そこがミソ。-ドラマや特撮感想などを気ままに

ブログ、感想は見た日の分にアップしたいので過去ログがいきなり埋まってることもあるってよ。

ヒーロー、俺?

天道のヒーローにあるまじき行動があちらこちらで問題視されてますが、何が問題かというと結局天道の守りたい大事な妹が人類の敵・ワームであり、そのためならワームも人間も倒すって言っちゃってるのがマズイんでないかと。
感情移入できないという点ではひよりのヒロインらしさが今まで描写されてなかったってのもあるけど、それ以上に天道が言うほど「可哀想な妹」だって言う説得力がないことの方が問題だと思うんだよね。
どちらかというとひよりと天道の交流ってそれなり描写はされてきたと思うけど、それはあくまでも「友人としての」であって、これがもし天道の妹だって言うのがもっと早くに判っていて、でもなぜかそれを告げられない理由がある、その切なさというのを多少でも押し出していたら、ひよりがワームだったから兄だと名乗れなかった(ひよりの出生の秘密を明かすことになるから)という、その天道の葛藤に同情出来たと思うんだよな。そうであれば多少でも天道の狂気、生まれえなかった妹のためなら世界を敵に回しても守り抜くという決意に視聴者が同調できたんじゃないかな。
つまりこれは、ひよりが妹だというインパクトでなく、ひよりがワームだというインパクトの方を主眼に持ってきてれば…ってことですね。いっぺんにやるからいかんのだ。その上での余談的な話ですが、それを加賀美が知って(少なくとも妹だってことを)天道と葛藤を共有するとかいう展開があれば、また加賀美の悩みもワーム殲滅という建前か、ワームであっても守る存在がいるという葛藤かっていう、判りやすいことですんだと思うんですが。坊っちゃんがワームだってことを絡めなくてもね。


そーゆー意味ではこれに関してはどこを謎にするか?というさじ加減を失敗したとしか思えません、白倉さん。策士策に溺れるって感じ。
もともとカブトってドラマが秋までは謎展開をいっぱい作っといて、それを解決していくことにカタルシスを求めるというところがあるんですが、何でもかんでも謎にしたからって、そんな謎解きを視聴者は求めてないってことかなー。オレなんかミステリーなんぞ全く興味ないんで、はっきり言えばその分人間ドラマが御座なりになってて退屈。いつも言ってるように、謎が解かれてそれによってどんな人間関係が動くのかが問題なので、謎が判っただけじゃ「よし判った。それで?」でしかないんだよな。


「ヒーローの条件」でkasindouさんの言う
>基本的にヒーローは「みんなのために戦う」ものっていう前提で観てる人は少なくないんじゃないか。
は、判らんでもないけど、はっきり言えば特撮に限らず他のヒーロー物はともかく、平成ライダーに関しては以前のエントリー(「自由と平和のために戦う」ということ)でも言ったけど、大義名分は付け足しで実は特定の誰かのため、ひいては自分のために戦ってると思ってるんで(これは自分の印象だけど、一連のシリーズを見てるとあながち間違ってはないと思う)、そう思う人がいてもいいけど、ドラマとしてはそういうところに重点が置かれてるとは思わないんですね。そんな大義名分のためだけに戦うヒーローには人間ドラマは生まれにくいと思うし、もともとの石ノ森ヒーローの悩みや戦う理由ってのは非常に個人的な物ばかりだということを考えると、そういうアンチヒーロー的なものが昭和ライダーと違って平成ライダーには多く見受けられると思うんですよ。むしろ身近な誰かを守ることがひいては人類を守ること…でいいと思うんですね。物語の形式ではなく、話の展開として。

ところが天道さんはそれに当てはまらないというのが非常にマズイと。身近な誰かが人類の敵では、完全にダブルスタンダードです。「信じるものが違う」のはいいけど、「どっちも」はマズイと思うんですよ。ヒーロー物の主役として。
これは同じくkasindouさんが指摘してる男女の考え方の違いを考えてもそういう問題じゃないと思うんですね。逆に特定の誰かのためという考え方が「えこひいき」だと感じるのは大人の感覚であって、世界が狭い子供にとっては自分のことは世界のこと、自分の親しいものを守ることが大義名分になると思うんですよ。男女関係なく。子供たちが自分の考える世界において、主人公の戦う理由と同調できる理由を持つことの方が大事だというか。だから主人公は主人公として認められるし、脇キャラはヒーロー足りえないと思うんですね。余程ひねくれた子でなければ、カイザカッコイイと思っても草加カッコイイとは思わんだろ(笑)加賀美が支持されるのはやっぱりヒーローの資質があるからで。
ただここで女の子は守られるもの、男の子は守るもの、と役割分担がされることを考えると、これもあちこちでいわれてますが、天道の守る対象が妹だというのは大きいと思うんですね。天道の本心の世界では常に自分と妹(ひより)しかいなかった。外の世界でも天道の守る対象は樹花であり心の中ではおばあちゃんである。つまりあの「天道家」の家の中の者でしかないんですね。
カブトに於てちょっと気になってたというか今までの平成ライダーと違うなと思ってたところで、主人公が居候ではなくちゃんと自分ちに住んでいるというのが引っ掛かってたんですが、それを考えるとあの家は天道の守るべきものの象徴じゃないかと思うのですね。ひよりをおばあちゃんに預けるっていうのも、家の中ではないけど、天道の守るべきものの中に入れるってことで。


まあなんにしても最後はちゃんと天道が「俺が正義」と言い切れるような展開で終わって欲しいもんなんだけどね。