そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

そこのみにて光輝く

http://hikarikagayaku.jp/
監督:呉美保 脚本:高田亮 原作:佐藤泰志

 
映画概要→http://eiga.com/l/d5zWZ
春先に見そこねてたんだけどちょうどリバイバル上映をしてたんでさくっと見てきました。
気になってたのはもちろんキャストに綾野剛とか菅田将暉がいたからだけど、少なくとも嫌いな人はいなくてよかった。
んで、内容もあんまり知らないでいったけど思ってたよりよかったし面白かったです。
内容はだいたいまあ予想通りというか、普通ならこういう私小説というか純文学っぽい映画は好きじゃないんだけどこの映画はそれほど酷いことにもならなかったし、酷い底辺家族の状況を描いていたりもするけどそんなに救いようがなく暗いシリアスな感じじゃないのがよかった。(たぶん菅田将暉の役のせいってのもあるかも)
映像がきれいなのと、あと暴力的な部分があまりないからかなあ。函館のひなびた海辺の雰囲気が田舎な感じで、夏なのに薄ら寒そうな。でもあんまり救いようがない痛いDQNやヤンキーっぽい人たちは出てこないし(中島みたいなのはまあ田舎にゃいがちだしDQNじゃ顔役にはなれんからな)、そういう意味ではキャラがいかにもダメ人間ばかりな暗い邦画にありがちなステレオタイプじゃないからってのもあるかも。
原作者が41歳で無くなったのが1990年て思ったより前で、この原作作品が書かれたのは作者が死ぬ間際の1989年。それを考えると多少原作とは違うみたいだけど、田舎のこういう底辺で生きる人の生活はそんなに変わらない気がするから、あんまり違和感ないのかも。ああいう家に住んでたわけじゃもちろんないけど、あの家のニオイはすごくよく分かる。すえたような酸っぱい臭いと湿ったカビ臭さとたぶん得体のしれない甘い匂いが入り混じったような感じか。ダメ臭漂いまくり (∋_∈)
致命的なネタバレはしてないと思うけどあんまり配慮もしてないから、そのつもりでよろしくです。あいや、結構ネタバレてるかも(私的記録なので許してくれ)
 
 
この映画に出てくる人はダメ人間ばかりな感じだけど、少なくとも仕事で部下を死なせたことがトラウマで飲んだくれてる達夫(綾野剛)は、ぐでんぐでんでだらしない風体をしていても元々は特殊技能ありの爆破作業員(しかも責任者?)だし、荷物の少ないアパートに住んではいるけど置いてあるのが布団じゃなくマットレスだとか、その枕元にCDとオーディオがあるとかダイニングテーブルがちょっと小洒落てるとか台所のタオルがきれいだったりとか、今が抜け殻でダメになってるだけっていうそういうキャラクターを上手く綾野剛が演じてた。だから千夏(池脇千鶴)に惹かれていって、彼女を救い出したいと思ってるのがダメ×ダメじゃないから安心できるというか。
綾野剛の達夫はずっと前髪長くて顔というか目がちゃんと見えない感じなのに、あるところですごくちゃんと見えるところがあって祖いうメリハリ演出的なものが上手いなとも思った。綾野剛はなんかやっぱり今最高に乗ってる俳優オーラあるね。
千夏も(池脇千鶴ってもう32歳なのね←綾野剛と同じ年)あんな家で一家を支えてるにしてもそんなに悲惨な感じがしないのはなんとなく本人に安定感があるからかしら。年齢考えるとちょっとだらしなく太ましい感じも役にハマってるというかもうまんまだし。ただそこでありがちなダメっぽいエロさをだすってだけじゃなくすれてないピュアな印象なのもいい。
底辺で生きる「愛を諦めた女」というキャッチコピーからして痛々しくはあるけど、彼女はバカには描かれてないから、抜け出したいけど抜け出せないあの状況がすごく気の毒に思える。
それとR15だけどその手の映画じゃないのにこんなにもガッツリ濡れ場がある映画は久しぶりに見たよ。高橋和也相手にしても綾野剛相手にしても池脇千鶴頑張りすぎって思ったw(さすがにちょっとあの露出度合いはびっくりした)
そして何より評判通り一番良かったのは、千夏の仮釈放中の弟・拓児の菅田将暉。すごい、最高にいい!綾野剛はもちろんいいけど、この映画は菅田くんを見る映画でした。彼はこういう役に限らず思ってるのより5割り増しで上を行ってくるよ、マジですごい。
千夏にしても拓児にしてもバカじゃないのは原作からしてそうなのかこの監督の役の設定がそうなのか役者たちの解釈がそうなのかはわかんないけど、雑でハチャメチャで落ち着きなく粗暴だけど、決してアタマが悪いわけではなくそれなりに空気読んで状況に合わせて振る舞ってたり抜け目がなかったり、何をやるべきかはちゃんとわかってその上でその場限りのハッチャケ方をする拓児にホントに救われる。山でとった野草を苗木っぽく仕立てて売るとかもキャラとして面白いし、とにかくパチンコの仕方、タバコの吸い方、自転車の乗り方、メシの食い方等々、何もかもがいい。
オレ的にはキャラがバカじゃないと見ててすごく安心できるしストレスたまらないってのもあるw
拓児が達夫と出会ったのはもう運命だったんじゃないかってくらい(いや姉ちゃんとくっつくって意味で)ラッキーだったと思うけど、拓児と達夫がすごい仲良いのがまた微笑ましいしあの二人のシーンは(いろいろあるけど)すごい好きw 拓児すげー可愛げがあっていい (・∀・)
 
