そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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ラスト・ナイツ

http://lastknights.jp
監督:紀里谷和明 脚本:マイケル・コニーベス、ドブ・サスマン 原案:忠臣蔵

 
見る直前に忠臣蔵だと知ったんで良かったけど、そうでなければ何じゃこりゃっていうとこだった。映像は相変わらずポエティックで美しいけど話は非常にビミョー。
映画自体はまんま洋画っぽくて一見ちゃんとした歴史ファンタジーっぽいんだけど、リアリティも演出もイマイチ。起承転結の起の部分でやたらセリフが多くて喋りまくってるんだけど頭に全然はいらなくて、その割に設定もあまり説明されてなくてよくわからないというのはいかがなものか。てか説明以前にもうちょっとうまい世界観構築はできんかったもんだろか。無国籍感を出すために本当に人種を混ぜてみたんだろうけど失敗したって感じ?思うにフィクションにおいて無国籍感を出すのは人種ビジュアルじゃないと思うわー。逆にとても違和感。
最後の討ち入りに相当する城への潜入アクションは派手でいいんだけど、そこまでのストーリーに情緒的な感情描写があまりないんでどこに共感していいのやら。(ネタバレ以降で説明)
面白いか面白くないかでいえば何となくまとまってはいるんだけど全体にはつまらないという感想。でも隣で見てたおっさんたちには泣けるくらいにグッときたっぽい。
まあ最後の討ち入りとその顛末だけでいうならまあグッとくるのはわからんでもない。でも忠臣蔵にそんなに思い入れのないオレでもあの物語の肝は、家の名誉を守るために立ち上がった侍(謀反人)たちが違法な仇討を成し遂げ最後にみんながその罪を受け入れ潔く死んでいったことにあると思ってんですが、これはむしろ逆。大石内蔵助は裁かれたけど他のみんなは助かった、良かったよかったというラストなんだもん。みんな自害なんて酷い、そうじゃないほうがいいと思う人や日本以外の人たちにはそのほうが納得できるのかもしれないけどさ。そこは好みの問題だけど、そういう意味でも「47RONIN」のほうが忠臣蔵の様式美的に潔いと思うよ。
主役のライデン隊長をやってたクライヴ・オーウェンはカッコ良かった!途中彼が自暴自棄になってるところ、忠臣蔵だと思ってても本当にもうやる気がなくなったのかと思ってた。だから余計に計画決行って時の豹変ぶりとかあの表情(目つき)がだんだん鋭くなっていくところとか(あれをずっと追いかけるカメラワークは良かった)気持ち的には盛り上がった。しかしその後の活躍が副長と大差ないのはどうなんだろ?
そういう意味で敵の大臣の護衛をやってる伊原剛志のイトーも、キャラが良くわからないしキャスティング的にもあの役は伊原さんかなあ?とちょっと納得しかねる。もっとハマる人はいるような気がするよ。
全体にはとにかく顔アップが多いのと一言しゃべるごとにカット割りする演出は好きじゃないけど、映像が美しいってことくらいで映画としてはつまんない感じでした。
ロケは全編チェコらしく、そういう意味では画面はとても美しかったよ。色味も渋くてよし。衣装も真っ黒でカッコイイ。
以下、なぜつまんなかったのかってことをもうちょっとだけ突っ込みたいと思います。
 
 
 
