そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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シン・ゴジラ

http://shin-godzilla.jp
監督:庵野秀明(総監督)、樋口真嗣(監督・特技監督) 脚本:庵野秀明

 
ゴジラ凄かった!堪能した!
怪獣デザスタームービーだと聞いていたけどまさにそんな感じ。
基本は怪獣が東京に現れた、政府はどう対応するのかということを細かく描いたシュミレーションドラマに近いんじゃないかな。余計な人間ドラマとかはないのである意味とてもシンプル。
綿密な取材によるリアルさはあるけど見せ方含めてドキュメンタリー風にならず、完全に庵野監督のフィルターを通した怪獣モノのフィクションになってた。
ただ全体にものすごい偏執的な取材に基づいたリアルさを構築してるはずだけど、細かい突っ込みどころはたくさんあり。
でもオレは全体的には満足だし庵野ゴジラを堪能したよ。(もちろんギャレゴジも好きだし、そもそも方向性が違うので良し悪しという意味では比べるものではないのだ)
ハリウッドと比べると予算がないのはわかるし、日本は一般受けというより作家性(監督性)重視な作りになるのが邦画の常だと思うけど、世界基準かどうかはともかくこれは日本特撮の正しい進化系、日本でしか作れない映画だったと思う。
オレ『巨神兵東京に現わる』についてはスタッフの言動等含めて若干批判的だったけど、今回はゴジラ自体はモーションキャプチャーのCGだけどミニチュア特撮もふんだんに駆使してるし、あの時点での特撮技術を見せたかった巨神兵…と比べてもCGとの融合が上手くなってて違和感はあまりなかったと感じたよ。(特に車やボートの破壊シーンで多少ミニチュア感があるのはご愛嬌レベル。重力はコントロールできないから…)
むしろ自衛隊が協力してるはずの実機撮影(だよね?)のほうがミニチュアっぽく見えるとこもあったりw あれどの程度ロケなんだろ。
というかこの『シン・ゴジラ』が映画として成立してるのは、監督以下関わった人たちのオタクの狂気じみた執念と拘りかと。その一点においては素直にすごいと思うわ。
もちろんギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA』だって、ものすごくこだわってると思うけど、やっぱりこの映画を成り立たせてるのは本家本元日本のゴジラを作るぞという狂気の集合意思だと思う。そしてやっぱり庵野監督の手腕と才能はすごいと再確認。
あ、TOHO新宿のTCXで観たんだけど、最後拍手が結構あった。オレも拍手まではしないけど、IMAXでもう一回くらい観たいなあとは思ってます。
以下ネタバレ。細かいとこはともかくデカイネタバレがありますよ。
ネタバレがないほうが文脈的な驚きがあるとは思うので見るつもりならこの先は読まないほうがいいかも。
一応パンフもざっと目を通したのでそれ前提で。
 
 
 
キャストが多いというのを売りにしてるけど、メインは長谷川博己竹野内豊石原さとみの3人。
一応防災対策本部(だっけ)のメンツはみんなそれなり重要だけど、ほぼ長谷川博己の矢口がメインでそこに石原さとみのカヨコが絡み、竹野内の赤坂がちょこちょこ出てくる感じ?
自衛隊統合幕僚長國村隼の「仕事ですから」はメチャカッコいいし、まさか農林水産大臣から総理代理になって(あの欠席がまさかの布石だったとはw)ぶちぶちと文句言いながらやることやって最後にわかってる感出してカッコよくおいしいとこもっていく平泉成とかサイコーw
そして石原さとみは全編にわたってエロカッコよくてステキすぎる目の保養 (*´д`)=3
何となくだけど、進撃にはいた春馬とかこういうのにいそうな綾野剛小栗旬やジャニーズ勢がいないのが寂しい感じはあるけど、キャスティングの傾向として筋は通ってる感じ。石原さとみもギリギリよねw これはこれで。
小出くんや三浦貴大斎藤工あたりまではモブでもチェックできたけど、前田敦子と森靖はどこにいたかわかんなかったなー(別の意味で目立ってしまう片桐はいりとかw)
 
