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プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)

東京から来た3人の会計検査院が暴いてしまった、400年間隠されていた大阪の秘密とは?豊臣の末裔の王女がピンチになったその日、大阪は全停止した ――
 
という話だけど、はっきり言ってネタだけ。この人の作品って今までのもそうだけど、ネタはすごく、ものすごーく面白そうなんだよね。
ただその思いついたネタをキッチリ詰めようとすると辻褄が合わなくて穴だらけになるから、むしろ詰めちゃいけない、いろんなコトを曖昧なままで放置すべしって結果の浅い話。そう、話も浅いから感動するとかムリ。本当に面白そうなのはネタだけ。
以前この人のデビュー作の「鴨川ホルモー」をケチョンケチョンに下手くそと言った記憶がありますが(次作の鹿男は読む前にリタイア)、文章はさすがに上手くなってたな、普通くらいには。でも構成は下手くそだよね。時系列が行ったり来たりするから、話わからなくはないけどごちゃごちゃしてて取っ散らかってて分かりづらいよなあ。一応大枠の構成はちゃんと出来てるんだけどね。東京とか戻る必要ないだろよ、この話w これを機会にという国の密かな陰謀なら陰謀でちゃんとそこら辺もわかるように仕込んどけよという(苦笑)少なくともこの人ミステリーサスペンスはムリw まあ書かないだろうけど。なんとなく展開が行き当たりばったり感があるのもよくないのかなあ?そこら辺、内容をあんまり深く考えてないというか。
今回のこれの場合、結局この人が書きたいのって、自分の好きな大阪の街の細かい描写とか、そこに出てくる人の素性とか過去とか人となりとか、そういう話の本筋に関係ないネタなんだよね。
しかもこれ540ページくらいあんじゃん、最初の100ページあたりで余分な街の描写や登場キャラの描写は読まなくても本筋には全く関係ないなってことには気が付いたんで、そこら辺は完全にすっ飛ばしてるけど、普通に書いたら300ページくらいで収まると思う。だからたぶん読まなくても問題ないよね、答えは聞いてないけど。

その辺はまあ小説だからいいんだよ、そういう話の本筋に関係ない描写を楽しむ向きもあるだろうから。オレはこういう話の本筋に絡まない情報描写はあんまり好まないってだけで。なんつか、アルマゲドンとかみたく、主人公達が大阪国に対して何かする話かと思ってたら、単に「日本沈没」的な、周辺の人々の暮らしぶりやその時どうしたってことを細かく、それも浅ーく描いてただけだったというガッカリ感というか。しかもクライマックスの肝心なとこもなんかウヤムヤ、勘違いと謀略と偶然が重なってなんとなーく解決‥‥って。
まあ一応松平の父親との確執とかはあるから、父親から子どもに受け継がれていく大阪国の歴史とか、守るべきものは王女ではなくそのシステム、父と息子の相互理解と受け継ぐことこそが守るべきものだ‥‥というのはわかる。
でもわかるんだけどー、何で400年前の豊臣の子孫が今一人しかいないんだとか、大阪国の議事堂ができてそのシステムが確立されたのは幕末からだろ、それまでの300年はどうだったんだとか、そもそも「可哀想」だけで大阪中の人間が400年ずっと、徳川への憎しみをいだいていたとか、よくわかりません。400年の間にどれだけ大阪の人間が入れ替わってると?(笑)そしてその子孫が「王女」って、何で王女?大阪国は王国か?その割に総理大臣がいるんだけど(笑)そこ、突っ込んじゃいけないとこなのか?
おまけに父と息子が二人きりでしゃべることがないからあの長い廊下が必要だっていうその理屈も分かんねーよw すごい作者の個人的なことだよね?
大阪の男がずっと王女を守ってて、それを大阪の女は知ってるのに知らんふりして「男はしょうがないなあ」と目を瞑って見守ってる‥‥ってのがなんか男のロマンだってのもわかるから、それはそれでいいんだけどね。まあ映画では改変されてるけどw
だから実は旭が大阪の人間で、最後に性同一性障害の大輔にそれを打ち明けるっていうオチも個人的には好きだけどさ。途中まではどうして彼は性同一性障害でなければいけないんだ?と思ってたけどね。
ただもうそういう話のすべてが浅いんだよなあ(苦笑)
読み終わって「で、それがなんなの?」としか思わないというか、むしろ松平と同じくそんな訳の解らんシステムを守るために年間5億の税金を投入するとか、勘弁して下さいとしか思えない(苦笑)別に地下に大阪国があって、知っているのに知らんぷりなのは伝奇ロマンなファンタジーだからいいけど。だったら税金も大阪国民で賄えよ。
まあ確かに大阪に暗黙の了解のもとに豊臣の末裔を守る大阪国がある‥‥っていうのは楽しい発想だよね。そう思わせる大阪の街ってのも、なんとなく納得出来るし。(でも大丈夫、東京には「帝都」があるから!笑)
万城目さんはもうちょっとキッチリ話が詰められれば荒俣宏になれるんだろうに、そこまで話を詰められない、妙に女性的な話の作り方するんだよなあ。それとも男性作家ならもっとマニアックでキッチリ理詰めで構成すべしってのは、ただの作家に対する幻想なんだろうか?w まあネタの突飛さと、話自体のこの浅さがなんとなく一般受けするんだろうな。
とにかくつまらなくもないけど面白くもない話でした。万城目学に対する世間の評価との認識のズレって、個人的な好みの問題じゃないんと思うんだけどなあ。物語の、小説の出来としては相当レベル低いと思うんだけど。まあこれ以上も期待しないからいいけどさ。ネタだけはすごく面白そうなんだよなあ‥‥もったいない。でもきっとその浅さがこの人の個性なんだろうなあ‥‥ぼんやり。
中身は割とサクサク読めたというか、一晩に150ページくらいずつ読んだんで4日で読めました。むしろ話が進まなくてイライラしたw(だからすっ飛ばして読んでんだよ)
あ、どうでもいいけど、オレはなんとなくミラクル鳥居のビジュアルはアリキリの石井をイメージしてました。相方は若い頃の塚地だってだといってたw
 
読み終わってすぐ見た映画の感想はこれ→http://d.hatena.ne.jp/korohiti/20110616/p3