そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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レッドタートル ある島の物語

http://red-turtle.jp/sp/index.html
監督・原作:マイケル・デュドク・ドゥ・ビット 脚本:パスカル・フェラン プロデューサー:鈴木敏夫

 

2000年に発表した短編「岸辺のふたり」でアカデミー短編アニメーション賞を受賞したオランダのマイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督が、8年の歳月をかけて完成させた初長編作品で、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で特別賞を受賞。スタジオジブリが、同社としては初となる海外作家の映画製作に参加し、高畑勲監督がアーティステックプロデューサーとして、シナリオや絵コンテ作りなどに関わっている。嵐で荒れ狂う海に放り出された男が、九死に一生を得て無人島に漂着する。男は島からの脱出を試みるが、不思議な力で何度も島に引き戻されてしまう。そんな絶望状況の中、男の前にひとりの女が現れ……。

 
プロデューサーは鈴木さんだけど、作品を監修したのは高畑勲で、いかにも高畑さんが好きそうなちょっと難解な生と死の物語という気はする。
あと全編セリフらしいセリフもないし。
映像は素晴らしくて、こういう単純な絵や美しい色味はヨーロッパのバンドデシネ系のイラストが好きなら見てるだけでとても心地よいと思う。
自然表現は言わずもがな、冒頭の服が海風にはためく様があまりにもリアルで震えたね。(実写なら当たり前のことなのに)
相方は退屈だと言ってたけど、これはこれでいい話…だとは思う。最後のシーンでオレは泣けたし。
結局生き物はただ生きて死んでいくだけの存在なのか…という哲学的な問いかけ?だとすればまあこれでいいのかも。
ジブリ博でレッドタートルのコーナーにゴーギャンのあの有名な絵画、『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』があったんだけど、この映画のコピーは『どこから来たのか どこへ行くのか いのちは?』だから、ゴーギャンのそれを意識してるのよね。
ただ1時間半は長いかなあ。この内容だと1時間でも十分かと思うな。
あと津波表現があるのでそういうのがダメな人は気をつけたほうがいいかも。
厳密にいえばジブリ作品ではないんだけど、公開1週間経ってない祝日(の夕方回だけど)にガラガラなのは… 配給会社が入れ込みすぎなのか、作品の傾向考えたらこんなもんなのかどうか。
だったら最初から1時間で作っといて特別興行1200円くらいでやればよかったのにとは思うなあ。
以下ネタバレで。
 
 
これが現実ではなくファンタジーで(フィクションってことではなく)、ぶっちゃけ言ってしまえば〈胡蝶の夢〉だとしてもこれはこれでよかった。
ネタからして人魚姫的な雰囲気もあるけど、たぶんもっとプリミティブな、南方の伝承にあるような異種族婚の寓話で、多分あの二人の息子は南の島の民族起源の祖になった的な感じかと。
オレが思うにはこれがそういう話だとしても、これは主人公の男の見た夢ではなくあのカメの夢じゃないかと思った。セリフがないってのも、カメが出てきてからの男の食事の描写がないってことも、生活してる風なことがまったくないおとぎ話のような話だってこともだけど。
人間目線なら普通は独り言でも喋るし、子供には言葉を教えるよね。
でも言葉を発しないことで逆に彼が何人だかもわからないし(着てるものは洋服なんだけど)、わからないからこそ普遍的な物語になるのかなあと。そもそも相手は海ガメだし。
そう、これって〈おとぎ話〉なんだよね。
さっきも言ったけど生き物はみなただ生きて死ぬだけで、それはつまり胡蝶の夢と同じことだから、彼がどこから来たのかということすら問題ではないし、それまでどういう人間だったのかわからないけど、最後に愛する人の横で生を全うして死ぬことができたなら、生き物としてそれはとて幸せなことじゃないかなあと。
そこまで考えてみてたわけじゃないけど、なんか最後に泣けたのはそんなとこかなあ。
とりあえずわかりやすいとこでいうとカニが可愛かったw カニいいよw