ゴジラ。とにかくデカいし怖い。畏れ多い。尻尾ちょー長い。
中に入ってるのは野村萬斎。直前にニュースになったけど言われなかったらどこにいたんだろうと思うとこだった。w
意表を突かれたのは最初の奇妙な怪獣。もちろん最初からゴジラが出てくるとは思ってなかったけど、(パンフによれば深海魚のラブカをモデルにしたらしい)てっきりコイツが暴れるのをゴジラがやっつけに来るんだと思ってましたよ、ええ。
あれ妙に魚というより芋虫っぽくて(手が)リアルで気持ち悪いと思ったんだけど、同時にアレをやってるのが野村萬斎だとわかってるのでその演技のほうが気になって…(苦笑)
というより、そいつが這ってるうちに急に姿が変わり始め、赤い二足歩行の生物っぽいものになってきたとこで、ええ?まさかコイツが…ゴジラ?という驚き。マジでそうか、それありなのかと驚いた。
この前半のパニック描写、政府も人々も何が起こってるのか把握できず、むしろネットのSNSYouTubeの動画で間接的に状況を知るという描写で軽くパニックものムービーの様相が面白かった。
そして結論ありきな会議の繰り返しと何を決めるにも承認が必要で突発的な事態に対処しきれてない政府をかなり皮肉っててワロタw
展開自体はその後ゴジラが鎌倉に(監督が住んでるとこだから?)再上陸してからが本番。
矢口がメインで動き始めてから政府や自衛隊の動き中心に見せていくというのも上手い。(この辺は流石にネタバレはやめとくw まあそうなるよね…って展開)
そして武蔵小杉の高層タワー群をバックにした100メートル超のゴジラが程よい巨大感があってメチャカッコイイ!ちなみに武蔵小杉は仕事でちょこちょこ通ってるんで丸子橋付近の多摩川の河川敷とかわりと実感的。
巷でもエヴァエヴァ言われてるけど、前半の会議のシーンは必ずエヴァのBGMかかるし(アレンジ違い合わせて4回も!)いろいろ脳内が勝手にヤシマ作戦に変換されてしまうし、そこはもうどうしようもないかもw
でもむしろその演出がアニメ的でテンポ良くて逆に良かった。
全体には庵野監督のアニメ的なカット割りやテンポはいい意味でアニメっぽいかなあ。会議のシーンも退屈にならず、顔アップやキメ台詞的なものも多いし適度にエンタメ感あり。
あと役職名テロップとか早口とか情報量多くてという声もあるけど、オレはその辺はもうそういうお約束演出の描写だと思って全部流してたんで気にならなかったかな。セリフと映像で語られる状況だけ掴んでればOKみたいな?
その辺も庵野監督やっぱり上手い。とにかく話の流れが体感的に気持ちいいから中だるみもしないし退屈もしない。実写だとアニメ的なスピード感って難しいと思うんだけど、カットの切り替えが上手いのか見せ方が上手いのか、体感的にはアニメのスピード感なんだよね。
そして都心に入ったゴジラ、とにかく怖いしカッコイイ。
ゴジラの口はまさかああ割れるとは…というのも結構ショッキングだったけど、紫に光るとか火炎が収束してレーザーになるとか背びれビームとかとにかく神がかっててカッコイイ。
つーか、地面に向かって火炎吐いたけど、あれ地下に避難した人たち大丈夫なのかなあ?温度的に地下鉄構内くらいじゃ絶対無事じゃない気がするんだけど。蒸し焼きにならね?(そこすごく気になった)
あのシーン、鷺巣詩郎のアリアっぽい音楽がまたピッタリとハマりすぎてて、都市部を蹂躙してるはずのゴジラにむしろ悲壮感を感じるし、切ない気分になるし、米軍の攻撃とか無慈悲すぎて、これゴジラ倒していいのか…?と思ってしまうというか。
この時点でこんな完全生物どう倒すべきなのかもさっぱりわからないけど。(あの作戦が妥当かどうかはまた別の話で)
遠景のゴジラとにかくカッコイイ。ものすごくジブリ感と巨神兵感(笑)(思い出すと頭の中でラピュタナウシカの音楽が鳴るくらい)
 
