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KAGEROU

KAGEROU

KAGEROU

すっかり読むのが遅くなっちゃって、その間ネタバレにならない程度にはニュース記事などは見てたんだけど、そんなに悪くないんじゃね?‥‥と読み始めた辺りは思ってました。
もちろん26歳の書いた小説とはとても思えない、とまでは言わないけど、これが何がしかの評価を受けたものだということについてはいえば、どう見ても素人小説だとは思うかなあ。
特筆すべき部分は、自分に埋め込まれた人工心臓のゼンマイを自分で回しながら動き回る‥‥ってことくらいかな。それはさすがに思いつかない!(笑)正気か?とは思うけどw さすがオンリーワン発想。ちょとオズの魔法使いかなと思ったけど。
でも一応いうと、世間のお怒りはごもっともですが、作家が選んだわけでもない社内選考の文学賞と称するもので、社内的にこれは売れると思った、大賞2000万円上げても元が取れると思った素人に賞をあげて、それ以上に稼いでもらってるってだけだから、別に他人が批判するいわれはないと思うよ。だって誰が損したのさ。誰も損してないじゃん。だったら別にその部分で批判するいわれはないと思うんだよなあ。でも内容的に酷いってのはまた別の話で、大賞取るほどのものじゃないっていう批判には当たらないってだけね。直木賞芥川賞みたいな文学的に権威のある賞じゃないんだから。むしろ自分のネームバリューで小説が売れると思った人はこれからも応募すればいいだけだよ。賞金が200万になってるから、200万以上稼げればいいんだし、そういう意味でハードルは下がってるしね。
だいたい内容的には、オレもこの小説は酷いと思うもん(笑)
あ、これネタバレです。隠さないけど、気になる人は以下気をつけてくださいよ。
 
 
最初は結構書けてるなあと思ったけど、50ページすぎ、3分の1くらい読んだ辺りでもうあきちゃって、読むの苦痛になってきたよ。
だってさ、これ、「物語」ですらないんだもん。ただの作文だよ。一応日付的には何日か経ってるけど、基本は「今日一日に起こった出来事を時系列で書きました」レベルの作文。ただただ主人公の置かれたその状況を描写して、そこに作者の言いたいことを登場人物に代弁させただけの文章。
それでも伏線があって、構成的に多少しっかりして見える(キャラにブレがない、ストーリーが一本筋が通ってるなど)ってだけ、まだましかなあ。そこでちゃんとまとまってて読める作品にはなってるってことは評価できるけどね。
分かりにくいと言われてるらしいキャラの書き分けですが、オレ、20ページくらい読んだ時点で、主人公の40男・ヤスオのビジュアルイメージが温水洋一になってしまったんで、とてもわかり易かったです、自分内で(笑)あのお馬鹿な、とても社会人として40年間生きてきたとは思えない言動も、温水さんの役柄のパブリックイメージとしてはありだから(本人がそうだと言ってるわけではない)あれでよし。そしてキョウヤはヒロたんでいいです別にw
てか、あれっぽっちしか出てない登場人物、かき分けもクソもないだろよ、読んで分かれよ。てか、正直わからなくてもいいじゃん。ヤスオとキョウヤとアカネだけわかってればOKなんだから。あとモブなんだし。
そしてさあ、最後のオチだけどあれがわからない人がいるって本当?
そもそもヒロたんの頭の中身って、バカにするわけでなくマジでスイーツレベルだと思うんだよね。10代後半〜20代前半女子、もしくは団塊世代以上で頭の構造が簡単な人たちにしかヒットしない類の。
でもそこで彼はそのレベルで本気で、ほんとに自分の書くものが面白いと思って書いてるんだから、そこは貶す必要はないと思うんだよ。それを受け入れられる人だけが愉しめばいいというものだと思うから、対象以外の人たちがバカにするのは間違ってると思うんだ。んで、その上でそういう人達があのオチが分からないっていうんなら、それはそもそもそういう人向けだからしょうがないよねってだけの話で。
でもオレだったら、オレが編集だったら、最後の「report」のとこにキョウヤの名前はいれるね。あれの最後はアカネじゃなくてキョウヤだよ。最初もしくはラスト前がアカネで、最後がキョウヤ。脳は京谷貴志へ。それでブラックなオチになるわけじゃん。分かりやすいし。そこまでやる必要ないと思うんなら、そもそもあの話を喜んで、あれに感動する質の種類の人間を舐めてるよw そこまでやってあげなきゃ(笑)
で、この話のオチがあれだとして、だけど、水嶋ヒロ本人が言う「いのちの尊さ、大切さ」は感じません。自殺するくらいならドナーになったほうがいいよね、生きてるっていいよね、って程度かな。まあ自殺志願でお金もらってる主人公が、結局脳移植で他人の体に入れられちゃって、自分の肉体が他人の体で息づいてることに涙を流す‥‥っていうことが生きててよかったなあって話なら、だけどさ。
てかさ、これってネタとしてもショートショートレベルの話でしょ。だってさ、脳みそ取り替えたらその人じゃないに決まってるじゃん。
オレ、ヤスオが肉体の値段の説明のとこで脳に値段がつかないことに引っかかってたのが気になってたんだけど、まさかホントにそんな展開にするとは思わなかったというかさあ。
死にたくないと思ったならともかく、そもそもキョウヤが脳出血で倒れたのって、ヤスオからしたらたなぼたじゃん。何そのうまい話。ありえない。体と脳(心・個性)ってどっちが大事?心だろ。ヤスオは生きててキョウヤは死んでしまった‥‥ってだけだよね。
そこに感動する何かがあるの?キョウヤかわいそー。何も悪いことしてないのに。世の中ってなんて理不尽で不条理なんでしょうか?そういうブラックな話としてならOKだけど、いのちの尊さとか言われても果てしなくピント外れかと。
さてキョウヤの肉体を乗っ取ったことになる何の取り柄もない40男の大東泰雄さんはこれからどうするつもりなの?一生移植された自分の心臓の音を聞いて生きるの?それのどこが命に対するメッセージなの?むしろキョウヤの命がKAGEROUのように儚かったのかも。給料いくらかしらないけど一生懸命働いた挙句、脳出血であっという間にお亡くなりに。
というか根本的におかしいと思うのは、脳移植って脳の持ち主(この場合ヤスオ)の命を助けるためにするものだよね。なんでヤスオを助けなきゃいけないのか?キョウヤが亡くなったら、当然キョウヤはドナー登録してるんだよね?キョウヤの肉体を誰かに移植すべきだろう。どうしてヤスオの脳をキョウヤの体に移植するの?そこからしておかしくね、この話。
そこら辺でなんか、はぁ〜っ?と思ったというか。この話で感動できるんならマジでホントにスイーツレベル。 *1
ちなみに前振りオチのシールの下はどうも「外してヤスオに」→「外しキョウヤに」みたいですよw(透かしてみた)まあある意味お話的にはそういうことだよなw
 
