そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

エクス・マキナ

http://www.exmachina-movie.jp
監督・脚本:アレックス・ガーランド

 

28日後...」「わたしを離さないで」の脚本家として知られるアレックス・ガーランドが映画初監督を務め、美しい女性の姿をもった人工知能プログラマーの心理戦を描いたSFスリラー。第88回アカデミー賞脚本賞と視覚効果賞にノミネートされ、視覚効果賞を受賞した。
世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に滞在するチャンスを得る。しかし、人里離れた別荘を訪ねてみると、そこで待っていたのは女性型ロボットのエヴァだった。ケイレブはそこで、エヴァに搭載されるという人工知能の不可思議な実験に協力することになるが……。(「映画.com」より)

 
公開時に見ようかどうしようか迷ってて見なかったんでBDで。(というか相方が借りてきた)結構な密室SFスリラーでした。
低予算らしいけど全然そう見えない映像美。アラスカの別荘(といいつつロケ地はノルウェーらしい)が美しいし、やっぱりセンスなのかねえ。まあセンスってもアカデミー賞でマッドマックスを抑えて視覚効果賞取るようなセンスなのでやっぱり予算のあるなしの問題じゃないような気もw
話はSFとしてはありがちな感じだけど、監督・脚本のアレックス・ガーランドは「私を離さないで」の監督のほか、デカプリオ主演の「ザ・ビーチ」の原作の人だそうで、言われてみればなるほどと。(私を〜の方は見てないけどちょっと興味出た)
登場人物もほとんどがメインの3人(+1人は話には関わってないので)で、オスカー・アイザック(ネイサン)は「スター・ウォーズ フォースの覚醒」でポー・ダメロンや「X-MEN:アポカリプス」のアポカリプスだし(全然わかんなかった!)、ドーナル・グリーソン(ケイレブ)も同じくフォース〜でハックス将軍やってた人らしいし(全然わかんなかった!)、ロボットのエヴァ役のアリシア・ビカンダーは「コードネームUNCLE」のヒロイン、ギャビーの子だった!(全然気がつかなんだ!)もう一人の美しいロボットのソノヤ・ミズノユニクロの広告とかにも出てるらしい。日本人寄りのハーフで美しいっす。*1

話は密室で起こる人間関係と悲劇的結末、硬質な雰囲気の映像美はとても近未来SFな感じで良かった。
エヴァの透けるボディは昔流行った空山基のセクシーロボットを今風にアレンジした感じで相当エロセクシー。それが広大な自然の中にある落水荘みたいな別荘の風景とマッチしてて素晴らしく美しい。別荘がとにかく美しい。(上のリンク先にもあるけどジュヴェ・ランドスケープ・ホテルというとこらしい *2
人工知能を突き詰めていくことで人間性を問う話だった。チューリングテストの話とか出てくるし。(ブレードランナーレプリカントのテストのあれ)
以下ややネタバレ。
 
 
検索エンジンをAIにしたロボットの人格はどうなるのか。
限りなく人間に近づいても人間そのものじゃないし、むしろあらゆる人間の集合知に近いものでしかない(と思うんだが)というのは果たして「人格」なんだろうか?
エヴァは目的のためならどこまでやるのか、普通ロボットならロボット三原則みたいなもので縛られるべきだけど、昨今のネットの世界を脳みそ替わりに使うことは自分がロボットだと思わなくなる可能性もあるわけで、それを指摘したケイレブがむしろ自分をも疑い始めるし。
というかほんの6日くらいでそうなるのかと思わんでもないけど、寂しいオタク青年があまりにも自分好みの女性(ロボットだけど)を目の前にしてると浮かれてしまうのは仕方ないのか。
そして人間を信じるのかロボットを信じるのか迷ったあげく、致命的なミスをしてしまうのが人間なのだとすると、たぶんロボットは迷わないしそれがロボットである所以なのかと。
人を殺すことに躊躇しないことよりも(一応自分の命と天秤にかけてるわけだし)、最後にケイレブのことを一顧だにしないエヴァが何を考えてるのかまったくわからなくて怖いよ。
そして何よりいいたいのが、あれだけのシステムを作ってるのに別荘=研究所に他に誰も人がいないとか、いざというときのためのバックアップシステムや警備システムがないというのはどういうことかと。アホすぎるとしか言いようがないけど、こういうステキな近未来SFでそこに突っ込むのは野暮かと思うので、これはこれでいいのだ。
そしていくら全世界の検索システムを利用できても、たぶんこのロボットに関することはあの社長だけしかしらないと思うんだよね。つまりオフライン情報じゃないのかなあ。それとも誰か天才を見つけてそそのかして進化したりするのかな。それは別の話か。

人間社会に放たれたエヴァはこれからどうするのか、メンテナンスとかいろいろあると思うんだけど。そもそも本当に人間と見分けがつかないものなのか?動きが正確すぎたりソツがなさすぎると人は怪しいと思うものだけど、でも全世界のネット検索の知識で嘘を付かれたらとてもじゃないけど人は太刀打ち出来ないかもしれない。それはもしかして神に等しくないか?
人工知能の可能性の一つとしてあまりにも人間に似すぎて自分がロボットだと思わなくなるロボットと言うのはありうる話だけど、じゃあ人間とロボットを区別するのは感情なのかと言ったらどうなんだろう。自分の情動は自分でわかってるけど、他人から見てそれが本当なのか嘘なのか分からなければ感情は人間であるという証拠にならないわけだし。ロボットのAIからしたら単に確率やデータの集合知の結果かも知れないよな。
そして自分を作ったものが人間ではなく神だと思うこともあるなら、いつか人間の真似をする必要もなくなるんじゃないのかなあ。そしたら人間は滅ぼされるかもしれないな。スカイネットターミネーターみたいに。
「わたしを離さないで」(ドラマのほうしか見てないけど)も人間性とは何かを考えた作品だと思うので、非人間の人間性を突き詰めることで人間とは何なのかが見えてくるというのがとてもSF的で哲学的だなあと思ったです。
そういや似たようなネタとして「アンドリューNDR114」というのもあるけど、これはネット以前のAIの話だとすると昔は牧歌的だと言わざるをえないのかなあ。

*1:美しいけど透けてて怖い→『エクス・マキナ』にインスパイアされてケミカル・ブラザーズがベックとコラボして製作した『ワイド・オープン』のミュージック・ビデオに、エヴァを連想させるメッシュのボディで美しいダンスを披露している。The Chemical Brothers - Wide Open ft. Beck https://youtu.be/BC2dRkm8ATU

*2:自分メモの参考→Jensen & Skodvin http://jsa.no/filter/builtノルウェーの自然と建築、そしてA.I.(映画『エクス・マキナ』) http://www.hokuouzakka.com/info/568