そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

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皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

http://www.zaziefilms.com/jeegmovie/
監督:ガブリエーレ・マイネッティ 脚本:二コラ・グアッリャノーネ

 

1975年に日本で放送され、79年にはイタリアでも放送された永井豪原作のアニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフにしたイタリア映画。
ふとしたきっかけで超人的なパワーを身につけたチンピラのエンツォは、世話になっていたオヤジが殺され、アニメ「鋼鉄ジーグ」の熱狂的なファンである娘のアレッシアの面倒を見る羽目になる。超人的な能力を持つエンツォを「ジーグ」の主人公である司馬宙とダブらせて慕うアレッシアを前に、パワーを私利私欲のために使っていたエンツォは、彼女を守るため正義に目覚め、互いにほのかな愛情が芽生えていく。そんな2人の前に、闇の組織のリーダー、ジンガロが立ちはだかる。
監督は本作が長編デビューとなるガブリエーレ・マイネッティ。主人公エンツォ役に「緑はよみがえる」のクラウディオ・サンタマリア、敵のジンガロ役にルカ・マリネッリ。「イタリア映画祭2016」(2016年4月29日〜5月5日=東京・有楽町朝日ホール)上映作品。(「映画.com」より)

 
オレ的にはかなりドストライクなヒーロー物で、最後の方思わず泣いちゃったよ。本当に胸熱!
もちろん「鋼鉄ジーグ」は知ってても子供の頃なのでそこまでは覚えてないんだけど(でも歌は歌える)、数年前にWOWOWでやった続編「鋼鉄神ジーグ」が面白くて、その時だいぶ設定とかは思い出しました。
というか昔からイタリアやフランスで日本のアニメがブームだったのは知ってる。でもなぜグレンダイザーでもマジンガーでもなく鋼鉄ジーグなのか。いや確かにジーグのカラフルさとデザインのほうがイタリア人は好きそうな気はするけど。
パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ監督と同じくイタリアの日本オタクの監督ということで、でも劇中にジーグという作品そのものが登場し、それを目指す…というのは、ヒーローものとしてもちょっと変わってる気がする。普通は架空の作品をでっち上げるよねえ。お国柄?
あとイタリアでは初めてのヒーロー映画らしいけど(なんで今までなかったんだ?)、アメリカ映画と比べるとお国柄というか現状の社会への不満やシリアスさの違いかもしれないけど、ハリウッドのアメコミ映画にはない現実味と哀しみがあって、正義とは何かを追求する監督の狙いと相まってとてもいい映画になってた。本当にいい映画だった。
ウォッチメン」みたいな物語そのものが持つ哀しみじゃなく、作品からにじみ出る哀しみと切なさというか、その辺は好き好きだろうけどオレは好きです。
しかし舞台をイタリアローマの下町みたいなとこでと拘ったっていうけど、最近トレスポ2とかムーンライトとか似たように寂れてるとこを舞台にした映画ばっか観てるせいもあるけど、どこも似てるというか同じ雰囲気というか。日本でいえば郊外の寂れた団地風とでもいうか、そういう世界観が全世界的にも好まれてんのかなあ。閉塞感?
 
 
あらすじでは「キック・アス」みたいな話かなと思ってたんだけど、実際スーパーパワーを手に入れるからスパイダーマン的な感じ?劇中でも「蜘蛛に噛まれたか(→スパイダーマン)、それとも宇宙人(→スーパーマン)か?」って言われてたしw
ローマの下町でゴロツキやってるおっさんが主人公で(最初は別にカッコイイとも思わない中年のおっさんだった)、追われて逃げる途中たまたま放射性物質に汚染されて超パワーを手に入れる。彼がヒーローになる原因はアメコミ映画ならむしろヴィラン側の状況にありがちなような。
しかもその力をATMを盗んだりギャングの強盗計画を邪魔して金を奪ったり(その金で生活用品やAV機器、エロソフトを買ったりするささやかさw)、自分の小さな欲望を満たすために使ってるうちにYouTubeにアップされ、頭悪くて凶暴でイケメンな目立ちたがりのギャングのリーダーに目をつけられるという。
主人公のエンツォは言ってみればシリアスハードモードな中年デッドプールダークナイトっぽく自己犠牲で人を助けることに自己存在を見出していく感じだし(ラストもとてもバットマンっぽかった)、敵のジンガロはどちらかというとバットマンのジョーカーとトゥーフェイスを足したみたいなナルシスト。まさかああなるとは…(一応ネタバレ規制)
ヒロインのアレッシアは精神不安定かつどうやら父親に性的虐待を受けていたっぽい逃避妄想癖のある女の子だけど、女優さんも特に可愛いわけでもない微妙さがなんともいい。(失礼!)
行きがかり上彼女に付きまとわれているうちにエンツォも鋼鉄ジーグの魅力に気がつき、ただのイタリアの中年おっさんだと思っていたエンツォが人助けをして爆弾を追いかけるあたりからだんだんウルヴァリンヒュー・ジャックマンに見えてくるというか…つまりカッコよく思えてきてw(オレはね)
クライマックスはローマVSラツィオの試合中のスタジアムに逃げるジンガロを追いかけながら戦ってるけど会場満杯の観客はそんなこと知らないし、警察は彼を強盗だと思って撃とうとするし…って展開がとても昭和な感じだった。日本なら巨人対阪神戦とか日本シリーズの真っ最中の球場で…とかそんな感じ?昔こういうクライマックスの映画いっぱいあったよね?(笑)
とにかくいろいろ既視感が。そう既視感!いろんなネタが見たことある感じではあるんだけど、最近のハリウッドのアメコミ大作映画と比べると街の感じがリアルなのと暴力とエロスが多いせいか、もう少し地に足付いた現実感があったりするところがいい。
尺が結構長い割に、多少説明不足で何がどうなってるのかわからないところはあったけど、でも主人公の心情はとてもわかるので問題なし。まあギャングたちのやってることや爆発テロの関係、エンツォを取り巻く環境やイタリアンギャングには馴染みがないだけに、もう少し説明がほしかったところかも。

手に入れた力を自分のためでしか使わなかったエンツォがアレッシアの純粋な願いと「ヒーローは困っている人や弱い人を助けないと」という言葉にだんだんと心動かされ、人助けをしてしまったときに感じた他人からの感謝の気持ちや正義感、自分の力を正しく人のために使おうと命を捨ててまでも奮闘する彼の心にはもしかしたら復讐心があったかもしれないけれど、それだけじゃない誰かのために戦うという崇高さ、その一途さが胸熱なんだ。正義は誰の心にもあって、ただ自分でも気がつかないだけ…みたいな。
アレッシアが好きだったヒーロー、鋼鉄ジーグを理解してそうあろうとするエンツォ。最初になぜグレンダイザーでもマジンガーでもないんだろうって書いたけど、ヒーローとは鋼鉄の心を持っているからってことなのかも。ちなみにこの映画の主題歌はオリジナルの替え歌になるんだけど、とても胸を打つ歌詞だよ。
彼のひとりきりの戦いは今始まったけど、彼はもう孤独ではないんだよな。
ここで某セイザーXの名言を贈りたい。「ヒーローは人知れず戦ってこそヒーローなんだ!人知れずな!」
まさに善と悪とは?真のヒーローとは?ということを考えさせられる映画だった。最後のシーンはちょっとバットマンみたいでほんと泣けた。アレッシアのお手製のマスク泣ける。
 
新宿武蔵野館には監督のサインポスターも。