そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

風立ちぬ

http://kazetachinu.jp/

監督・脚本:宮崎駿
 
あ、これ監督も脚本も宮崎駿だったんだー(ちょー今さら)
てのは、さすがに漫画も描いてるだけあってよくありがちな脚本監督兼任作品みたいにひとりよがりなとこはないけど、内容は自体はかなり微妙。
堀辰雄の「風立ちぬ」はたまたま何年か前に読み返したけど(青空文庫にも入ってる)、なんとなく内容はうろ覚え。話の印象くらいしか覚えてないんだけどさ。まあそれくらいで十分か。
アニメーションはとてつもなく素晴らしいけど、内容は黒澤明の「夢」みたく、年寄りの妄想みたいな、ぼんやりと美しく、そして幾ばくかの狂気をはらんだ映画だった。作ってる方の狂気というか、ポニョあたりから監督、結構ヤバイよね?w
うーん、たぶん自分も70,80歳くらいになったら清々しい気持ちでこれを面白いと思うかもしれないかなあ。完全に過去を振り返って思い出のいいところだけを純化してる妄想気味の映画、かな。いわれるほどリアルでもなく完全にファンタジーだし。
なんでこれがリアル?大人を描いたから?でも堀辰雄を混ぜた、「架空の堀越二郎」の物語なんだよね、ファンタジーじゃん。
ただなんかもうポニョといいこれといい、宮崎監督の、残りの人生は余計な雑音を遮断して美しいものだけ見ていたい、それ以外のことは考えたくない‥‥っていう気持ちはとてもよくわかったわー(;´Д`) すでに半分くらいあっちの世界に行ってると思う(年齢考えたら当然かも)
ポニョまでにあった、あの世とこの世の境目のシーンみたいなとこ(特に水のシーン)はなかったけど、むしろあの夢の世界は「あの世」だよね。
特に最後の夢、死んだ奈緒子さんが待ってて、自分の作った零戦が紙飛行機のようになって、若者を乗せてどこか遠くの彼方へ飛んでいく(そして戻っては来ない)のをカプローネさんと見る‥‥ってのが今回の彼岸描写だと思うけど、監督自身が半分くらいはあの世に行っちゃってるよね(^_^;)
まあこれはこれでいいんでないかと思うけど。
あとまあ思想的なものは戦争を否定も肯定もしてないからあんまり出てないんだけど、「コクリコ坂」もそうだったんだけど本当にカルチェ・ラタンとかの自由な気風とか学生っぽい情熱が好きなのねー‥‥みたいな。ああいう文学系オタクのやや左寄り思想はわからんでもないけど、どうもああいうのって熱気だけって感じで実感ないんだよなあー。2作続けてちょっと全面に出すぎかなあ。
 
アニメーション作画としては最初の関東大震災の描写はすごかった。いきなりなのでちょっと面食らったけど、ポニョでいったらクライマックスの大津波くらいの勢い。波打つ東京の町の家屋とか大地とか汽車とか、さすがのジブリ作画だった。
作画はとにかく素晴らしく動いてていつもよりリアルだったかな。ちょっと気持ち悪くなったくらいw CGじゃないのにあんなに動かすってのも枚数的に考えてもちょっとすごいかも。「おおかみこども〜」と似てるようで非なる作画というか、やっぱりアナログ作画ってちょっと動きとして重いよな。ジブリの癖かもしれんけど。おおかみこどものような疾走感や爽快感はない、地味だけど実はリアルに動いてる感が満載。
あと飛行機は出てくるけどいつものように「飛ぶ快感」というより、「それを作る情熱」という話だったから、そういう爽快感もあまりなかったかな。だから眠くなるんだけどw
 
話題になってた庵野さんの二郎の声は合ってるような合ってないような、時々とてもハマってるけど全体には素人演技すぎて聞いてられねえ感じ。でもま、親友の本庄が西島秀俊なんでそれでもちょうどいいような気はする。(ぶっちゃけ西島さんも声優さんのように上手いわけでないし)
というか宮崎駿はたぶん自分のアニメーションにとても自信があるから、その自分が表現するアニメーションに余計な感情表現を乗せて欲しくないんだよな。見えてる動きの表現以上に感情を乗せられるのが嫌だからあえて下手な人を使うんだよね、きっと‥‥(;´Д`) 確かに声なんか飾りですよ!って感じか。
ああでもカプローニさんの野村萬斎はとてもよかった。ずっと宮崎アニメに出てる常連のようなハマりっぷりで、萬斎の演技力は素晴らしいね!導いてるわけでもなく指針を示してるわけでもなく、どう見ても二郎をヤバい方へ誘ってる悪魔にしか見えない。パンフちらっと見たら野村萬斎は「メフィストフェレスのような」って言われたらしいけど、まさにそれ。主役が棒読みな分、萬斎の声の説得力が増して聞こえるから、やっぱりこれもちょうどいいのかも。変に作為的でないって意味で。