忠臣蔵ってことでどうしても「47RONIN」と比べるけど、見るからにキワモノだけど忠臣蔵的様式美としてはありで世界観が作りこまれていた「47RONIN」と比べると、こっちは一見普通の歴史ものに見えるけど実際は相当キワモノだし、世間からすればどっちもどっちな内容ですがオレは「47RONIN」の方が好きです。
というかね、この映画の世界観がまったくわからないんだよ。
オレの感覚としては作品自体がファンタジー設定なのは全然いいんだけど、作品イメージ的に雪国の帝国なのに皇帝がアラブ人種で家臣には黒人や黒髪アジア人が多く(もちろん欧米人もいるけど)、ビジュアル的なことかもしれないけど全体に肌も髪も黒いのがとても違和感。ファンタジーにしてもなんか雪国とミスマッチすぎてそこでもうリアリティを感じられないんだよね。
たぶんビジュアルとして美しいから(あと忠臣蔵の雪の討ち入りのイメージ)雪なんだろうけど、だったら普通の国の冬の話でええやん。(あとみんな寒そうだよ)
そして思った以上に街が大きすぎてどういう暮らしぶりなのかさっぱりわからないから、重税にあえぐ庶民って感じでもないしそんな描写殆どないし。
というかどうして国王じゃなく皇帝、しかもさらに首相もいるんだろって思ったんだけど(そこからして気になるんだよ)おそらく皇帝と諸侯(領主)の関係はまんま江戸幕府将軍様と藩主ってことかなあ。
さらにその皇帝があまりにお飾りなのが気になるんだよね。吉良上野介にあたるギザ・モット大臣(→首相)が勝手に領主たちに賄賂を要求してそれを国王に回さず自分で貯めてるっぽいのも気になるというか、だって国の財産にしては皇帝ノータッチっぽいのが意味不明。だって家臣が勝手に私腹を肥やす(=権力)って普通ありえないじゃん。というかなんで皇帝は大臣があんな難攻不落なでかい城造るのを放置してんのか。バカなの?というかあの作ってる城ってもともとバルトーク卿の城を改修してんの?そこら辺もまったくよくわかんなかった。というかあいつらの地理的な位置関係がまったくわからないし。
全体の話としてどう考えてもあの国の皇帝が無能だし、なぜ大臣が賄賂もらって富を得るのを放置してるのか謎としか思えないし、前首相(途中でお亡くなりに)はマトモなこと言ってるけど皇帝は全く決断してないし、あの国の行政がなんなのって話だよ。
てことでストーリー展開としてもなんだか納得できなかったのは、つまり主人公のライデン隊長が使える領主・バルトーク卿は騎士の名誉のために立ち上がったんであって国民の重税のためじゃなく、諸侯に対する賄賂の要求を告発したから大臣の怒りをかったってことで、だからライデンたちはギザ・モットに対して仇討に行くんだけどそれが英雄的な行為だってのがよくわからないんだよね。
しかもこの事件の最終的な顛末、皇帝の判断として、彼らを罪に問わなければ一般大衆が英雄としてそれを支持する(かも)、だからそのほうが国にとってはいいって、どっかにそんな民衆の描写あったー?
そもそも税はそれなり重くても(なんで最後皇帝が取ってつけたように税を軽くするっていうのか>そんな話じゃなかった)それに対しての民衆の不平不満とか特に描かれてなく、大臣は領主たちから吸い上げた賄賂で贅沢して妻にDV、ペットの犬も殺すような歪んだ性格ってことだけどそれは民衆には関係ないじゃん?だからバルトーク卿の告発もあくまで騎士本分から逸脱したってだけで、しかも大臣の賄賂要求の審議はスルーで怪我させたってことについても公然と捌きが行われたわけでもなく(これ皇帝も酷いよな)部下に処刑させるってどんな野蛮な帝国なんだ?としか思わんのよ。
そこからしてあの国のリアリティが???というか。賄賂を要求するダメな大臣を放置して、それ以上にその大臣のいうことをなぜか鵜呑みにする皇帝の方がもっとダメだとしか。
だからバルトーク卿が公然とした賄賂を否定して告発することでお家お取り潰しになったことを民衆が可哀想だという描写がない(どう思っているのかわからない)し、ライデン隊長たちの怒りが騎士のメンツというより捌きの理不尽さと自分がさせられたことへの怒りに対してだし、そうなるとそもそも一番悪いのは大臣じゃなく皇帝だし、だから仇討が正当な義憤なのかどうかもわからない(お話として民衆が彼らを支持するかどうかに関わる)…などなど、感情的にどこに乗っていいのかまったくわからないんだよね。
忠臣蔵ってそんな話じゃなかったよね?あれはこちら(主人公側)に否がない(もしくはどっちもどっち)なのに一方的に落ち度を責められて領主が没落(→可哀想)、その捌きに対して納得出来ない、理不尽であるから仇討ちを画策(→怒り)、やった事は侍としては立派だけど社会的には犯罪である(→同情)ってことだから、そういうとこが曖昧だとダメじゃんとしか。
ただまあこの映画の場合そういう様式美よりもどちらかというとライデン隊長の気持ちとして納得出来ない、騎士としての誇りのために仇討ちをするっていうとこはいいんだけど、クライマックスまではそのライデン隊長がまったくそういう気配を見せずに、ついでに言うなら他の者たちもはっきりと仇討の計画を立てた上で準備してると明言されてないから、いつ決行なのか、それまでどれくらい我慢しなきゃいけないのかっていう過程の緊張感を楽しむ話じゃないのもカタルシスが感じられない理由かなあ。
討ち入り計画がバレるかもしれないというハラハラ感もないし、なんだろ、アクションシーンはいいのにイマイチ盛り上がらないんだよね。
あとあんな大臣に使える護衛のイトーだけど、オレの感覚だと(あと伊原さんのインタ読んで思ったけど)非道な大臣だけど騎士として使えなければならないジレンマを感じつつ仕事と割り切りながらも騎士の誇りとしてライデンたちへは心情の理解があるからこそ対決する時にやるせなさがあると思うんだけどさ。彼本人が真っ当であるのはともかく(バルトークの家族の扱いで兵を諌めたり)まったくそんな描写じゃなかったよね。というかなぜあんな大臣に仕えているのか不思議。何か弱みでも握られてるのか恩義があるのかも不明。いっそ最終的に裏切ればよかったのにw
そのへんで騎士の精神ってのがなんかはっきりしなかったことと、大臣の非道があの社会としても良くないことだってはっきり言われてないのがスッキリしなかった。
そんなこんなでとにかくいろいろリアリティに欠けるんだよ…(妖術使いが出てくるような「47RONIN」よりもだ)
でも本当に主役のクライブ・オーウェンは良かった。
討ち入りアクションは、迷路のシーンで敵兵とかち合いそうになるとそれを先に潜入してる味方が上から弓矢で知らせるとか面白かったし、仕込んどいた盾を持ってくとこで300!300!って思ったけどw、あの一番若いイケメン少年が格子を上げるとこで頑張ったけどやられちゃったのはちょっとホロリとしそうになった。でも最終的に47人で打ち入ったのか何人死んだのかわからなかったのはいいのかなあ?残ったのは20人だよね(数えた)
ところでパンフちら見したらバルトーク卿のモーガン・フリーマンって、撮影に6日しか参加してないって、マジか?そんなレベルじゃなく出番あるんですけど!ビックリ。