワードで取材したネタから考えつく限りを想像してひとつの話にまとめたスタッフの仕事っぷりに脱帽します。このドラマの展開って作る側からしたら想定内というか予定通りとか計画的なんだろうけど、それだけじゃないよねたぶん。1+1=2とか3じゃなくて6とか8になるような仕事っぷり。脚本も演出もキャストも、もちろんゲストのお年寄りキャストたちも全部が上手くハマって、予想以上の出来のドラマになってるって感じ。脚本もだけど細かいとこの演出もいちいち上手いんだよなー。というか、あえて「嫌な部分を見せていく」っていうことにかなり気を使ってんだよね。嫌なだけで終わらないのがいい。後味は悪いけど嫌な感情でドラマを見終わらないところが上手いんだよな。
今回は特に任侠的な荒事もあったけど、もう一つ見どころだったのは羽鳥晶の辞職の挨拶。
ノブレスオブリージュ、あなたが救世主たらんことを!じゃなくて、「老人介護の救世主」という用意された原稿を否定して、「システマチックな姨捨山を作ろうとした」「介護される側じゃなく、介護する側の手助け」「その結果として少しでも多くの老人が救われれば」という、自分がどういうつもりで介護業に進出したのかを語る晶の話の内容は、そのままこのドラマのテーマだよね。記者たちに「この中で自分が介護施設で最後を迎えると思っている人がどれくらいいるか」っていうのは、そのままテレビのこちら側への問い掛けだし。
スタッフもおそらくそういうことを言いたくてこのドラマをやろうと思ったんだろうし、それを説教くさくなく見せてきたこれまでの介護エピソード、必ずしも後味の良くない話すらも今の介護の現状を描写していたからこそ、この晶の演説が説得力を持って本当だと思えるんだもん。この演説のための今までの介護エピソードだよね。
 
その上で今回は看取り介護の実情を、親のことは親身に考えてはいるけど実際は日々の生活の方が大事だという、ありがちに愚かな家族ということで皮肉ってるというエピソードの選び方も上手いよなぁ。何だかんだ言っても姨捨山に捨てた人間のことなんか気にかけていられないってのは本当だと思うし。
そんな夏夫さんの息子たちのことを責める気にはならんのは、前回の夏夫さんが倒れた時の対応があまりにも世間一般的な対応だったからだけど、むしろこのケースってことじゃなく本当にありがちなケースなんだと思うんだよね。実際に亡くなってから「無理すれば見舞に来れたかも」って後悔するのって、つもりはあるってヤツだよね、行動しないだけで。看取り介護にしたのだって別に彦一や鷲津組長の言葉が染みたわけでなく、たぶんお金がかかるから病院で延命するんでなく自然に任せようって思ったんじゃないかなあ。もちろん、お見舞いには来る"つもり"だったんだろうけど。
実際、臨終に誰一人として家族と連絡がつかない状況なのを誰も責めるわけでもなしっていうのは、もう鷲津組長ですらそんなこと期待してないし、それよりも死ぬまでの間、あそこのみんなで夏夫さんを診てあげたってことの方が余程重要だからってことだと思うしね。鷲津に偽善だと言われても晴菜は花を買ってくるし、それを「善いこと」として認識してる組長とか、姨捨山でもちゃんと人間らしく死んでいくことが出来ればいいってことじゃないかなあ。それが晶が理想から一番遠い場所といった認識よりも理想に近いってのは皮肉だけど。
所長が息子に「父は喜んでくれるでしょうか」と聞かれて「本人の本当の気持ちは判りません」というのは前回の自己満足な言動から引っ張ってるんだろうけど、そのオチとして夏夫さんの感謝の言葉のメモがあったってのはドラマとして上手いよな。でもそれは息子や家族に対してじゃないんだよね。病院で寂しく死ぬよりはタイヨウでみんなに見守られて死んで行く方がまだ幸せだと思うし、実際夏夫さんはちゃんとわかってたってのが良かった。ヘルパーたちの気持ちが報われるって良かったと思うし、ああいう状況で見舞に来ない家族を恨む気持ちにはならないってのは人として幸せだと思うし、夏夫さんに声を掛けたあそこの施設の人たちも、そういう気持ちで死んで行けたらと思ってんじゃないかと。ああ泣ける。
任侠と介護って、まったく通じるものがなさそうなネタだと思ったけど、効率重視のシステマチックさの隙間を埋める義理人情って意味ではいい落とし所だなあ。理屈の通らなさでは同じようなモンかも。
 
そのほか。
鷲津組の縄張りで、ハートフルバード傘下じゃないタイヨウに5年もいた零次ってのは、もう彦一が言うような隼会の研修とかそういう話じゃないと思うけど、思うところってのは何だろう。ストレートに解せば、鷹山の介護事業のトップのためだと思うけど、それだけであそこまで優秀なヘルパーになれるとも思えんので、そこは個人的な何かがある‥‥ってことかなあ。こっちもどんな仕掛けがあるのか楽しみです。
りこの作るカレー、タマネギを細切りってのはともかくとして、ニンジン入れないのは彦一がニンジン嫌いだからだよな(笑)
遊園地でタバコ吸って注意され「面倒くせーなー」と投げ捨てる彦一を見て、日常生活でホンの一瞬でもこんな人に関わりにはなりたくないなあ‥‥と思わせるクサナギはやっぱスゲェなあ。そういや謹慎してたんだよな、なんでだったかは忘れたけどw いやーちゃんと復帰してこれてよかったよかった。