見せ方的に不満があるのは、昔の怪獣映画を踏襲してるんだろうけど全体に空撮(報道的な意味でも)の映像がなかったのはとても違和感。
いまだと普通に報道ヘリとか飛ばすだろうに。(官邸で見てる映像には空撮はあった)
そこでドキュメンタリー感が抑えられてるのもあるけど、オレはもうちょっと情報欲しい(見たい)と思ってちょっとイラッとしたかな。
あと最後のヤシオリ作戦で矢口たちのいる場所から攻撃されるゴジラか見えてる映像がなかったこと。見えないのかと思ったら最後のカヨコと矢口の話すシーンでははっきり見えてるし、その映像を入れない意味が分からない。ヤシオリ作戦時の時の矢口たち目線のゴジラをスゴく見たかったのになあ。なかったよね?
逆に自衛隊の描き方は良かった。
装備面でも描写でも攻撃でも確かに何かリアルなんだろうなと感じられたし。
丸子橋付近のゴジラを富士の裾野から攻撃っての、テロップ見てええっと思ったけどパンフ見たらありみたいだし。(70キロの長距離狙撃www)
避難中の一般人がいると攻撃しないとか(そこはやっぱりしちゃダメだよね)、多摩川突破されたあとはもうできることはないといって民間人救助に尽力するとか、本当にグッときた。
 
特に解釈みたいな話は今回はしないけど、2つだけ。
以下ほんとにネタバレです。
 
ヤシオリ作戦〉のヤシオリってなんだろうと思ってたけど、須佐之男の八岐の大蛇退治の時に使った酒が〈八塩折の酒〉だってあとで知りましたw(ヤシオリ作戦の司令所、星形の抜きがカワイイ壁の建物は科学技術館のようです)
ただ倒れたゴジラにストローチューチューみたいな感じはギャグなのかなーと。伊福部サウンドと相まってそこはなんだかコント感が(笑)
あと新幹線爆弾に無人在来線爆弾とかもw 大真面目にそういうの突っ込んでくるとこはいいねw
そして最後のゴジラの尻尾の先の謎。
途中で間准教授がゴジラは単性生殖で増える完全生物で進化しているって言ってたから、当然進化の先は人間だろうし、見るからに怪獣人間に進化しかかってると思ったんだけど。というかあれ、まるきり人間を生やしてるアダムみたいだったしw
ちらっとネットで見かけたネタで、あれは牧教授絡みだという話も見かけたんで余計に腑に落ちたけど。(参考→http://fusetter.com/tw/Np5tg
ボートの件は何もオチがついてないってことからも、あの尻尾は群体の怪獣人間が出てきてるのかと思ったんだけど、その根拠として人間の遺伝子が必要ならそれしかないかと。(あとパンフの人間のパーツを入れこむデザインって話)
揃えた靴を見るにどう考えても牧教授は自殺だけど、その部分については想像の余地として描かなかっただけだろうし、キッカケとして海で入水自殺した牧教授を食べた深海鮫が人間のDNDを取り込んだ結果としてゴジラに進化したのはありかも…と。
まあそこで牧教授の怨念や問題意識がゴジラを意味もなく首都、しかも永田町に向かわせ、しかも結局自分からは攻撃してないということを考えると何らかの意思の痕跡くらいはあったのかなと考えてもいいような。(フィクションだし)
もっといえば、ゴジラの中の人が野村萬斎なのも人間の遺伝子を持ってる描写だと言われたらそれはそれで納得するよ。
最初樋口監督繋がりはあるとしても(のぼうの城)そういう意味でなくなぜゴジラのスーアクを野村萬斎にやってもらおうと思ったのか?というのがあったんで、監督が人間ぽい要素を取り入れた動きとして第2形態ゴジラを見せたいと思ったんならそれは正しいのかも…と思ったり。
関係ないけどゴジラがビルの残骸に頭乗せてるのとか、放射能吐くときの口を開けた感じとかがすごく猫っぽく見えたw
 
ともかく、シンゴジラで改めて思ったのは、庵野監督の作品が作品自体への興味で長く引っ張れるのはいい意味で隙間があって解釈の余裕があるからだよな。
その理由は対象に対しての想像を絶するオタク的理解の深さだろうし、ゴジラのデザイン上のコダワリ(パンフにあった話)、目とか皮膚感とかその他もろもろの全部が正しいかどうかはわからないけど、一見ワケわからなく思えるけどいつかは正しい解釈に行き着くかもしれないという安心感というか。
そこに見る人がハマって引きずられて夢中になるんだなあと。
そういう意味でも今日本でゴジラ映画をやるに庵野監督ほどふさわしい人材はいないよなーってことでひとまず締めるです。