そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

龍三と七人の子分たち

http://www.ryuzo7.jp
監督・脚本:北野武

 
北野武の映画は特に好きでも嫌いでもないけど特にこれといって見る理由もなかったんで(あとヤクザ映画好きじゃないから)たぶん殆ど見てません。全然見てないわけじゃないけどどれを見たって言えないくらいに見てないです。
でもこの映画は劇場予告見て、ヤクザ映画だけどネタ的に面白そうだったんで(あとスマスマのゲスト回見て)見なきゃと思って。
というわけでアウトレイジシリーズとかもまったく見てないんで、いつもの北野映画がどんなんだかイメージでしか知らないけど、今回のはとても面白かったです。
微妙にネタバレに触れてるかもだけど、肝心のことは言ってないと思う…よ。ブログの感想自体は自分メモだからある程度はカンベンしてくれw
 
ジジイヤクザの活躍というネタとしても面白いし、北野武というよりビートたけしのお笑いギャグ、ヤクザコントとしてちゃんと笑える面白さだった。
タイトル、劇中で「荒野の七人」とかいろいろ言ってたけどむしろ「白雪姫と七人の小人」だよなあ(笑)
そんな感じにヤクザギャグでちゃんと爆笑出来るし後味も悪くないんだけど、映画の方向性としては悪ふざけの本気度が高すぎて困惑(^_^;)どういう顔してこの映画を愉しめばいいかわからないのw
ぶっちゃけ、普通はスベるようなベタでありがちなヤクザネタのギャグが百発百中的にことごとく笑える。それに違和感があったんだけど、ああこれはビートたけしのギャグか!と思い至って途中から安心して楽しめるようになりました(笑)(何じゃそりゃ)
登場人物の細かい設定はすっ飛ばしてて、昔の仲間達はある意味出オチだし、どのシーンの笑いもシチュエーションギャグっぽいんだけど、そのヤクザあるあるネタ(ねーよ)を藤竜也近藤正臣たち元ヤクザのじいさんたちがカッコよく真面目にやってて、それがちゃんと映画の演出としてギャグになってる。
笑いとしてはヤクザネタだからかなりブラックなんだけど、ストーリー自体もヤクザOBのじいさんたちが現役暴走族成り上がり企業ヤクザを渡世の仁義がわかってないあいつらぶっ潰す!と真面目に立ち上がる話なのでかなり過激。
じいさんたちの元ヤクザとしてのリアリティと迫力がスゴいというか、やってることも発想もカタギの常識とまったく違う軸の常識で生きてて、よく考えたら普通に恐いし超迷惑。なんというか、この人たちとは相容れないとしか思えないし、こういう人たちとはご近所であっても関わり合いにはなりたくない、住んでる世界が違うとしかw むしろ龍三の家族とかよく耐えてたよな。焼き鳥とか酷えし。
でもその元ヤクザのじいさんたちがチャーミングでちょっと間抜けで愛嬌あって笑えるからすごい誤魔化される(笑)品川徹の早撃ちマックが京浜連合の事務所に行っておひけえなすってと仁義を切るとこの、ナンバー2とのボケツッコミが自然すぎておかしすぎるとかなw
彼らがなんでヤクザを辞めたのかその経緯はわからないけど、パンフのコメントにあるようにキャラとしてはヤクザというより昔の頑固職人に近いってのはなんとなくわかるかも。
でもま、たけし扮するマル暴の刑事がいうとおり、これって暴対法とかがある今のこの世の中、ちょっと昔の仲間が寄り集まって組作っちまいましたというノリだけで逮捕されるような生きづらい(オレたち一般人からしたらありがたい)世の中だからこそのアウトロー感というか。仁義切らなきゃいけない親分筋は代替わりして詐欺商法やってるとか世知辛すぎる。
じいさんたちにしても、若い時はバリバリでイケイケだったのに年寄りのじじいになると家族にも見放され社会の片隅でひっそり暮らさなきゃいけない哀しさ、ヤクザとしてはまだ現役でいけると思ってるのにご時世がそれを許さないという哀しさ。そんなじいさんたちが仁義もへったくれもない現代ヤクザをぶっ潰すという爽快感(しかも微妙w)
だけどどっちにしても「俺たちに明日なんかいらない!」というまさに老い先短い怖いものなしのジジイたちが起こすハチャメチャな(本人たちは真面目)大騒動は妙にユルくペーソスがあり、物悲しいけど爆笑という不思議な映画だった。
むしろ正気でこんなキチガイな映画を作るたけしは改めてスゲエw
 
藤竜也はあまりにも元ヤクザの親分が堂に入ってリアリティがあって、しかもカッコイイしチャーミングだし、女装もパンイチも似合いすぎる(笑)
近藤正臣にしても中尾彬品川徹樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭などの元ヤクザのじいさんたちキャラが立ちすぎてて説得力があるのはベテランのなせる技なのか。その年寄りっぷりは本気で心配になるレベルw でも正装で決めると格好良くピシっと決まってるのもまたスゲエ。
じいさん以外の若いのは特撮で見たことあるキャストばっかw(山口祥行、本宮泰風、川野直輝、清水富美加、特撮枠じゃないけど遠藤雄弥もろもろ)
しかしやっぱり安田顕はスゲエ。インテリヤクザ風、実はビビりキャラがハマりすぎてるw 特にあの金属バットを振り下ろすとことか狂気じみてて怖いくらい。さすがはヤスケンさんだ。
たけしもこれくらいのほうが好きかなあ。この刑事さんみたいな役は昔気質な感じでカッコイイよ。
まああんまストーリーのネタバレは言わないけど(これだけ語ったあとですが)笑えるのは確か。ただ笑っていいのかどうしよう…みたいなとこはある、オレはあった。
なのに客の(オレより年上っぽい)おじさんおばさんたちは普通に大笑い大爆笑してるんだけど、指詰めネタとかボコられるとか、ビルにセスナ機突っ込ませる、バス乗っ取って死体つれてカーチェイスみたいな暴力と表裏一体なネタで普通に大ウケしてるのがまたある意味オソロシイ(^_^;)
だって龍三親分たちの親分ぎめ加点ルーレットの内容とか、組作ったからシノギする、飲食店から用心棒代として金巻き上げるとか、あの本気度高いヤクザ描写が気にならないって逆にすごいわー(^_^;)
まあとにかく、どう着地するんだろうこの映画は…と思ってたら予想外の暴力的かつ間抜けっぽいカーチェイスの果ての何もかもなぎ倒して「全員逮捕!」という収束。その「祭りは終わった感」がちょっとさみしいなあと思い、名コンビ、龍三とマサの年寄りジョーク(いやたぶん本気w)の掛け合いで締め。この二人のコンビは最初から最後までとてもいいw
基本的に映画は面白いし笑えるけど、その元気すぎる老人ギャグをどう受け取っていいのかわかんないのはオレがまだ若いからかも。龍三親分たちはそれを自虐ネタと思って言ってるわけでもないから余計に困惑するってことなんだろうけど(^_^;)
まあ気軽に楽しめるヤクザコント映画(いい意味で)でとても面白かったです。