そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

ナイトメア・アリー

https://searchlightpictures.jp/movie/nightmare_alley.html

監督:ギレルモ・デル・トロ 脚本:ギレルモ・デル・トロ、キム・モーガン 原作:
ウィリアム・リンゼイ・グレシャム


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人間の心の闇を覗くダークサスペンス…なんだけど、最初にもう物語の構造がわかってしまって、そのせいかラストのオチの寸止め感にちょっとモヤモヤしたかなあ。

映像は大変美しくてデル・トロ監督らしさがハンパないね。作り込みすごい。セット?の緻密さと奥行き感、構図そのものが美しい。

心置きなく感想言いたいので以下ネタバレです。

 

 

シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督が、ブラッドリー・クーパーはじめ豪華キャストを迎えて送り出すサスペンススリラー。過去にも映画化されたことのある、1946年に出版された名作ノワール小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作に、野心にあふれ、ショービジネス界で成功した男が、思いがけないところから人生を狂わせていく様を描く。

ショービジネスでの成功を夢みる野心にあふれた青年スタンは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座とめぐり合う。そこで読心術の技を学んだスタンは、人をひきつける天性の才能とカリスマ性を武器に、トップの興行師となる。しかし、その先には思いがけない闇が待ち受けていた。

スタン役を「アリー スター誕生」「アメリカン・スナイパー」などで4度のアカデミー賞ノミネートを誇るブラッドリー・クーパーが務め、2度のアカデミー賞受賞歴をもつケイト・ブランシェットほか、トニ・コレットウィレム・デフォールーニー・マーラらが共演した。2022・第94回アカデミー賞では作品賞に加え撮影、美術、衣装デザインの計4部門にノミネート。作品紹介ページ:https://eiga.com/movie/95745/

 

 

てかさ、途中でどころか最初に見せ物小屋で「獣人」が出た時点で予想できたラストというか。これがSF風味の話だったら藤子・F・不二雄先生の「ノスタル爺」だよね、と思いながら観てましたよ?

なので、テーマもメッセージもわかるしラストに至るまでのサスペンス感にはハラハラしたけど、あのラストをどちらかはっきり描かなかったことで自分の中ではちょっと消化不良感が残ったかなー。

いやもしそこをはっきり描いてたらそれはそれで陳腐なことになるかもしれないけど、ぶっちゃけオレはてっきりスタンがあのままどん底に落ちてナイトメアアリー〈悪夢小路〉で拾われて見せ物小屋でわけもわからず獣人として仕込まれる…みたいなのを予想してしまったので。

その彼の転落をそのまま見せるか、(映画のストーリー通りに)あの獣人の仕込み方を聞かせてスタン自身に自分の状況を悟らせるか、どっちかと言ったらまあそりゃ後者(映画通り)がいいか。あの時のスタンの表情ときたら!

あと感じたのは、ストーリーというよりテーマ的に芥川龍之介羅生門みたいというか、つまり「下人の行方は誰も知らない」…みたいなとこが。

そうだとすると最後は主人公のスタンの正気度合いで感想が変わるような?

まあ人の心には常に闇があるよな。そして正と悪はいつでもすぐにひっくり返るよ。むしろ人生いつでも隣で悪魔が大きな口を開けて待ち構えている的な。

成功と転落。彼は人間なのか獣人なのか?

この映画の観客はつまりスタンという見せ物を見せられてたということに最後気が付くことになる。果たしてスタンの運命は…的な。

 

話戻るけどスタンの場合、自分が人を騙しているなどと思ってもないところ、途中で自分の嘘を自分でも気づかず信じてたとこからもう踏み外してたと思うんだけど、それが元々の彼の心性でありしかも「善ではない」と自覚してるところが無自覚にタチが悪いとしか。騙そうと思ってないどころか他人を救う=いいことをしてると思い込んでるんだもの。

その点、同じと言われたリリス博士の方は、ある意味現実的な”善い人ではない”ああいう人間だよね。一枚上手というか、スタンみたいな田舎者のにわかな成り上がりとは違う、ある意味サバイバーだし引き際をわきまえて抜け目がない。そういう人間じゃないと生き抜けないのかもしれない。

 

スペイン内戦という時代を描いた「パンズ・ラビリンス」と同じく、第二次世界大戦直前のザワザワしたもうすぐ戦争が始まりそうな狂った空気の中、秘密を抱えて転がり込んだ見せ物小屋からその華やかさとチャームでジーナと二人独立したスタン。

言葉で人を操り自分もそれを信じてしまうスタンのやってることは、戦争を正しい道として扇動する何か(国家)と同じ、欺瞞を口にしてるのにも似てるかもと思ったり。

そして良き人々でない個人がより良い人生を求めることは最善にはならず、大抵はその途中で善性を失うことで悲劇に墜ちていくみたいな?相変わらずの後味の悪さw

ああ、デル・トロ監督の後味の悪さって単にバッドエンドというのとも違う取り返しのつかなさみたいなものがあるよね。悲劇に血の匂いがするせいかもしれないけど。

 

ギレルモ・デル・トロ監督の作品って、なんか人の心の闇を描くというより、善くありたいと思いながらも気付いたら人生の隙間から地獄に落ちてる(時には死をも)、まさに悪夢のような状況に置かれた人間を描いてて、ある意味「世にも奇妙な物語」っぽい理不尽さというか。

そういう人々を見ていてああはなりたくないと思ったり、どこで間違ったのかを考えたり(もしかしたら上手くやれる目があったのかも?)観る人の心の方がゾワゾワするってことではないかなあ。

 

それはともかく、デル・トロ監督の作品へのこだわりは好きな方だけど、どうもこの「ナイトメア・アリー」はもとより「シェイプ・オブ・ウォーター」、「パンズ・ラビリンス」「パイフィック・リム」など監督オリジナルの作品を見てると、好きではあるけどどちらかと言えばって感じの好きで、のめり込むことはないんだなーって気がついたよ。思ったより好みじゃないのかなあ?(本当に単に個人的な呟き)

だからついつい冷静に見てしまうのかな?

 

そういえば昔M.N.シャマラン監督の名作「シックス・センス」を見た友達が「一番最初にオチがわかってしまってその後ずっとつまらなかった」って言ったことがあって。その時は「たとえオチがわかったとしてもその過程のストーリーを楽しめばいいのに、楽しめないのは気の毒だなあ〜」などと思ったことがあったけど、まさにナイトメア・アリーを見たオレか?

いやでもシックス・センスはオチがわかってても何度も楽しめるけど、ナイトメア・アリーはそんなに何度も見たいとは思わないかも?どうだろう。

スタンが落ちていくのはあまりにも自明というか、読唇術と称する詐欺を本当だと信じてしまっている時点で正直なのかそうでないのかも判断つかないよな。何度も言うけど、本人が騙そうと思ってないってのが一番タチが悪いよね。そういう心の隙間に忍び込んでくる何かなんだよ。ドーン!(指を差しながら)

彼があの最後のシーンで獣人の仕事を受けるかどうかはわからないけど、そういうやり口だとわかっててハマってしまうほどダメになってるわけでもない…というのが、彼の状態として見ててモヤモヤするんだよなあ。

 

あと途中、ジーナを見世物小屋の人たちが訪ねてきたことの意味がいまいちよく分からなくって、何か伏線かと思ったらそうじゃないって何だったんだろう?オチの見世物小屋を思い出させるスイッチ?

もっと深い何かもある気がするけどまあいいか。(パンフは後で読む)