まあ文章自体はオレも人のことはいえないのであんま突っ込まないけど、なんで地の文で名前表記がカタカナなのに、会話では漢字表記なの?カタカナ表記を使うケースって記号的にしてそこにキャラクター性を入れたくないときに使う手じゃん。それって文章表現としてチグハグだと思うけど、ラノベケータイ小説ではそういうことするの?オレあんま読んだことないからよくわかんないんだけど。
それで「ヤスオ」って書かれると何となく20代くらいのしょっぱいニートをイメージするんだよなあ。ま、最初に言ったようにオレは温水さんでイメージしたからそのあと大変キャラ性は分かりやすかったですが。
文章はまああんなもんかなと。むしろ読みやすくていいんじゃないかな。意外と細かいディテールはしつこく描写してるし。
ただ最初のほうが特に意味が分からない修飾表現や比喩表現が多くて、何が言いたいのかわからなくなってるってくらいかなあ。しかも気が利いてるわけでもないしな。
石田衣良ちゃんが初期のころ、それこそそういう煌めくような修飾表現をたくさん使ってて「うわー頑張ってるなー」と生温い気持ちになったものですが(オレはわりと好きだったけど)、そこまで表現として洗練されてるわけでも気が利いてるわけでも使いどころが上手いわけでもないからなあ‥‥、まあ素人あやりがちな、上手いと勘違いするような文章表現ね。
てか、最初は頑張ってそういうの使ってるんだけど、後半はなくなったね。文章の読みやすさもちょっと読み易くなたし(中身は薄いんだけど)後半直しが入ったのか、それともヒロたんの作文能力が上がったのかどっちかかかなー?
「イギリスジン」云々の巷で話題のくだらないダジャレというかオヤジギャグというかは、話題になってなきゃオレ的にはスルーしてるレベル。ヒロたんがどういうつもりでそんなダジャレ?を書いてるのかは興味あるけど、それ自体はまったく引っかからん。ギャグですらないし。
というかさ、そういうくだらないオヤジギャグを言わせるってことがその人のキャラ性だってことは理解してるんだよね、ヒロたんは。
あとヒロインらしき少女のアカネちゃんも、ハタチだとはとても思えない。幼い‥‥ってよりは頭足りない人かと思った。心臓病で精薄?みたいな。でなきゃむしろあのキャラでイメージするのは大橋のぞみとかじゃね?子供すぎ?w
巷で言われるように絢香かもしれんが、そうだとしたらよっぽどだなぁ。いやヒロたんの頭の中身が。大丈夫か?絢香でもいいけどせめて年齢設定は14歳くらいにしとこうよ。心臓のゼンマイを回す40のオッサンと森でかくれんぼして秘密基地で寛ぐハタチって相当頭に問題あり。気がつけ。
てかゼンマイってなんだろ。ヒロたんの頭にどういうビジュアルイメージが?さすがにイメージできんけど、オレが出来るのはせいぜいアイアンマンのイケメン社長の心臓くらいか(笑)映画化するときにはああいうことになるのかなあ?まあちょっといろいろ、最初は生温かく見守ろうかと思ったんだけど、あまりにも突込みどころが多くて、さすがにこれはオレでも擁護できませんよ。頑張って書いたっていうのはわかるんだけど。あとまあまったくの普通の人にこれだけの分量の文章を書けって言ってもちょっと無理かなと思うから、その点では評価できるかなー。
 
あとこれおまけに(笑)
どれくらいスカスカかといったら右が東野圭吾の「流星の絆」、左が「KAGEROU」。行数は半分。上下左右の余白も広すぎて、同じ判型なのにサイズが違うんじゃないと錯覚するくらい。まあ普段本を読まない人にはとっつきやすくていいんじゃないかなあ。内容もまったく考えなくても理解できるし。

*1:一応、ヤスオ自身が脳の使い道として脳死した人に脳を移植する、中身はどうでもいいから外見だけでもって人もいるんじゃないか‥‥とはいってる。