そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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福家警部補の挨拶#11「女神の微笑み」(終)

http://www.fujitv.co.jp/fukuie/
脚本:麻倉圭司 演出:佐藤祐市 原作:大倉崇裕
 
原作知らないからなんとも言いようがないけど、オッカムの剃刀を2話続きでやるくらいならどうしてこっちの話を前後編にして締めなかったんだろう?話自体は良かったけど最終回としては微妙に物足りないし、どう考えても古谷一行を2週見るくらいならこの八千草薫を2週分見たかったよ。なんでこんな構成にしちゃったの?
もちろんもう少し肉づけして、そこで福家の過去をもっと掘り下げてくれればだけどさ。なんかあれだけじゃ「何かある」ってことを臭わすだけにしかなってないし、逆に中途半端。外事にいた話はどうしたのさ。そこからだとあのロッカーに入ってた紛争地域の子供らの写真と、福家のいう「殺したいほど憎んだ相手」には繋がらないよね?そこはもうちょっと見せてくれないと。石松警部が掴んだ福家の過去の事情ってなんなのよ。

それはさておき話のほうは、最終回とも思えないいつもどおりの話で、面白くはあるんだけどちょっと拍子抜け。なんで拍子抜けなのかは後述。
喜子さん(八千草薫)が読唇術が出来るってことと爆弾が作れるくらいの科学知識があるってことは、ある程度背景説明がないといくら娘がリモコン作りが趣味だと言っても(息子ならともかく娘ってのは一般的にはちょっと無理が)かなり無茶な話だと思うかなあ。
それ以外では爆発現場のみかん、補聴器から読唇術車いすのリース会社から後藤夫妻を特定、娘の話なんかのネタはストーリー的には上手く使ってて良かった。大体伏線かなと思ったことはちゃんと伏線だし拾ってくれるし。
最後、爆発未遂時のは読唇術ができるからこその福家の叫びだし、老夫婦が犯人だという決め手が爆弾に使われたパーツについた福家の指紋てのも無駄なくきれいに回収してるし文句ないです。
その上であの老夫婦は犯行がバレたら自殺する、福家がそれを止められなかったってのも予想通りなんだけど、だったらそれはある意味福家の負けだって風に見せても良かったんでないかなあ。
石松警部が「後藤あかり」という名前に気がついたとこで、あの老夫婦に関係する事件に関わったんだろうなってのはわかるし、それを石松警部が語って済ませるんでなく喜子さんが話して事件の概要がわかるっていうのは上手いと思うんだけど、根本的に強盗犯たちってあの老夫婦とはまったく因縁がないんだし、関係付けとしてはちょっと弱いような気はする。同じような事件ならともかく、後藤あかりの件は犯人自殺で終わってんじゃん。石松警部がそれを曰く有りげに言うもんだから何かあるのかと思っちゃったよ。
せめてその事件の時の何も出来ない悔しさを、こういう私刑に駆り立てる喜子さんの執念として印象づけられる様な事件だったら良かったのになあ。
原作がそうなのかもしれないけど、それってなんていうかミステリーの文脈としても違うって気がするんでできれば改変しても良かったんじゃないかしら。別にこの事件自体は強盗犯が爆弾使ったからなんとなくリンクしてるだけで、老夫婦が爆弾を使ういわれも強盗犯たちが爆弾を使う理由も特にないと思うし。いや足の不自由な老婦人が安全地帯から犯人たちを殺そうと思ったらリモートコントロールの爆弾てのはありだとは思うけど、それ自体がちょっと強引よね。
 
ドラマ自体、前半は良い改変も多かったみたいだし、話の筋が通ってればミステリーだしそういう展開自体のご都合は気にならないけど、後半はちょっと細かいとこで雑になってたかなあ。ディテールじゃなく最初に作る大まかな枠が間違ってるというか。
今回も福家が喜子さんに目星をつけたのはめっちゃ早いし、その理由もちゃんときれいにまとまってるんだけど、この最終回で大事なのは、福家の過去の痛みとそれ故の犯人との関わりをどれくらい描こうとしたのかってことで、オレが見たかったのはそこだって意味では最終回としては残念だったと思う。
ストーリー的にはそのために娘さんの事件をあえて警察側(石松警部)に認識させてたんだろうと思うけど、最初娘を殺した犯人が強盗犯にいるのかと思ってたからこその復讐事件だと思ってたのに(それが4人目なのかと)、ただ警察が信用出来ないからという理由の私刑の話だと何がどうであっても「やってはいけない」にしかならないし、それは正義どうこう以前に「警察が動かないから自分らがやる」という言い訳にはならないと思うんだよね。
そこも今回の話としてはちょっとピントがズレてた上に、被害者や加害者=犯人を救いたいという福家の信念と、そのためには警部補のままで現場にいたいという理由にもちょっとだけ説明不足な気がするから色んな意味で中途半端かと。
このドラマが独特なのは福家の立ち位置なわけで、どうやら過去にいろんな悲惨な現場を見てきたからこその「人を殺すことが出来ないからこそ(警察の)正義を信じている。人は人を救うことが出来るはずだと信じている」という福家の考え方への共感や、福家という人間そのものを理解したいと思えるかどうかというとこなんで、もうちょっとつっこんで欲しかったです。
どうやら原作はまだあるようなのでスペシャルがあるのかもしれないけど、できればシリーズ中でそこまでやりきって欲しかったかなあ。好きな感じのドラマだけに最後の方がちょっと雑だったのはもったいなかったかも。