そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

ナイトクローラー

http://nightcrawler.gaga.ne.jp
監督・脚本: ダン・ギルロイ

 
過激な報道合戦の話の果てに狂気を帯びていく男と報道倫理の話かと思ってたら違ってた。まあ今どきの映画ならそのくらいのネタなら普通な気はするけど、でもアカデミー脚本賞ノミネート?早いね。
話は 面白かった。見終わった後は普通に面白かったなーくらいだったけど、感想書こうと思っていろいろ考えてたらやっぱり脚本はかなりよく出来てるなあと思った。あとカーチェイスもすごかった!
そしてジェイク・ギレンホールはどうしても「遠い空の向こうに」のイメージがあるんだけど、もうすでに相当なおっさんだってことにも戦慄するw
げっそりと痩せてて目の周りにくまがあるような、まるきり漫画みたいな顔したギレンホールの表情や演技、終始目が怖い彼の佇まいの圧迫感がすごくて怖かった。
内容はというと、たいした学歴もなく職にあぶれ、盗んだものを売ってるのに罪悪感なくイマドキの貧困生活を送ってるルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)が報道パパラッチ(=ナイトクローラー)というものを知って、やってみたらこの仕事に向いていて優秀だったのでだんだんとエスカレートしていったという話。
見よう見まねで現場に入りこみぎりぎりの場所でカメラを回し、妙に押しの強い強気な態度でテレビ局と交渉してあっという間に求めるものを理解しスキルアップして金を稼ぐ。即時性が命の報道映像にクオリティを持ち込み、レベルアップしていくためにはヤラセも辞さない、そしてスクープ内容はどんどん過激になっていく…
またそれをけしかけるローカル局の美人ディレクター・ニーナ(レネ・ロッソ)のもっと過激なものをという際限のない要求、人々の不安を煽って数字を稼ぐ視聴率至上主義、そういう過激なストーリーのある犯罪ショーを求める一般大衆がいて…というあたりは現代的な倫理観を問いかける当然の展開。
でも最後、その倫理や踏み越えたモラルは問われることなく、起業の成功というまさにイマドキ風の皮肉なラストに。一応ネタバレ気味なのでここまでに。まあそれもありよね…という。

よくよく考えるとルイスは反社会的人格って意味では確かにサイコパスなんだよね。
ルイスのぱっと見神経質でやること細かいわりに自信過剰気味に大胆な押しの強さ、根拠があるわけではないけど妙に説得力のある語り口や、報道パパラッチなのにド派手な目立つスポーツカーで出動とかすべてが自分の思い通りでないと気がすまない性格。そして綿密にビジネスとして仕事を拡大していくさまはあまりにもブレがなく狂気にすら思えるけど、完全に正気じゃないかって気がする。常に目が笑ってないのが薄気味悪いんだよ。
というか最初ルイスをサイコパスだと思わなかったのは、モラルや倫理観が人よりちょっとズレてる程度かなと思ったからなんだけど、他人に対して何の感情も動かさない、「人の人生で一番最悪な最後のとき」(←うろ)を単なるビジネスの商品としか見てない悪魔のような男に、普通はありえねーって思うんだけど彼の目線で見てるとなんかそれも当たり前に思えてくるんだよ。
彼はだからこそこの仕事に向いてたんだろうけど、超えてはいけない一線を踏み外す躊躇がないから彼のやってることは普通に正しいことをやってるように見えるんだよね。(それがサイコパスなんだけどw)(いや彼に共感してみているのがオカシイかもしれないんだけど)
だって普通より道徳感や倫理的に問題があるけど、やってること自体はただ単にビジネスパーソンとして優秀だったってことで。
ネットで調べたビジネスのやり方をそのまま実践して、相手を人間として見てないから仕事をする上での正解がすぐに出てきて迷いがない。それが逆に何考えてるのかわからなくて薄気味悪いんだけど、現代のビジネスってある意味非人間的なところがあるからそれくらい割り切ってれば確かに成功するよなとも思ったし。
彼自身が現場に突撃してハイリスクハイリターンを引き受けてるし、その上で仕事のやり方として目につくリスクは排除するというのも間違ってないと思えるし。(てかあのちょっと鈍くさい助手は頭悪いよ。いきなりタメ口聞いて報酬を山分けしろという助手なんか排除するよな、自業自得)
ビジネス起業家として会社を成功させようとしてるならものすごく正しい、だから報道倫理の逸脱というセンセーションな話というよりは淡々とビジネス拡大として正しいことをやっていてそれは間違ってない様を見せられてる気分というか。
あくまでも 職業としての「仕事」ではなくビジネスとしての「仕事」だけど。ライバルたちはそれこそもっと過激な瞬間を…という、ニーナと同じ衝動で仕事してるんだろうけど、ルイスはそれがより金になるかどうかという数字としてしか見えてない気がするんだよ。だから対象に対してどれくらいの金銭的価値になるかしか興味がないんじゃないかと。そしてその見極めに才能があったから成功しただけで。
オレ自身はああいうセンセーショナルな報道が好きなわけじゃないから、そういう過激なものを求める心理というのには同調できないんだけど、だからこそニーナには嫌悪感があるけどルイスにはあんまり感じなかったんだよね。むしろあまりにもこの仕事のやり方にたいして論理的かつ優秀すぎて感動すら覚えるよ。そりゃ確かにあのラストはわかるし、とても堅実だとすら思える。
明らかな違法行為と騙しにしても、彼のやることに異を唱えなければそんなことをされることはなかっただろう…と思ってしまうオレが恐ろしいw
だって起業して大成功する社長ってこういうタイプよねえ(報道パパラッチは社会的にはどうかと思うけど)
ルイスのことを全然いいとは思わないけど、ある意味価値観がちょっと揺さぶられるわ(笑)