そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

雷桜

http://raiou.jp/

監督:廣木隆一 脚本:田中幸子 加藤正人 原作:宇江佐真理
なんつーか、とにかく蒼井優が超可愛くてメッチャ男らしくて、蒼井優を見るための映画だったよ!
岡田まーもよかったんだけど、とにかく蒼井優。むしろ遊=雷(蒼井優)と恋仲の斉道(岡田将生)がウラヤマ!なくらい。ぐぎぎ。
てか、なんとなくだけどこれ原作とだいぶ違うよねえ?原作読んでないんだけどさ。でも今アマゾンの商品説明だけチラッと読んだけど *1 、それだけでも違うってのはよくわかった。
脚本も映像もすべてチグハグすぎ。映画作品としてオレは認めたくないレベル。
一応斉道と遊の恋物語としてはギリギリ成り立ってるというか、状況や成り行きの話としてはわかるレベルではあるんだけど、これを面白かったっていうのはまずいと思うなあ。なんでこんな映画で良しと思っちゃったんだろう。ダメだよこれはー。
特にあのカット尻切るのは監督のくせですかね、こないだから言ってるけどああいうのよくないよ。監督はVシネ系?っぽいけどスタッフ見たら黒沢映画とVシネ混合チームっぽいけど、だからチグハグなのか?映像も綺麗なとことそうでないとこが混じってて、なんか撮りたいところは力入れるけどそれ以外はおざなりな感じすぎ。映像のトーンとしても統一感なさすぎ。ぶっちゃけ、上手くない。
全体にテレビ映画というかテレビ画面的な映像で見てて全然映画って気がしないもん。2割くらいは美しかったって言ってもいいけど。斉道や遊の顔アップとか、雷桜の桜の木とか。あの桜の木は美しかった。春は桜で秋は銀杏。
画面アングルも時代劇っぽくない、空撮やクレーン使ってて、スピード感もあったし、現代物っぽくてその辺はよかったかな。でもとにかく映像のテイストがバラバラすぎるの。あとTVよりスケジュールのある映画で、晴天のいいお天気の日に雨降らしで撮影ってどうかと思うよ?すごく覚めるよ。なんで雨降りの悲しいシーンで奥のほうがカンカン照りなんだよ。おかしいだろー?
 
脚本的にはとにかく全然説明なくって状況が全くわからない。こっちもぶっちゃけヘタ。
時代ものとかそういうことでなく斉道の身分や家の状況、それとお付きの瀬田助次郎(小出恵介)んちの話(助次郎が庄屋上がりの侍で、遊は幼い頃さらわれた妹だったってこと)と、それと斉道の命を狙う江戸の一派、水争いと遊がさらわれた理由とか、全くわかりません!いや、オレが今こういって書き並べてるってことはそれなり補完して理解してるってことですけどね。見てる間そっちに気を取られすぎて映画が楽しめないレベル。オレは気になるからそうだったけど、気にならない一般女子たちは「全然わかんない」らしいよ!そりゃそうだろう。
そういうのなくてもいい、斉道と遊のラブストーリーだけ楽しんどけっていうんなら観客バカにしすぎ。せめて「清水斉道」なる人物が、江戸徳川家の殿様であって、だから紀州に婿養子に行くことになったっていう説明くらいしてやれよ。だいたい瀬田の家がどこなのかくらい説明してくれよ。岩本藩ってどこだよ。身分制度だの、運命だの言うんなら時代背景くらい説明してくれよ。おやじさまが斉道の命を狙ったり助けたりしたのもさっぱり。水争いとお家騒動的な話が絡んでるんだよね?それくらい背景としていれといてくれたってなあ、2時間以上あるんだからー
んで、そういう状況説明もないけど、登場人物の気持ちも説明なさすぎ。
話の流れとしては叙情的なはずなのに、シーンをすごく尻切れで繋げていくから登場人物の感情や気持ちを感じるゆとりもないし、余韻が全然なくて、しかもこの映画長いんだよな。2時間半くらいって、すでに拷問。とにかくエピソードをつなぐ過程がまるっきりつまんないんだもん。この映画がなんとか見られるのって、蒼井優岡田将生が気持ちを感じさせるようないい演技してて、ときどき柄本明がピリっと締めてるからだよ。小出くんはなんでかあんまりよくなくて残念。でも多分小出くんのせいじゃないよ。なんか気持ちが見えない映画ってつまんないよ。そういう描写があって、そこに役者の演技が乗っかるから感動できるんだろうに。なんでこんな監督にやらせたの?(監督のせいにしとく)
とにかくこの映画は蒼井優がすべて(苦笑)途中から蒼井優中心に撮りすぎて、リズムも溜めも無くなってるくらいに。(それはどうかと思うよ?)
まあそんな感じに内容的にはオレは全くダメだった。内容というかこの監督の演出リズムが全く合わないです。全然惜しいとも思わないくらいに。
思わないというか、蒼井優岡田将生だけ見てる分には大変に良かったけどね。遊の強さや自由奔放さ真っ直ぐさは蒼井優に合っててすごくよかった!ホレる!岡田将生の殿様も、ナイーブというか心の病っぽい感じの神経質なとことか、その二人が恋をして一途に相手を思うところも良かった。キャストは本当にぴったりだったなぁ。あと柄本明切腹シーンはまさかって感じでビックリよ?まさに斉道同様チョーびっくり。
物語自体は悲恋というか、悲恋だけどああいう形のハッピーエンドだってのも、遊の強さはきちんと描写されてたから納得出来るんだよね。あのラストも、そうだろうとは思ったけどあれ(一応ネタバレにつき伏す)でいいと思えるし、婿入りした斉道のその後や結婚したはずの奥方の話が全くなく、結局遊のことを思って〜‥‥っていうことにも別段引っかかるとこはないかな。最後のそこはきれいに美しく終わってて良かったよ。こういう話は好きなので。(だから見に行ったんだけどさー)そこんとこは脳内補完でちょっと泣けた。でもそれはオレがこういう話が好きだから‥‥ってだけだからね。
 