あの二郎の妄想夢自体がパラノイア的だし、ああいう風に美しいものを追い求めることが現実としては良いことだとはとても思えないけど、まあ全体に堀越二郎の半生のイメージ映像だと思えば納得。実際戦争の話は全く出てこないけど、この映画はそれでいいと思う。宮崎駿が描きたかった堀越二郎の物語は、あくまでも「美しい飛行機」を作りたかった日本の少年の話であって、戦闘機=戦争の道具を作った人物の話ではないわけだし。
年代をテロップで明らかにしてないからそれなり知識がないといつの時代の話かもわかんないけど、二郎の子供の時は置いとくと、1923年から1945年かな。関東大震災から終戦まで。
全体にボンヤリとした記憶の断片を見てるようなイメージ的な構成で、年寄りの美しい妄想、宮崎駿の理想と二郎の回顧の夢だと思えばそれはそれで美しいのかも。

というかそれくらいのほうがいろいろな解釈の余地があって、見てる方は楽しめるのかな。ぼんやりしたイメージ映像映画なので、零戦の素晴らしさも二郎の非凡さ
も戦争の悲惨さも特に伝わってこず、ただ美しいものを作りたいという情熱だけはよくわかった。あと死ぬことがわかってる美しい恋人への情熱ね(笑)
まああんまりぼんやりした映画で途中ちょっと眠くなったのも確かだけど、最後の「美しいところだけ見て欲しかった」みたいなとこはちょっと堀辰雄っぽくてよかった。
すべてが夢の中の出来事っぽくて、戦争(悲しい出来事)は事実だけど、それで起こった出来事とそれを認めたくない自分の気持ちの折り合いつかないなら、全部夢の中の話なら誰も傷つかなくていいのに‥‥みたいな感傷は嫌いではないかなあ。
いやそう思ったのはオレがそう思ったってだけで、この映画の中の堀越二郎はきっとそんなこともどうでもよくて、自分の夢を追求できて満足、他は知らねーくらいの心持ちだったんだろなw
まー何があっても前に進まなければいけない、生きねば!生きていかなきゃいけないんだけどね!って話か。
そう考えると、関東大震災で始まって終戦で終わるこの企画が3.11前に企画されてたってことがすごいとは思う。ジブリは(鈴木さんが?)時代の空気読み過ぎ。いざ生きめやも!
 

追記。

この記事は自分の感じたことに結構近いかなあ。

二郎に全く共感できないのはこの人がいいとこの坊ちゃんぽい薄情な人だから。まあ二郎=イコール宮崎さんの心なさというかw
奈緒子を好きなのも再会した彼女がただ美しかったからだと思ってたしなあ。だって病院見舞いには行かないし、毎日奈緒子を一人置いてけぼりで家にも帰らず仕事ばっかしてるのに大事にしてるつもりとか「はぁ? ( ゚д゚) 」って感じだしw それがわかってるから奈緒子はいよいよ病状が悪化したら療養所に戻ったんだし、黒川さんの奥さんはわかってるからそれを止めなかったんだよな。
二郎の才能と引き替えにしてもあの心なさはなあw(ただその才能も描かれてるかといえばビミョー。あの零戦を作った=スゴい!くらいな)
というか、才能ある人は他を犠牲にしてもいいのかどうかと言われたら、そこまで好きな事に打ち込めていいよね♪としか言い様がないのでなあw 世俗をまったく離れたところで好きな事ができるのは、元々恵まれた人たちってことだよな。あんな時代なのにいつもパリっとスーツ着てて、庶民の暮らしとか知ったこっちゃねーとか。(軽井沢でぼんやり過ごしてたお金、誰が出してんの?)奈緒子さんとこもそうだけど、いい大学を出て技師として才能を認められてる二郎や、あの時代に医者になりたいといってなれる二郎の妹とかさ。まあ二郎の妹は兄よりももっとちゃんとしてると思うけど。
 
バルトにあったフィギュア〜