そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

Dr.パルナサスの鏡

http://www.parnassus.jp/

最近のは見てないんだけど(つか制作中止多すぎ)オレはテリー・ギリアムは好きだし、画面的にもティム・バートンよりちょっとだけ趣味がいいってとこが好みなんだけど、それでもこの映画は正直面白かったとは言い難いし、ギリアム監督作が好きか、こういうのが好きって人以外にはあんまりお勧めはしないなあ。評価としてはイマイチ。
一番問題なのは、そのファンタジーセンス、物語センスがほぼ20年前の「バロン」の時からまったく変わってないってのが問題だと思うんだよ。「こういう世界を描きたい」という欲求はあっても、それによって「どういう物語を描きたいのか」ってものが感じられなかったように思うのが残念。むろんこれがヒース・レジャーの死によって当初の思惑とちょっとだけ外れてヒースのための映画になったこと自体は、しょうがないというか別に構わないんだけど、そういうレベルの問題じゃないというか。
ストーリー的には、パルナサス博士の物語世界とヒース演じる胡散くさい殺されかけた慈善事業家の物語をリンクさせてくれてればお話的にはちゃんとまとまると思うんだけど、そこに何もないしモンティ・パイソン的な風刺や皮肉もそこまで描いてるわけでもなく、むしろ意味のなさだけが笑えないネタとして悪目立ちしてる様な印象。
何を目当てに来たのか(今のテリー・ギリアム映画にそんなに一般人が入ると思えないんで主に俳優、つかジョニデ‥‥だろうけど)観客のほとんどが帰りに口々に「意味わかんなかった」って呟いてたけど、そりゃそうだと思うよ。せめてトニーの死くらいはもうちょっと意味を持たせようよと思うよ。博士と娘の関係くらい、もうちょっと判りやすく、というか意味あるように描こうよと思うよ。博士の鏡の中の幻想世界が、入った人にどういう意味があるのかくらいは判らせたほうがいいと思うんだよ。不死の博士の悲しみももうちょっと描いたほうがいいと思うんだけどなんでかそこを悪魔との賭けの話にしてるからよく判んないし。
まあせめてそれくらいクリアしてればちょっとくらい判りにくい話でも、そこまで「意味わかんない」っていわれることはないと思うんだが。
現実世界の部分を撮り終わったあとでトニー役のヒースが亡くなったことはある意味映画的には面白いアイデアを付け足したと思うんだけど、それに対して何の説明もないのはどうかなぁ。一応解釈的にはトニーが別人になりたがってたから‥‥ということはできるだろうけど。
トニーの素性自体、現実世界部分ではハッキリとは描かれてはなくて(トニーが行方不明だと報道する新聞見出しだけで、説明なし)おそらく幻想世界で暴露された通り慈善事業と称して子供の臓器売買をやってた口先三寸のインチキ詐欺師もどきなんだろうけど、その説明もちゃんとないから妙にいろんなことの焦点がぼやけたままだし。
そうそうヒースの演技がすごいなぁと思うのは、口先だけで観客のご婦人たちを言いくるめていくイロモノ演技があまりにも自然すぎて違和感ないってことで、そういやこの人これでまだ28歳だったんだよなーと思うとボンヤリしちゃうなあ‥‥ってことでしょうか。上手すぎるよ(苦笑)多少英語判る相方がいうにはセリフの抑揚とかがすばらしく上手いらしい。そうなんだよなあ、他の作品の吹替えでも同年代の声優さんが当てた声聞いてると、演技とハマらなくてものすごく違和感あるんだもんw
映画としてどうよと思うのはそんなとこですが、ネタとしては面白いし好みだから、ホントに残念。美術の見事さとか(あの移動馬車はいい!)、ギリアムのあの妙に不安感を煽るような現実世界の不安定さとか好きなんだよなー。その対比としてのトンチキな幻想世界も。
さすがというか面白かったのは、博士がもともと僧侶で、1000年前に悪魔が賭けの誘いをしてきてそこから苦悩が始まったっていう「物語の話」なんだけど、それが秘境の地にあるインドの古代世界観みたいな象の上に乗った寺院で物語を語り続ける僧侶たちで、誰かが物語を語り続けてないとこの世は存続していられないという、「物語存在論的世界観」。というかそういうのって世界的になんとなく流行ってるのかなあ?ここ数年あまりにそういうネタ多いんですけど(苦笑)
結局悪魔によってその寺院の僧侶たちはみんな口が無くなっちゃって語ることができなくなったんだけど、それでも世界が崩壊しないのは、他にもそういう場所があって同じように世界の物語を語り続けている誰かがいるから‥‥ってのは面白いネタだと思うし。つかそういうネタ好きなんだよ。
で、ヒースが亡くなったことで博士の幻想世界では違う人が同じトニーを演じるってのも意味的にも面白いと思うし。
一応、トニー役のヒースの代役はジョニー・デップジュード・ロウコリン・ファレル。幻想世界に3回入るんだけど、その度に違うトニーが現れる、外見だけでなくどういう人物なのかということについても‥‥って感じ。
ネタとしてはトニーを追ってきたロシアマフィアが幻想世界でなぜか英語をしゃべり、暴力大好き人間達として婦人警官のミニスカ制服を着たむさいオッサンたち(しかもノーパンに網タイツ!w)が警察官募集の勧誘で踊りまくる意味のなさとか、マフィアたちが逃げてったとこが巨大お母さんのスカートの中で、入った途端にボン!って大爆発なのがモンティ・パイソンみたいでおかしかった!お約束だよなw
そこここのネタは面白いのに、やっぱりその最後も博士の娘(なんかエロい)が博士の元から自由になることの意味と博士の悪魔との賭けの勝ち負け、勝ったんだけどそれで娘を失うことの意味がよく判らんのだよなあ。なんかのメタファーという解釈もしづらいし‥‥
バロンやバンデットQ、たぶんドン・キホーテみたいな、現実を幻想世界が侵食してって最後はそのしっぺ返しをくらうみたいなオチだともっと判りやすいんだろうけど、それにしてもあの最後はちょっと微妙かなあ。逃げ出した娘のヴァレンティナが幸せになってて、それを見て博士が納得して幸せだと思ってんならいいけどさ。というかあの最後、博士は死ぬことができるまで悪魔と賭けを続けていくってことなのかなあ?それにしちゃ悪魔のメリットって暇つぶし意外何もないと思うんだけど(^_^;)
そういやエンドクレジットのあとで(たしか)トニーの携帯の着信音がずっと鳴ってるんだけど、あれどういう意味なのかなあ?お話的なオチとしては判らんパターンじゃないけど、中途半端すぎて意味が判らん。トニーはどっかで死んでるってことなのか?最初の首吊りとか?
劇中、ジョニデのトニーが「亡くなった者はみな永遠に生き続ける」みたいなこと言うとこがあるんだけど、見てる間はヒースの代わりのジョニデでありジュード・ロウでありコリン・ファレルであるって思って見てるんだけど、ヒースが亡くなったこと自体まったく頭になかったから、言われて見ればああそうかーって感じだったよ。オレボンヤリしすぎ?ヒースが生きててもこのアイデアの方が面白かったと思うけど。
 
あとパンフに書いてあったエエ話。ヒースが亡くなった時、トム・クルーズが代役を申し入れたけど、ヒースをよく知ってる親友を使いたいという想いから断った‥‥らしい(笑)トム、いいヤツだなあ(笑)