ケチつけて終わりなのもなんなので良かったところをあげると、これの美術‥‥になるのかなあ。美術も小道具とかよかったんだけど、とにかく背景の建物関係とかその大道具的な仕事は素晴らしかったです。ついつい話よりそっちに目がいっちゃうくらい妙にリアリティがあって、細かい時代考証として正しいかどうかはわからないんだけど、派手でもなく地味でもなく、全体の雰囲気も抑えめで良かった。
いい感じに小汚いとこと意匠が凝ってるようなリアリティというか。瀬田の庄屋の家とかもすごくそれっぽかったし。(ただ斉道の家と庄屋の家が中だけ見てると区別がつかないのはどうかと思うんだがw)
背景部分があまりにそれっぽすぎて、遊とか臭いそうって思ったもん。あれ、あの子絶対臭いって!(笑)そう思えるくらいに周りの建物(セットじゃないよね?)は良かったなあ‥‥その割にCGのお城はいただけないけどw
衣装は、遊=雷のは良かったんだけど、遊が青系なのになんで斉道も青なんだ?変えればよかったのに‥‥?
あ、あ、あとさ、そりゃねーだろ?と思ったのは、これが現代的なラブストーリーだっていうんならいいんだけど、斉道や遊が20歳過ぎてるって、普通に考えてないと思うよ?江戸時代の感覚で言えば行き遅れもいいとこだろよ。役者の年齢はいくつでもいいんだけど、せめてギリギリ10代にして欲しかったなあ。アマのレビュー見たら原作では遊はさらわれて15年だよね、だったら16歳でいいじゃん。
 
バルトで見てたんだけど、なんか年末までに公開の時代劇5本くらい並べてキャンペーン的なことやってて、その中でこの映画の広告ビジュアルとかタイトルロゴ見ても(これは美しい)、どういう位置づけの映画にしたいのかってのはなんとなくわかるんだよね。上手くいけば時代劇の意匠を借りた現代風ファンタジーに出来るものを、監督の力量不足でつぶしたって感じかなぁ。ネタとかやりたいことはよかったし、キャストはすごく見ごたえある人たち出てるんだけどなぁ。脇とかチョイ役とかもさ。

*1:レヴューはやたら評価高いんだよねー。

雷桜 (角川文庫)

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