以下↓ちょこっとネタバレっす。
 
途中事態が変わるときに変なフラグが立ってるんかと思ってドキドキしたけど、思い描くよくありがちな展開としての最悪なことにはならなくて本当に、本当〜に良かった。
中島が千夏を車に乗せたまま山の中に入っていった時はまさかと思ってドキドキしたけど(もしかしてミスリード狙い?)、和姦ですんでよかった(いや全然良くはないが)
それを知った拓児は中島を刺しに行くだろうなとは思ったけど、致命傷じゃなかったし運悪く他の人が巻き添えってこともなかったし、とにかく殺さなくて本当によかった。中島が、というよりあの田舎のコミュニティは最悪にゲスいとは思う。家族大事にするのが大変ならこの件で離婚すればいいのにあいつ。
千夏は、尊敬していた父親がああであんなことをしなきゃいけないくらいなら性欲抑える薬飲ませて早く逝かせてやればいいのにと思ったし、どっかで絞め殺すだろうなと思ってたけど、達夫が気がついて間に合ってよかった。本当によかった。早くそっちじゃないって気がついてーって思ってた (>_<)(そのために伏線としてあれがあったんだよね)
千夏はどうやってあそこから抜け出すことが出来るんだろうと思ったんだけど、そこまでやればそれはそれでってことか。家族を捨てられるか(施設とかさ)どうかも含めて、もういいいよって気はするがどうなんだろ。
ラストはキレイなんだけどあそこで終わられてもそれはさすがに観客に委ねすぎって気はするかな。いやあれでいいのかな。でもま、なんとなく明るい感じもあってよかった。
とにかくみんな幸せになって欲しいと思ったよ。拓児は出所が何年後かはわからないけど達夫たちは待っててあげればいいと思うよ。(もしかしたらもろもろ不起訴になる可能性はあるかな)そしてお父さんは気の毒だけどもうそろそろ死んだほうがいいと思うよ。そのほうが家族のためだよお願い…(;´Д`)
タイトルはどういう意味なんだろうと思ったけど、落ちるとこまで落ちた底辺での生活でだからこそ見える光があるってことかしら。達夫と千夏たち家族はまた違うとは思うけど、そういう人たちに対しての見方が優しいというか何とかしてあげたいという気持ちはわかるというか。
なんとなく粗筋だけ確認した原作よりは、このラストの雰囲気からいっても映画のほうが明るく希望があるようには感じるかな。
なんか感想、さくっと書くつもりが思ったより長くなっちゃったよ。
 
モントリオール世界映画祭では最優秀監督賞を受賞らしいし、次回のアカデミー賞外国語映画賞部門に出品されるらしいけど、確かに美しくちょっと外国映画っぽい感じはあるかな。あんまり邦画っぽい湿っぽさはないね。
それにしても綾野剛は毎回似たような役どころのわりにちゃんと毎回違うキャラになっててとにかくあの佇まいというか雰囲気が上手いというかイイね。いるだけでドラマになるというか。本当にいつの間にこのポジションにきたんだろうって感じよね。結構うっかりB級ホラーとかに出そうな雰囲気もあるけどそっちにいかなかったのはそれなりの戦略だったのかしら?つーかルパンの五ェ門はまた全然違うタイプなんだけど、あれも綾野剛だーって感じなのよねえ。とにかく仕事と役に恵まれてるよね ( *´∀ `* )
 
とりあえず目についたシネマトゥデイの記事も張っとく。

追加でライムスター宇多丸の映画評を見つけたんでこれも張っとく。

さらに追加。池脇千鶴の役が下品に見えないのがとてもいいんだけど、ちゃんとそこは気を使ってたみたい、インタ読むと。

これがアカデミー賞ノミネートに落ちてとても残念。
 
あと監督の呉美保さんって妻夫木と小西真奈美のCM、「東京ガスストーリー」撮った人なのね。あれかーw

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